ボビーワゴン(Boby Trolley)は、1970年にイタリアのデザイナー、ジョエ・コロンボがデザインした可動式の収納ワゴンである。当初は建築家や製図技師がデスク周りで道具や図面を整理するための実用的な収納として構想され、回転式の引き出しと縦方向に積み上げるモジュラー構造を組み合わせた点に特徴がある。

射出成形のABS樹脂を用いたボビーワゴンは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに収蔵され、1971年にはイタリアのSMAU賞を受賞している。発売から半世紀以上を経た現在も生産が続いており、キッチン、オフィス、アトリエ、医療現場から住宅まで、場所を選ばず使える汎用性の高さが、スペースエイジを代表する収納ワゴンとして知られる理由となっている。

デザインの背景とコンセプト

ボビーワゴンの構想には、ジョエ・コロンボが追求した「移動できる家具」という考え方が反映されている。製図作業を行う建築家のデスク周りで、筆記用具、図面、書類といった道具類を効率よく収納する方法を模索するなかで、収納家具でありながら自由に動かせる縦型のワゴンという形にたどり着いた。

建築や壁面に固定されず、使用者の必要に応じて移動し、四方から使えること。この発想がボビーワゴンの縦型モジュラー構造の基礎にある。回転する引き出しとキャスターによる機動性は、置き場所や用途の変化に合わせて使い方を変えられる柔軟さにつながっている。

特徴と構造

素材

ボビーワゴンの本体と引き出しには、射出成形のABS樹脂が用いられている。ABS樹脂は耐衝撃性と耐傷性に優れ、汚れや臭いに強く、清掃が容易であるという実用的な利点を持つ。射出成形により各部品は均一な形状と光沢のある仕上がりを得ている。キャスターには耐久性のあるポリプロピレンが使われ、長期間の使用に対応する。

回転式の引き出し機構

ボビーワゴンを特徴づけているのが、側面の突起部分を押すと引き出しが回転して開く機構である。引き出しはファン状に展開し、収納物への視認性とアクセス性を高める。深さの異なる引き出しを組み合わせることで、文房具から図面、ボトル類まで多様な物の収納に対応できる。

モジュラー構造と天板

ボビーワゴンは縦方向に展開するモジュラー構造を持ち、複数の高さ構成から選べる。最も低い1段タイプ(高さ約31.5cm)から、より高い段数のタイプまで、使用環境や収納量に応じて選択できる。側面には細長いポケットが配置され、ボトル類や筒状のものを収納できる。上部にはコルク、ウォールナット、オークなどの天板オプションが用意され、用途や空間に合わせて仕上げを選べる。

機動性とカラー

底部に配置された回転キャスターにより、ボビーワゴンは自由に移動でき、四方すべての面を使うことができる。カラーはホワイトやブラックといった定番色から、レッド、オレンジ、ブルーなどの鮮やかな色まで幅広く展開されており、空間にアクセントを加える要素としても機能する。色の展開は時期に応じて更新されている。

評価と収蔵

ボビーワゴンは、発表後にデザイン分野で高い評価を獲得した。ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、ボビーワゴン(Boby 3 Portable Storage System)を永久コレクションに収蔵している。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)もこの作品をコレクションに収めているほか、ミラノ・トリエンナーレのコレクションにも加えられている。1971年にはイタリアのSMAU賞を受賞した。

現在もボビーワゴンは現行製品として生産・販売が続いており、クリエイティブの現場、医療分野、住宅環境などで使われている。整理のしやすさと移動の自由さを両立した設計が、長く支持される理由となっている。

受賞・収蔵

  • 1971年 SMAU賞(イタリア)受賞
  • ニューヨーク近代美術館(MoMA)永久コレクション収蔵
  • ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A、ロンドン)コレクション収蔵
  • ミラノ・トリエンナーレ コレクション収蔵

基本情報

デザイナー ジョエ・コロンボ(Joe Colombo / 1930-1971)
デザイン年 1970年(MoMA収蔵品は1969年と記載)
製造 B-Line(ビーライン、イタリア)
※当初はBieffeplastが製造
分類 ワゴン収納 / 可動式収納ユニット
素材 本体・引き出し:射出成形ABS樹脂
キャスター:ポリプロピレン
天板オプション:コルク、ウォールナット、オークほか
構成 複数の高さ構成(1段 約31.5cm ほか)
標準寸法 幅約43cm × 奥行約42cm × 高さ(構成により異なる)
カラー ホワイト、ブラック、レッド、オレンジ、ブルーなど
主な特徴 回転式の引き出し機構、縦型モジュラー構造、回転キャスター、側面ポケット、選べる天板
主要収蔵先 ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)、ミラノ・トリエンナーレ