概要

セバスチャン・ヘルクナー(1981年生まれ)は、ドイツのデザイナーである。2006年に学生のままオッフェンバッハでスタジオを設立した。手吹きガラス、曲げ木、編み、鋳造といった手作業の工程を持つ産地と組み、その工程で成立する形を設計する。2012年のベル・テーブル以降、クラシコン、モローゾ、トーネット、リーン・ロゼなどと協働している。

バイオグラフィー

1981年、ドイツ南西部のバート・メルゲントハイムに生まれた。2001年からオッフェンバッハ造形大学(HfG Offenbach)でプロダクトデザインを学んでいる。

在学中の2006年、オッフェンバッハに自身のスタジオを設立した。翌2007年に学位を取得している。

2012年、クラシコンから発表したベル・テーブルが最初の国際的な製品となった。以後、モローゾ、トーネット、プルポ、リーン・ロゼ、カッペリーニ、グロスターなどの製品を手がけている。

2016年にケルン国際家具見本市(imm cologne)の名誉ゲストに選ばれ、2019年にはパリのメゾン・エ・オブジェでデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選出された。

デザインの思想と方法

ヘルクナーの設計は、産地の工房で何ができるかを確かめることから始まる。手吹きガラスは型で押さえられる範囲が決まっており、曲げ木は曲率に限界がある。編みは手数と密度の関係で寸法が決まる。彼が扱うのは、この制約の内側で成立する形である。

工程の制約を形の条件にする

ベル・テーブルでは、木型を使った手吹きで着色ガラスの脚をつくる。吹きガラスは一回の作業で成形するため、形は上下方向に連続した回転体に限られ、極端な絞りもつくれない。この制約が、鐘のような輪郭を決めている。制約を回避するのではなく、それを前提として形を決める順序をとる。

重い部分を下に置く

ベル・テーブルはガラスの脚に金属の天板を載せる。通常は逆で、脆い材料を上に、丈夫な材料を下に置く。この反転により、透明なガラスの塊が全体を支えているように見える。材料の役割を入れ替えることで、見え方が変わるという操作にあたる。

産地の技法を持ち込む

モローゾのアフリカ関連の系列では、セネガルの職人による編みの技法を用いている。コロンビア、インド、日本など各地の工房とも組んでおり、産地の技法をそのまま製品に組み込む形をとる。素材の見た目を模すのではなく、実際にその工程で製作する。

色を材料の側で決める

着色ガラス、染色した革、粉体塗装の金属といった材料では、色は表面に塗るのではなく材料そのものが持つ。ヘルクナーが幅広い色を使えるのは、それぞれの材料が対応できる色域を先に把握しているためである。

代表作にみる方法

ベル・テーブル(2012年、クラシコン)

木型を用いた手吹きの着色ガラスを脚とし、その上に真鍮または鋼の枠と天板を載せた小卓である。脆いガラスを支持部に、丈夫な金属を天板にという反転した構成をとる。ガラスは吹きの工程上、回転体に限られ、鐘形の輪郭はその制約から決まっている。ヘルクナーの名を国外に知らせた最初の製品にあたる。

オダ・ランプ(2014年、プルポ)

手吹きガラスの円筒に、金属の枠と革のベルトを組み合わせた照明である。ガラスの径と高さの比を変えて複数の大きさが用意される。産業構造物を撮影した写真の系列を参照しているが、形そのものは吹きガラスの成形範囲から決まっている。

バンジューリ(モローゾ)

金属の枠に、セネガルの職人が樹脂の紐を編んで面をつくる屋外用の椅子である。編みの密度と方向で座り心地と強度が決まるため、枠の設計は編める範囲に合わせて行われる。産地の技法を工程ごと製品に組み込んだ例にあたる。

118チェア(2018年、トーネット)

同社が19世紀から用いてきた曲げ木の工程で製作される椅子である。座枠を一本の材から曲げてつくり、脚の接合部だけをCNC加工で精密に仕上げる。曲げ木の曲率の限界は変わらないため、新しいのは接合の処理の側になる。既存の工程を前提に、加工技術の更新分だけを設計に反映した例である。

タル・ソファ(2020年、リーン・ロゼ)

低い座面と厚みのある背もたれを持つ長椅子である。背から肘掛けへ連続する面が緩やかに膨らみ、脚部は隠れる。体積を確保しながら床との関係で軽く見せるという処理をとっている。

評価と影響

ヘルクナーは一般に、2010年代以降のドイツのデザインにおいて、産地の手作業の工程を製品設計に組み込む方向を代表する設計者と評価されている。素材の見た目を模すのではなく、実際にその工程で製作する点が挙げられる。

クラシコン、モローゾ、トーネット、リーン・ロゼといった長い歴史を持つメーカーとの協働が続いており、いずれも既存の製造設備を前提とした設計になっている。

2016年のケルン国際家具見本市の名誉ゲスト、2019年のメゾン・エ・オブジェのデザイナー・オブ・ザ・イヤーが、評価の節目として言及される。

受賞・収蔵

受賞

  • 2011年 ジャーマン・デザイン・アワード 新人部門
  • 2016年 imm cologne 名誉ゲスト
  • 2019年 メゾン・エ・オブジェ デザイナー・オブ・ザ・イヤー
  • 2020年 ジャーマン・デザイン・アワード

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
2012年 テーブル ベル・テーブル ClassiCon
2014年 照明 オダ・ランプ Pulpo
2015年 椅子 バンジューリ Moroso
2018年 椅子 118チェア Thonet
2020年 ソファ タル・ソファ Ligne Roset
2020年代 ソファ リトス・ソファ Cappellini
2020年代 屋外家具 ヘイヴン コレクション Gloster

プロフィール

生年 1981年
出身地 ドイツ・バート・メルゲントハイム
国籍 ドイツ
活動拠点 オッフェンバッハ
分野 家具、照明
主な協働ブランド ClassiCon、Moroso、Thonet、Ligne Roset、Pulpo、Cappellini、Gloster

Reference

Studio Sebastian Herkner(公式)
https://sebastianherkner.com/
Sebastian Herkner | ClassiCon
https://www.classicon.com/en/designer/sebastian-herkner
Sebastian Herkner | Moroso
https://www.moroso.it/designer/sebastian-herkner/
Sebastian Herkner | Thonet
https://www.thonet.de/en/designer/sebastian-herkner