概要

ベル・テーブルは、セバスチャン・ヘルクナーが設計し、ドイツのクラシコンが2012年から生産している小卓である。着色した手吹きのガラスでつくられた脚が床に接し、その上に真鍮や鋼の枠と天板が載る。脚が金属、甲板がガラスという一般的なテーブルの構成を上下で入れ替えた点に特徴がある。原型は2009年に発表され、製品化後はサイドテーブルとコーヒーテーブルの2種を基本に、天板や脚の素材を変えた仕様が加えられてきた。生産は現在も続いている。

特徴・コンセプト

支えるものと載るものを入れ替える

テーブルは通常、金属や木でつくった脚がガラスの甲板を支える。ベル・テーブルはこの関係を反対にして、ガラスを床に接する支持体、金属を上部に置いた。ヘルクナーはこの製品について、金属の脚とガラスの天板という組み合わせを上下逆にしたのだと説明している。

入れ替えの結果、上部の金属は重さを感じさせながら透明な脚の上に浮いて見える。着色ガラスは光を受けると床や壁に色のついた影を落とし、本来は目立たない支持部が視線の集まる部分になる。ガラスの色は表面に塗ったものではなく素材そのものの色で、クオーツグレー、アメジストバイオレット、オリーブグリーン、アンバーオレンジ、エメラルドグリーン、モンタナブルー、サファイアブルーの7色が用意されている。

木型に吹き込んでつくる脚

脚は着色したガラスを木型に吹き込んで成形する。手吹きガラスの工程で型に吹き込んで得られる形は軸のまわりに対称な回転体に限られ、角や極端なくびれはつくれない。鐘に似た曲線の輪郭は、この成形法で扱える範囲のなかから選ばれている。

一台ずつ人の手で吹くため、ガラスの厚みには差が出て、小さな気泡や表面の凹凸も残る。クラシコンはこれを不良ではなく手吹きの特徴だと取扱説明書に明記しており、同じ色を選んでも輪郭と透明度は一台ごとに異なる。

枠に落とし込むだけの天板

上部は、無垢の真鍮またはアルミニウムにクリアラッカーを施した枠か、黒く仕上げた鋼の枠で構成される。天板はこの枠の内側に樹脂の緩衝材を介して置かれるだけで、接着も固定もされていない。

固定しない構成をとったことで、天板は部品として単独で注文でき、使う側で入れ替えられる。選べるのは黒いラッカー塗装を施したクリスタルガラス、数種類の大理石、そして2024年に加わった、麦藁を中心から放射状に張ってガラスに封じたストローマルケトリーの天板である。脚をそのままに、上面の反射と手触りだけを替えられる。

ガラスで支えることの条件

支持部がガラスであるため、使い方には制約が伴う。クラシコンは天板に載せてよい重さを3kgまでとし、上に立ったり腰かけたりしないこと、移動は持ち上げて2人で行うことを指示している。硬い床では付属のフェルトをガラスの底面に貼り、毛足の長い敷物の上では安定が保証されない。屋外での使用も想定されていない。

耐荷重を上げる方向で構造を補強するのではなく、飲み物や本を置く小卓として使う範囲に用途を限ることで、ガラスの脚という構成を成り立たせている。

エピソード

2009年の発表と、断られ続けた3年

ヘルクナーは2006年に自身のスタジオを設立し、2009年、ミラノサローネの若手向け企画であるサローネサテリテでベル・テーブルの原型を発表した。当時の見本市では新しい素材と製造技術への関心が強く、伝統的な手仕事の工程に寄った提案は流れから外れていた。

本人の回想によれば、この試作を持ち込んだメーカーからはより手堅い製品を求められ、断られ続けた。ガラスと真鍮を組み合わせること自体が当時は珍しいと受け取られていたという。発表自体は媒体に取り上げられたものの、生産にたどりつくまでには3年かかっている。

買い手として現れたメーカー

転機になったのは、クラシコンのオーナーであるオリヴァー・ホリーからの連絡だった。ヘルクナーの回想では、ホリーは自分用に1台買いたいと申し出たうえで、同社での生産を提案した。2012年、ベル・テーブルはクラシコンの製品として発売され、ヘルクナーの名が国外に知られる最初の製品になった。

ガラス工房を探す

製品化には、この大きさの脚を着色ガラスで吹ける工房を見つける必要があった。ヘルクナーによれば、探した末に行き着いたのは、バイエルン州のチェコ国境に近い地域にある、450年以上続く家族経営のガラス工房だった。訪ねた当時、その工房はガラスの需要が細って仕事が減っていたという。

試作を手がけた工房がそのまま量産を担うことになり、生産が続くなかで若い吹き手も加わった。ヘルクナーは後年のインタビューで、産地に仕事が戻ったことをこの製品の成果として挙げている。

発売後に増えた仕様

発売時のサイズは、径50cm・高さ53cmのサイドテーブルと、径75cm・高さ36cmのコーヒーテーブルの2種である。脚の高さと甲板の径の比を変えることで、同じ輪郭のまま用途を分けている。

2013年には銅を用いた特別仕様が加わった。2023年には、ガラスの脚を無垢の大理石に置き換えたベル・サイドテーブル・マーブルが発表されている。2024年にはストローマルケトリーの天板、2025年には脚を大理石としたベル・ダイニングテーブルが加わり、6脚まで囲める寸法にまで広がった。

評価と影響

ベル・テーブルは一般に、2010年前後のドイツのデザインにおいて、新しい素材や加工技術ではなく既存の手仕事の工程を前提として設計された例として参照される。ヘルクナー自身も、この製品で吹きガラスと金属の加工について学んだと述べており、以後の仕事でも産地の工房と組む進め方を続けている。

素材の組み合わせについて、ヘルクナーは発表当時を、ガラスと真鍮が再び使われはじめる時期だったと振り返っている。クラシコンは発売から10年以上を経た現在も同じ工程で生産を続けており、サイズと素材の異なる派生を加えている。

受賞

デザイナーの公式サイトは、ベル・テーブルの項目にレッド・ドット・デザイン賞(2010年)を記載している。

基本情報

デザイナー セバスチャン・ヘルクナー
ブランド クラシコン
発表年 2012年(原型の発表は2009年)
デザインの成立国 ドイツ
主要素材 手吹きガラス(脚)、真鍮・アルミニウム・鋼(枠)、クリスタルガラス・大理石・ストローマルケトリー(天板)
サイズ サイドテーブル 径50×高53cm/コーヒーテーブル 径75×高36cm
耐荷重 3kg
生産 継続中

Reference