タービン クロックは、ジョージ・ネルソン・アソシエイツがハワード・ミラー・クロック・カンパニーのために手がけた壁掛け時計である。1957年頃の作とされ、中心の円形フェイスから12枚の真鍮フィンが放射状に広がるフォルムは、蒸気タービンやジェットエンジンの羽根を思わせる。直径約76cmという大きさは、ネルソンの時計群のなかでも最大級にあたる。
数字を持たない文字盤は、このコレクション全体に共通する約束事である。時刻は12枚のフィンの位置によって読み取る。時計を「時刻を読む道具」から「壁面を構成する立体物」へと置き換えた設計であり、現在はヴィトラが復刻生産を続けている。
特徴・コンセプト
タービン クロックの構成はきわめて単純である。中央にアルミニウム製の円形フェイスがあり、そこから薄い真鍮のフィンが12方向へ伸びる。フィンにはわずかな角度が与えられており、見る位置や光の入り方によって明暗が入れ替わる。静止した時計でありながら、回転しているような印象を受けるのはこのためである。
素材は真鍮とアルミニウムに限られる。真鍮の暖かい金色と、アルミニウムの冷たい銀色。この二つの金属の対比だけで造形が成立している点に、装飾を足さずに質感で語るというネルソン事務所の姿勢が表れている。
名称の由来は、放射状のフィンがタービンブレードを想起させることにある。1950年代のアメリカでは航空機やジェットエンジンが進歩の象徴として広く受け入れられており、その語彙を家庭の壁に持ち込んだ点で、この時計はきわめて時代的な製品でもある。
背景
1947年、ジョージ・ネルソンはハワード・ミラー・クロック・カンパニーから時計コレクションの依頼を受けた。ネルソンは、人が時刻を確認する際に数字ではなく針の相対的な位置を見ていること、そして多くの人が腕時計を持つ以上、壁掛け時計はむしろ室内の装飾要素に近づいていることを指摘した。この見立てから、数字を持たない14点の時計が構想され、1949年に市場へ送り出される。
以降35年にわたり、ネルソン・アソシエイツの手からは100種類を超える時計が生まれた。壁掛け時計、置き時計、造り付け時計。形も色も素材も異なるが、文字盤に数字がないという一点だけが全モデルを貫いている。タービン クロックはこの系譜のなかで、最も工業的な語彙を選んだ一台である。
ネルソンの死後、約7,400点に及ぶ図面・写真・原稿からなるアーカイヴはヴィトラ デザイン ミュージアムに収められた。ヴィトラが1999年からネルソン・クロックの復刻を開始できたのは、この資料の存在による。
評価
ネルソンの時計群は、20世紀アメリカのプロダクトデザインを語るうえで欠かせない対象として扱われている。とりわけタービン クロックは、その大きさゆえに壁面を占有し、絵画やレリーフに近い扱いを受けることが多い。
インテリアの実務では、ミッドセンチュリー・モダンの空間にアクセントを与える一点として選ばれる。直径約76cmは、家庭用の壁掛け時計としては例外的な大きさであり、設置には相応の壁面が必要になる。時計としての実用性よりも、壁面構成の要素としての性格が強い製品である。
基本情報
| デザイナー | ジョージ・ネルソン / George Nelson(ジョージ・ネルソン・アソシエイツ) |
|---|---|
| 発表年 | 1957年頃(ヴィトラはウォールクロック・コレクション全体を1949〜1960年と表記) |
| オリジナルメーカー | ハワード・ミラー・クロック・カンパニー / Howard Miller Clock Company |
| 現行メーカー | ヴィトラ / Vitra(1999年より復刻) |
| カテゴリー | 壁掛け時計 |
| 素材 | 真鍮(フィン)、アルミニウム(中央フェイス) |
| サイズ | 直径 約76cm |
| ムーブメント | クォーツ(単3電池1本) |
| コレクション | ネルソン・ウォールクロック・コレクション |