概要
ナナ・ディッツェル(1923-2005)は、デンマークの家具・テキスタイルデザイナーである。家具、織物、宝飾、食器と扱う対象が広く、60年以上にわたり設計を続けた。1957年のハンギングエッグチェアは籐を編んで吊る椅子で、1993年のトリニダードチェアは成形合板に細い切り込みを並べた背を持つ。クヴァドラのテキスタイル「ハリングダール」も彼女の設計にあたる。
バイオグラフィー
1923年10月6日、コペンハーゲンに生まれた。家具職人の訓練を受けたのち、デンマーク王立芸術アカデミーで学び、1946年に修了している。
同年、同期のヨルゲン・ディッツェルと結婚し、共同で設計事務所を開いた。1950年代を通じて家具と宝飾を手がけている。
1961年にヨルゲンが没した後も設計を続けた。1968年にロンドンへ移り、テキスタイル会社を経営するクルト・ヘイヴァーと再婚している。
1986年にコペンハーゲンへ戻った。1990年代にはフレデリシア・ファニチャーのために家具を設計し、1993年のトリニダードチェアで知られる。2005年に没した。
デザインの思想と方法
ディッツェルの仕事は、家具、織物、宝飾、食器に及ぶ。規模も材料も異なるが、いずれも面をどう構成するかという問題として扱われる。籐を編む、合板に切り込みを入れる、糸を織るという操作は、面をつくる方法が違うだけである。
編んで面をつくる
ハンギングエッグチェアは、籐を編んで殻状の座面をつくり、天井から吊る。編んだ面は荷重に応じてたわみ、詰め物を要さない。脚を持たないため床に接する部分がなく、吊る位置で高さが決まる。
切り込みで曲げを得る
トリニダードチェアは、成形合板の背に細い切り込みを扇状に並べる。切り込みがあることで板がたわみ、身体に沿う。切り込みの間隔と長さがたわみ方を決めるため、開口の配置は装飾ではなく構造の条件から来ている。
糸の組み合わせで色をつくる
ハリングダールは、複数の色の糸を撚り合わせて織る織物である。単色の糸を用いるより色に幅が出て、光の当たり方で見え方が変わる。染めではなく糸の組み合わせで色をつくるという方法にあたる。
対象を限定しない
家具、織物、宝飾、食器と対象は異なるが、面をどう構成するかという問題として扱われる点で共通する。60年以上にわたり、この方法で仕事を続けた。
フリッツ・ハンセンの歴史や他の製品について詳しくはフリッツ・ハンセン ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
バスケットチェア(1950年頃)
籐を編んで構成した椅子である。ヨルゲン・ディッツェルとの共同設計にあたる。シカゴ美術館が2脚を収蔵している(収蔵番号2017.338.1-2)。
ハンギングエッグチェア(1957年)
籐を編んで殻状の座面をつくり、天井から吊る椅子である。編んだ面がたわむため詰め物を要さず、脚も持たない。床に接する部分がないので、下の空間が空く。ヨルゲン・ディッツェルとの共同設計で、シカ・デザインが生産している。→ハンギングエッグチェア
ハリングダール(1965年、クヴァドラ)
複数の色の糸を撚り合わせて織ったテキスタイルである。単色の糸より色に幅が出て、光の当たり方で見え方が変わる。染めではなく糸の組み合わせで色をつくる。現在も同社の主要な製品にあたる。
トリニダードチェア(1993年、フレデリシア)
成形合板の背に細い切り込みを扇状に並べた椅子である。切り込みによって板がたわみ、身体に沿う。切り込みの間隔と長さがたわみ方を決めるため、開口の配置は構造の条件から来ている。積み重ねができる。→トリニダードチェア
宝飾(1950年代〜)
ゲオルグ・イェンセンなどのために宝飾品を設計した。金属の面をどう構成するかという問題として、家具と同じ枠組みで扱われている。
評価と影響
ディッツェルは一般に、デンマークの設計者のなかで扱う対象の幅が広い人物と評価されている。家具、織物、宝飾、食器を60年以上にわたり手がけた。
1961年に夫ヨルゲンが没した後も設計を続け、以後の作品は単独名義で発表されている。1990年代のトリニダードチェアは70歳のときの設計にあたる。
クヴァドラのハリングダールは、糸の組み合わせで色をつくるという方法で知られ、現在も同社の主要な製品となっている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(AIC=シカゴ美術館)。
- AIC バスケットチェア 2脚(1950年頃) 収蔵番号 2017.338.1-2
MoMA、V&A、Met では該当する収蔵は確認できなかった。デンマーク国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1950年頃 | 椅子 | バスケットチェア(ヨルゲンと共同) | Sika Design |
| 1957年 | 椅子 | ハンギングエッグチェア | Sika Design |
| 1950-60年代 | 宝飾 | ゲオルグ・イェンセンのための宝飾 | Georg Jensen |
| 1965年 | テキスタイル | ハリングダール | Kvadrat |
| 1993年 | 椅子 | トリニダードチェア | Fredericia Furniture |
| 1990年代 | 家具 | フレデリシアのための家具 | Fredericia Furniture |
| 1960-90年代 | テキスタイル | クヴァドラのための織物 | Kvadrat |
プロフィール
| 生没年 | 1923年10月6日〜2005年 |
|---|---|
| 出身地 | デンマーク・コペンハーゲン |
| 国籍 | デンマーク |
| 活動拠点 | コペンハーゲン、ロンドン |
| 分野 | 家具、テキスタイル、宝飾、食器 |
| 主な協働ブランド | Fritz Hansen、Fredericia Furniture、Sika Design、Kvadrat、Georg Jensen |
Reference
- Nanna Ditzel | Fredericia
- https://www.fredericia.com/designers
- Sika Design
- https://sika-design.com/
- Kvadrat
- https://www.kvadrat.dk/
- The Art Institute of Chicago Collection
- https://www.artic.edu/collection