シティホール クロックは、アルネ・ヤコブセンが1955年に設計した掛時計である。コペンハーゲン近郊のロドーヴァ市庁舎(1956年竣工)のために描かれた文字盤で、数字を用いず、簡潔な線だけで12の時刻を示す。市庁舎の完成から数年後に製品化され、現在はローゼンダール社が製造している。
特徴・コンセプト
数字を線に置き換える
文字盤から数字を取り除き、12本の直線に置き換えたことが、この時計の設計上の要点である。線は太さと長さを抑えられており、盤面はほとんど余白で占められる。時刻は数字を読むのではなく、針と線の角度の関係から把握される。1950年代を通じてヤコブセンの造形が単純化へ向かった過程が、この文字盤に現れている。
建築との対応
ロドーヴァ市庁舎は、ソルヴォー大理石とカーテンウォールで覆われた二つの直方体として構成された建物である。ヤコブセンは建築だけでなく、家具、照明、金物に至るまで内部の要素を設計した。数字を持たない文字盤は、装飾を排したこの建物の輪郭に対応するものとして描かれている。
ケースと風防
現行のローゼンダール製品は、アルミニウムのケースにミネラルガラスのレンズを組み合わせている。凹面の文字盤を凸面のレンズが覆う構成は、光の映り込みを抑えつつ、壁面からわずかに浮き上がるような見え方をつくる。ステーション クロックが黒く仕上げたアルミニウムのリングを持つのに対し、シティホールは同じ形式のリングを地のアルミニウム色で仕上げている。
エピソード
市庁舎の時計から製品へ
この文字盤は、当初ロドーヴァ市庁舎の室内に掛けるためだけに描かれたものだった。市庁舎の完成から数年を経て一般向けの製品として生産され、特定の建物のための図案が広く流通する時計になった。文字盤の原図は、寸法を書き込んだ印刷物としてデンマーク王立図書館に残されている。
復刻
ヤコブセンの時計は長く生産が途絶えていたが、2009年にローゼンダール社が製造権を取得し、オリジナルの図面をもとに復刻した。監修には、ヤコブセンの事務所で製品開発を率いた建築家テイト・ヴァイラントが加わっている。現行品の文字盤には、ヤコブセン自身の書体で彼の名が記されている。
評価
シティホール クロックは、ヤコブセンの4種の文字盤のなかで最も要素の少ない構成を持つ。1941年のステーションが数字を、1942年のローマンがローマ数字を用いたのに対し、この文字盤は数字そのものを手放した。のちの1970年のバンカーズでは目盛すら矩形に置き換えられており、シティホールはその中間に位置する。
数字のない文字盤は瞬時の判読には向かない。それでも公共施設の壁面という当初の用途を離れ、住宅やオフィスで使われ続けてきたのは、盤面が壁の一部として静かに収まるためである。
基本情報
| 製品名 | City Hall Clock(シティホール クロック) |
|---|---|
| デザイナー | アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen) |
| デザイン年 | 1955年(アルネ・ヤコブセン デザインアーカイブによる。市庁舎の竣工は1956年) |
| ブランド | ローゼンダール コペンハーゲン(Rosendahl Copenhagen) |
| 原産国 | デンマーク |
| 設計の背景 | ロドーヴァ市庁舎(Rødovre Town Hall)のためのデザイン |
| カテゴリー | 掛時計(置時計モデルもあり) |
| 文字盤 | 数字を用いず、12本の線状インデックスのみ |
| 素材 | アルミニウムケース、ミネラルガラスレンズ |
| サイズ展開(掛時計) | φ160 / 210 / 290mm |
| 現行生産 | 2009年よりローゼンダール社が製造 |