概要

バンカーズ クロックは、アルネ・ヤコブセンが1970年にデンマーク国立銀行のために設計した掛時計である。ヤコブセンが手がけた文字盤のうち最後のものにあたり、数字も分目盛も用いず、大きさの異なる12個の矩形だけで時刻を示す。現在はローゼンダール コペンハーゲンが製造している。

特徴・コンセプト

12個の矩形による時刻表示

文字盤には数字も分目盛もない。12の時刻は12個の矩形で示され、そのうち一つが塗りつぶされている。矩形は時計回りに少しずつ大きさを変えていくため、盤面全体には中心から外へ渦を巻くような動きが生まれる。時刻を数字として読むのではなく、図形の位置と大きさで捉えさせる構成であり、ヤコブセンの文字盤のなかでも最も抽象度が高い。

壁から浮かぶ佇まい

オリジナルは、きわめて細いフレーム、凹面のクリスタル、そして壁と本体のあいだに隙間をつくるブラケットで構成されていた。この隙間により、時計は壁に貼り付くのではなく、わずかに浮いて見える。現行品もこの構成を踏襲し、アルミニウムケースとミネラルガラスのレンズを組み合わせている。

銀行建築との対応

デンマーク国立銀行は、外観こそ閉じた直方体だが、内部には天井の高い開かれた空間が広がる。ヤコブセンは建物の内装を細部まで設計しており、バンカーズ クロックもその一部として構想された。装飾を排した文字盤は、大理石とガラスで構成された内部空間の抑制された表情と対応している。

エピソード

デンマーク国立銀行の設計は1961年に始まり、第一期は1971年に完成、全体の竣工は1978年に至った。ヤコブセンは1971年3月に世を去っており、建物の完成を見ていない。工事は同僚のハンス・ディセンらが引き継いだ。バンカーズ クロックは、この最後の建築プロジェクトのために描かれたプロダクトの一つである。

時計は間もなく一般向けにも販売されるようになった。その後長く生産が途絶えていたが、2009年にローゼンダール社がヤコブセンの時計群の製造権を取得し、復刻に着手する。復刻にあたっては、ヤコブセンの事務所で長く製品開発を担い、のちにディッシング+ヴァイトリングに移ったテイト・ヴァイラントが監修者として関与した。現行品の文字盤には、ヤコブセン自身の書体で彼の名が記されている。

評価と影響

ローゼンダールが復刻したヤコブセンの文字盤は、ステーションクロック、ローマン、シティホール クロック、バンカーズの4種である。それぞれが1940年代から1970年代までの各時期に対応し、初期の数字を用いた文字盤から、線、そして矩形の配列へと、表示が段階的に抽象化していく過程を示している。バンカーズはその到達点にあたる。

数字を持たない文字盤は、時刻を読む速さでは数字盤に劣る。それでもこの時計が長く使われてきたのは、盤面が図形の構成として自立しており、壁面に掛けたときに時計としてだけでなく一枚の図として働くためである。

基本情報

名称 バンカーズ クロック / Bankers Clock
デザイナー アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)
ブランド ローゼンダール コペンハーゲン(Rosendahl Copenhagen/2009年〜)
発表年 1970年(製造元ローゼンダールは1971年と表記)
デザインの成立国 デンマーク
分類 掛時計(置時計モデルもあり)
文字盤 数字・分目盛なし。大きさの異なる12個の矩形インデックス
主要素材 アルミニウムケース、ミネラルガラスのレンズ
サイズ展開(掛時計) 直径120 / 160 / 210 / 290 / 480mm
設計の背景 デンマーク国立銀行(Danmarks Nationalbank)の内装設計の一環

Reference

Arne Jacobsen Clocks | Rosendahl Copenhagen
https://www.rosendahl.com/en-gb/arne-jacobsen-clocks