概要

ステーションクロックは、アルネ・ヤコブセンが1941年頃に描いた文字盤である。電気機器メーカーのラウリッツ・クヌーセン(LK)社のために設計されたもので、同社が数年前にヤコブセンへ依頼していたLKテーブルクロックの文字盤を置き換えるものとして構想された。駅舎を含むあらゆる建物に用いられる汎用的な時計を求めた依頼に応えたことが、この名の由来である。現在はローゼンダール コペンハーゲンが製造している。

特徴・コンセプト

アラビア数字の文字盤

ヤコブセンの4種の文字盤のうち、アラビア数字を用いるのはステーションだけである。数字は肉付きを抑えた簡潔な形で、白地から明瞭に立ち上がる。角を丸めず、線の太さを一定に保つ描き方がとられており、遠方からの判読を前提とした設計である。シリーズのなかでは最も直感的に時刻を読み取れる。

建築のためではない文字盤

シティホール クロックがロズオウア市庁舎、バンカーズ クロックがデンマーク国立銀行のために描かれたのに対し、ステーションは特定の建物を持たない。どの建物にも掛けられることが条件だったため、装飾を持たず、数字と針だけで成立する構成が選ばれている。ヤコブセンが建築や家具のほかに残したグラフィックの仕事のうち、初期の作例にあたる。

ケースと風防

現行品は、黒く仕上げたアルミニウムのリングが盤面を囲む。凹面の文字盤と凸面のミネラルガラスのレンズを組み合わせ、映り込みを抑えながら視認性を保つ。最大の直径480mmのモデルはリングを持たず、盤面が壁面から浮いて見える構成をとっている。

エピソード

ヤコブセンとラウリッツ・クヌーセン社の関わりは、1939年に同社向けに設計したテーブルクロックに始まる。当時新素材であったプラスチックの成形技術を持つ同社の事情を反映した製品だった。1941年頃、ヤコブセンはこの時計の文字盤を差し替える新しい図案を描く。それがステーションである。

ヤコブセンの時計はその後長く生産が途絶えたが、2009年にローゼンダール社が製造権を取得し、オリジナルの図面をもとに復刻を行った。監修には、ヤコブセンの事務所で製品開発を率いた建築家テイト・ヴァイラントが関与している。現行品の文字盤には、ヤコブセン自身の書体で彼の名が記されている。

評価と影響

ステーションは、ヤコブセンの文字盤群のなかで最も実用に近い位置にある。数字を残したことで、公共空間でも住宅でも同じように機能する。掛時計は直径160mmから480mmまで4サイズが展開されており、当初の「あらゆる建物のための汎用時計」という前提が現在の品揃えにも残っている。この文字盤には、のちの作品に現れる抽象化への傾向はまだ見られないが、装飾を持たず数字と針だけで成立する構成は、ヤコブセンが後年まで手放さなかった原則をすでに示している。

基本情報

名称 ステーションクロック / Station Clock
デザイナー アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)
ブランド ローゼンダール コペンハーゲン(Rosendahl Copenhagen/2009年〜)
発表年 1941年頃
デザインの成立国 デンマーク
分類 掛時計(置時計モデルもあり)
文字盤 白地にアラビア数字。ヤコブセンによるオリジナル書体
主要素材 アルミニウムケース、ミネラルガラスのレンズ
サイズ展開(掛時計) 直径160 / 210 / 290 / 480mm
設計の背景 ラウリッツ・クヌーセン(LK)社のための汎用時計の文字盤として設計

Reference

Arne Jacobsen Clocks | Rosendahl Copenhagen
https://www.rosendahl.com/en-gb/arne-jacobsen-clocks