シティホール クロック ― 建築と時間の融合

シティホール クロックは、デンマークが誇る建築家アルネ・ヤコブセンが1956年にデザインした壁掛け時計である。コペンハーゲン近郊のロドーヴァ市庁舎のために設計されたこの時計は、建築空間と調和する時計という新たな概念を提示し、北欧モダニズムの精髄を今日に伝える傑作として高い評価を受けている。

概要

1956年、アルネ・ヤコブセンはロドーヴァ市庁舎の設計を手がけた。この建築プロジェクトにおいて、ヤコブセンは建物の外観から内装、家具、そして時計に至るまで、すべてのデザインを一貫した美学のもとに統合するという「トータルデザイン」の理念を実践した。シティホール クロックは、まさにこの理念の結晶として誕生した作品である。

文字盤には、12個の矩形のインデックスが等間隔に配置され、その簡潔な造形は視認性と審美性を高次元で両立させている。針の形状もまた、シンプルでありながら洗練された印象を与え、いかなる空間にも静謐な存在感をもたらす。現在はローゼンダール社がヤコブセンの遺産を継承し、オリジナルデザインに忠実な復刻版を製造している。

特徴・デザインコンセプト

トータルデザインの思想

ヤコブセンのデザイン哲学の核心には、建築と内装の完全な調和という理念がある。彼は建物を単なる構造体としてではなく、人々の生活を包み込む総合的な環境として捉えた。シティホール クロックにおいても、この思想は明確に表現されている。時計は壁面の一部として溶け込みながらも、独自の存在感を放つよう設計されている。

ミニマリズムの美学

本作品の最も顕著な特徴は、徹底したミニマリズムにある。文字盤には数字を一切用いず、12個のブロック型インデックスのみで時刻を表示する。この大胆な省略は、視覚的なノイズを排除し、時間の本質的な読み取りに集中することを可能にしている。余分な装飾を削ぎ落とすことで、かえって深い美しさが生まれるという北欧デザインの真髄がここに凝縮されている。

機能美の追求

ヤコブセンは「形態は機能に従う」というモダニズムの原則を、独自の解釈で発展させた。シティホール クロックにおいては、時刻を正確に伝えるという時計本来の機能が、美的完成度を犠牲にすることなく達成されている。ブロック型インデックスの配置と針の長さ・太さの比率は、最適な視認性を確保するために綿密に計算されており、機能と美の完璧な融合を実現している。

エピソード

ロドーヴァ市庁舎プロジェクト

1952年から1956年にかけて進行したロドーヴァ市庁舎プロジェクトは、ヤコブセンのキャリアにおける重要な転換点となった。彼はこのプロジェクトで、建築、インテリア、家具、照明、さらには灰皿やドアハンドルに至るまで、建物内のあらゆる要素をデザインした。シティホール クロックは、この包括的なデザインアプローチの中で生み出された作品の一つであり、空間全体との調和を最優先に設計された。

復刻とローゼンダール社

ヤコブセンの死後、彼がデザインした時計コレクションは長らく生産が途絶えていた。しかし、デンマークの老舗テーブルウェアメーカーであるローゼンダール社が、ヤコブセンの遺族および財団と協力し、オリジナルの設計図に基づいた忠実な復刻を実現した。この復刻版は、素材の選定から製造工程に至るまで、ヤコブセンのデザイン意図を最大限に尊重して制作されている。

評価

シティホール クロックは、20世紀デザイン史における壁掛け時計の金字塔として、世界中のデザイン愛好家から高い評価を受けている。その影響力は、単なる時計デザインの領域を超え、建築空間におけるプロダクトデザインのあり方そのものに新たな視座を提供した。

デンマーク・デザイン・センターをはじめとする各国のデザイン機関においても、本作品は北欧モダニズムを代表する工業製品として紹介されており、デザイン教育の現場でも頻繁に参照される存在となっている。シンプルでありながら時代を超越した美しさを持つこの時計は、発表から70年近くを経た現在もなお、多くの人々に愛され続けている。

アルネ・ヤコブセンについて

アルネ・ヤコブセン(1902-1971)は、20世紀を代表するデンマークの建築家・デザイナーである。コペンハーゲン王立芸術アカデミーで建築を学び、1927年に自身の設計事務所を設立した。建築作品としては、ロドーヴァ市庁舎、SASロイヤルホテル(現ラディソン・コレクション・ロイヤルホテル)、デンマーク国立銀行などが特に知られている。

家具デザインの分野では、セブンチェア、エッグチェア、スワンチェアなど、20世紀を代表する名作を数多く生み出した。これらの作品は現在もフリッツ・ハンセン社から製造され、世界中で愛用されている。ヤコブセンは、建築とプロダクトデザインの両分野で卓越した業績を残し、北欧モダニズムの確立に多大な貢献を果たした巨匠として、没後50年以上を経た現在もなお、その影響力は衰えることがない。

基本情報

製品名 シティホール クロック(City Hall Clock)
デザイナー アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)
デザイン年 1956年
メーカー ローゼンダール(Rosendahl)
原産国 デンマーク
デザイン背景 ロドーヴァ市庁舎(Rødovre Town Hall)のためにデザイン
カテゴリー 壁掛け時計
デザイン様式 デニッシュ・モダン / ミッドセンチュリー・モダン