概要

ハンギングエッグチェアは、1959年にナナ&ヨルゲン・ディッツェル夫妻がデザインした、デンマークデザインを代表する吊り下げ式チェアである。天井から吊るされた卵型のシェルが座る者を包み込み、やわらかな揺れとともに半個室のようなプライベートな空間をつくり出す。ラタンによる。

ディッツェル夫妻は1950年からラタンの実験に取り組んでいた。シェルとフレームを一体化させた初期の設計にあたる。

デザインの特徴とコンセプト

シェルは卵型をとり、開口部を除いて座る人を囲う。脚で支える椅子では床に接地点が要るが、天井から吊れば床面を占有しない。吊り点が1箇所のため、荷重の位置がずれると揺れる。

ラタンは中実で、中空の竹と異なり曲げても潰れない。10〜15分ほど蒸せば手で成形でき、冷えると形が定まる。型や加圧の設備を用いずに三次元の曲面が得られる。吊り下げる構成では自重が問題になるが、編み構造なら面が空隙を含むぶん軽い。

シェルとフレームが分離しないため、荷重は編み目の全体へ分散する。骨組みに面を張る構成では接合部に力が集まるが、一体であればその箇所が生じない。

エピソード

ハンギングエッグチェアには、直接の前身がある。1951年にデザインされたラナチェアは、三本脚のベースに卵型のラタンシェルを載せた作品で、座面とフレームを一体化させるという発想を先取りしていた。夫妻はこの一体型構造の実験を重ね、その延長線上で1959年にハンギングエッグチェアを生み出した。

エッグチェアは前年の1958年に発表されている。あちらは成形樹脂とフォームによる回転式で床に据えるのに対し、こちらはラタンを編んで天井から吊る。同じ卵型の囲いを、別の素材と設置方法で得ている。

評価と影響

床に接地せず天井から吊る構成は、バブルチェアにも見られる。あちらは透明なアクリルで囲いをつくり外が見えるのに対し、こちらは編み目の隙間から光と視線が通る。同じディッツェルによるトリニダードチェアも、面に隙間を設ける扱いを共有する。

4館の公開データでは、ハンギングエッグチェアの収蔵は確認できていない。

現在の生産

ハンギングエッグチェアは、現在デンマークの家具メーカーSika-Designが、デザイナーの子孫と協力しながらICONSコレクションの一部として生産を続けている。製品はインドネシアの熟練した籐細工職人の手によって編み上げられ、伝統的な製法が守られている。

屋外向けの仕様も用意される。アルミフレームに人工繊維を編むことで、天然のラタンと同じ編み構造のまま耐候性が確保される。

基本情報

デザイナー ナナ・ディッツェル、ヨルゲン・ディッツェル(Nanna & Jørgen Ditzel)
デザイン年 1959年
製造 Sika-Design(デンマーク/製作はインドネシア)
分類 チェア(ハンギングチェア)
素材 ラタン(籐)※屋外版はAlu-Rattan+アートファイバー
寸法 W 850mm × D 750mm × H 1250mm(座面高:約450mm)
コレクション Sika-Design ICONSコレクション
特徴 天井吊り下げ式、卵型シェル、ハンドメイド