概要

PP503は、ハンス・J・ウェグナーが1950年に発表したアームチェアである。前年のPP501 ザ・チェアの座面を張り座に変えたモデルで、あわせて背の接合部の見せ方も改められた。当初はヨハネス・ハンセンの工房でJH503として製作され、現在はPP Møblerが生産している。

特徴・コンセプト

張り座への変更

座面は籐編みに代えて、ファブリックまたはレザーを張り込む。PP Møblerが示す生地の必要量は65×55cmで、座枠の範囲だけを張る仕様であることが分かる。籐の座面には、乾燥による割れを防ぐために定期的に湿らせる必要があること、保証が2年に限られること、家庭用に限られることといった条件が付く。張り座はこれらの制約を外し、湿度の管理が難しい場所でも使えるようにする。

座り心地の面では、籐のわずかなたわみがなくなり、面で支える感触に変わる。どちらが優れているという性質のものではなく、置く場所と好みで選ぶことになる。

フィンガージョイントの採用

この椅子の背は3つの部材からできている。1949年の初期型では接合部を籐の巻きで覆っていた。座面が籐編みである以上、巻きの籐は座面と呼応して収まっていた。

座面を張り座に変えると、籐は背の接合部にだけ残ることになる。1950年の変更でウェグナーは木の面をそのまま見せる方向を選び、接合部をジグザグ状に噛み合うフィンガージョイントに改めた。隠すための処置を、見せるための造作に置き換えたことになる。木目が接合部をまたいで連続するため、背が一本の材から削り出されたように見える。現在はPP501もこの接合方法を共有している。

寸法と樹種

幅63cm、奥行52cm、高さ76cm、座面高44cm、アームレスト高70cm。寸法はPP501と共通で、同じテーブルに混ぜて並べられる。樹種はオーク、アッシュ、チェリー、ウォールナットから選べ、仕上げはソープ仕上げ、ホワイトバイオオイル、クリアバイオオイルが樹種に応じて用意される。背は5インチ厚の無垢材から削り出される。

エピソード

2025年12月2日から2026年1月18日にかけて、東京・渋谷のヒカリエホールで「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」が開催された。主催はBunkamura、学術協力は織田憲嗣、会場構成は田根剛。PP MøblerとCarl Hansen & Sønが協力に名を連ねた。会場にはザ・チェアのプロトタイプと、笠木に籐を巻いた初期型を含む4脚のバリエーションが並び、接合部の処理の違いを実物で比較できる構成がとられた。

この展覧会にあわせて、PP MøblerはPP503のミュージアムエディションを10脚限定で特別生産した。スモークドオークのフレームにヌバックレザーの座面を組み合わせた仕様で、会場限定で販売された。

1949年の初出から国外で知られていく経緯と、PP501との位置づけの違いについては ラウンドチェア にまとめている。

基本情報

名称 PP503 ザ・チェア(ラウンドチェア)
デザイナー ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)
ブランド PP Møbler(当初はヨハネス・ハンセン)
発表年 1950年
デザインの成立国 デンマーク
座面 ファブリックまたはレザー張り(生地必要量65×55cm)
樹種・仕上げ オーク、アッシュ、チェリー、ウォールナット/ソープ、ホワイトバイオオイル、クリアバイオオイル
サイズ 幅63cm × 奥行52cm × 高さ76cm、座面高44cm、アームレスト高70cm
背の接合 2箇所のフィンガージョイント
旧型番 JH503(ヨハネス・ハンセン時代)

Reference

pp501/pp503 | Round Chair | PP Møbler
https://pp.dk/product/pp501-pp503/
織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ | Bunkamura
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/25_wegner/information.html
織田コレクション ハンス・ウェグナー展 | Oda Collection
https://odacollection.jp/exhibitions/250919/