ルイゴーストは、フィリップ・スタルクが2002年にカルテルのために設計したアームチェアである。ポリカーボネートの射出成形による一体構造で、透明なものと着色されたものが供給される。
形は18世紀フランスのルイ15世様式の椅子を下敷きとしている。楕円形の背もたれ、外へ開く前脚、丸みを帯びた肘掛け。その輪郭を、透明な樹脂という現代の素材へ移した仕事にあたる。
特徴・コンセプト
スタルクはこの椅子のバロック的な形について、西洋の集合的な記憶に由来すると述べている。装飾を彫り込むのではなく、輪郭だけを引き継ぐ。表面の彫刻も張り地もないため、残るのは形の記憶だけになる。
透明であることが、この設計の要になっている。椅子は空間を占めるが視界を遮らない。背後の壁や床が透けて見えるため、置いても部屋が狭く感じられない。歴史的な形でありながら、存在感は希薄になる。
ポリカーボネートは衝撃に強く、耐候性も高い。一体成形のため接合部がなく、屋外でも使える。スタッキングにも対応する。
カルテルはルイゴーストに続き、肘掛けのないヴィクトリア ゴースト(2005年)、子供用のルールーゴースト(2008年)を発表した。同じ発想を寸法と用途を変えて展開したシリーズである。
背景
カルテルは1949年創業のイタリアのメーカーである。プラスチックを家具の素材として確立してきた歴史を持ち、1967年のジョエ・コロンボによるウニヴェルサーレ チェア 4867は、射出成形による全プラスチック製の椅子として早い例にあたる。
スタルクとカルテルの協働は長く、1980年代のドクター・グロブ、1998年のラ・マリー、2000年のバブル・クラブ ソファなどを経てルイゴーストに至る。ラ・マリーは透明ポリカーボネートによる椅子の先行例で、ルイゴーストはその素材の扱いに歴史的な形を持ち込んだものと位置づけられる。
既存の様式を引用して新しい形をつくるという手法は、同じスタルクによるマスターズチェアにも見られる。
評価
実務では、狭い住宅や、既存の家具と様式が合わない空間で選ばれることが多い。透明であるため周囲の色や様式と衝突しにくく、和室でも現代的なリビングでも収まる。
一方、透明樹脂は傷が目立つ。長期の使用では表面に細かい擦り傷が蓄積し、透明度が下がる。屋外で使う場合は紫外線による黄変も考慮に入れる必要がある。
ガラスによる透明な椅子としては、チニ・ボエリがフィアム・イタリアのために設計したゴーストチェア(1987年)があり、こちらは12mm厚のガラス一枚から切り出される。素材も製法も異なる別の解答にあたる。
フィリップ・スタルクの設計思想や経歴について詳しくはフィリップ・スタルクプロフィールページをご覧ください。
カルテルの歴史や他の製品について詳しくはカルテルブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | フィリップ・スタルク / Philippe Starck |
|---|---|
| 発表年 | 2002年 |
| ブランド | カルテル / Kartell |
| カテゴリー | アームチェア |
| 素材 | ポリカーボネート(射出成形・一体構造) |
| 色 | 透明、着色(半透明・不透明) |
| 機能 | スタッキング可、屋内外対応 |
| 造形の出自 | ルイ15世様式の椅子 |
| シリーズ | ヴィクトリア ゴースト(2005年)、ルルゴースト(2008年、子供用) |