テーブル81 ─ アアルトのL-レッグが支える普遍的なテーブル
1935年、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトは、自ら開発した曲げ木技術「L-レッグ」を応用した一連の長方形テーブルを発表した。テーブル81と名付けられたこのシリーズは、ダイニングテーブルとして、ワークデスクとして、あるいは子どもの学習机として、暮らしのあらゆる場面に溶け込む汎用性を備えている。フィンランド産バーチ材の柔らかな木肌と、装飾を排した構造の潔さが調和し、90年近くにわたり世界中の住宅や公共空間で使われ続けている。アルテックが掲げる「Art(芸術)とTechnology(技術)の融合」を、もっとも端的に表すプロダクトのひとつである。
概要
テーブル81は、アアルトが1933年に特許を取得したL-レッグを脚部に採用した長方形テーブルシリーズである。バーチ無垢材にスリットを入れ、ベニヤ片を挟み込んで接着し、直角に曲げるこの技法は、金属を用いずに構造的な強度と優美な曲線を両立させた。テーブル81シリーズは、天板のサイズにより81A(W150×D75cm)と81B(W120×D75cm)の二つの長方形モデルを展開し、さらに正方形の81C(75×75cm)も用意されている。高さは標準で74cm、日本仕様では72cmが選べ、日常の食事や作業に適した寸法となっている。
天板の仕上げはバーチ突板のナチュラルラッカー仕上げ、ホワイトラミネート、ブラックリノリウムから選択できる。リノリウムは筆記に適した柔らかな表面を持ち、ラミネートは耐久性と手入れのしやすさに優れる。いずれの仕上げも、時を経て落ち着いた色合いに変化するバーチ材の脚部と自然に調和するよう設計されている。
特徴・デザインコンセプト
テーブル81の設計思想は、アアルトが追求した人間中心のモダニズムに根ざしている。1920年代から30年代の国際モダニズムが鉄とガラスによる機能主義を志向したのに対し、アアルトは人間の感覚に寄り添う素材――とりわけ木材――にこそ近代デザインの可能性を見出した。
L-レッグ:「建築の柱の妹」
テーブル81の構造的な核心であるL-レッグは、アアルト自身が「建築の柱の妹(the little sister of the architectural column)」と呼んだ部材である。バーチ無垢材の端部に複数の縦方向の切り込みを入れ、その間にベニヤ片を挟んで接着し、湿った状態のまま直角に曲げて固定する。この手法により、従来の複雑な仕口加工が不要となり、量産の道が開かれた。1933年に英国で最初の特許が出願され、翌年フィンランド、1936年には米国でも特許が認められた。
L-レッグは天板の裏面にネジで直接固定されるため、幕板やブラケットなどの追加部材を最小限に抑えられる。この構造上の合理性が、テーブル81の軽快な外観と軽さを生み出している。スツール60やチェア類をはじめ、多くのプロダクトがこのL-レッグを共有しており、アアルトが構想した標準化(スタンダーダイゼーション)の考え方を今日まで受け継いでいる。
素材へのまなざし
フィンランド産のバーチ材は、北欧の寒冷な気候のもとでゆっくりと成長するため、きめ細かな木目と適度な硬度を備えている。アアルトはこの地場産材を近代的な工業素材として確立することに尽力し、木材加工技術の革新を通じて、自然と人間の共生というフィンランド的な価値観をデザインに結びつけた。天板の芯材にはバーチ無垢材、チップボード、合板ハニカム構造が用いられ、軽量性と堅牢性を両立している。水性ラッカーの採用は環境負荷への配慮でもある。
汎用性
テーブル81が長く生産を続けている理由のひとつは、その汎用性にある。ダイニングテーブル、ワークデスク、会議テーブル、子ども部屋の学習机、カフェの客席――ひとつの製品がこれほど多様な場面に無理なく収まるのは、装飾を排した構造の明快さと、バーチ材がもたらす中立的な佇まいゆえである。アアルトが理想とした「多目的性のある家具(versatile furniture)」の考え方が、このテーブルに素直に表れている。
基本情報
| 正式名称 | テーブル81(Table 81) |
|---|---|
| デザイナー | アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)/ フィンランド / 1898–1976 |
| デザイン年 | 1935年 |
| 製造ブランド | Artek(アルテック)/ フィンランド |
| 主要素材 | 脚・天板木口:バーチ無垢材 / 天板芯材:バーチ無垢材、チップボード、合板ハニカム構造 / 天板仕上材:バーチ突板、ハイプレッシャーラミネート、リノリウム |
| サイズ(81A) | W150 × D75 × H74 cm(日本仕様は H72 cm) |
| サイズ(81B) | W120 × D75 × H74 cm(日本仕様は H72 cm) |
| サイズ(81C) | W75 × D75 × H74 cm(日本仕様は H72 cm) |
| 天板厚 | 約4 cm |
| 脚部構造 | L-レッグ(1933年特許取得の曲げ木技法) |
| 天板仕上げバリエーション | ナチュラルラッカー(バーチ突板)/ ホワイトラミネート / ブラックリノリウム / ワイルドバーチ突板(81Bのみ) |
| 塗装 | 水性ラッカー仕上げ |
| 組み立て | フラット梱包・要組み立て |
| 製造国 | フィンランド(バーチ突板天板は一部ドイツ製) |
| 参考価格帯(税込目安) | 81A:約25万円前後 / 81B:約20万円前後 / 81C:約15万円前後(仕上げ・サイズにより異なる。正規販売店にて要確認) |
テーブル81の購入を検討される方は購入ガイドもあわせてご覧ください。