概要
イームズ プラスチック サイドチェア DSW は、チャールズ&レイ・イームズが1948年に構想し、1950年に製品化されたサイドチェアである。一体成形のシェルに、木のダウエル(丸棒)を用いた脚部を組み合わせる。名称はDining height / Side chair / Wood base の頭文字による。製造はハーマンミラーとヴィトラ。
特徴・コンセプト
座面と背を1枚で成立させる
シェルは座面と背もたれ、そして脇を支える部分までを一体で成形している。詰め物を持たないため、身体を受ける形はシェルの曲面がそのまま担う。座面の奥は深く落とし込まれ、前縁は下向きに曲げて腿の裏の圧迫を避ける。背もたれは荷重がかかるとわずかにたわみ、力を抜けば元に戻る。硬い一枚の面でありながら、姿勢の変化に追従する余地が形の側に組み込まれている。
イームズ夫妻は当初この形を成形合板で実現しようとしたが、三次元の曲面を一枚の板で成形するには無理があった。金属板のプレスによる試作を経て、最終的にガラス繊維で強化したポリエステル樹脂に行き着いている。求める形が先にあり、素材はそれを成立させるために選ばれた。
シェルとベースを分ける考え方
同じシェルに異なるベースを組み合わせることで、用途の違う椅子をつくり分けられる。1950年の時点で複数のベースが用意されており、ダイニング用の高さの木脚、ワイヤーによる低いベース、鋳造アルミニウムのベースなどが並んだ。シェルの型は一つで済み、ベースの取り替えで座り方を変えられる。以後広く使われるようになった多機能の椅子という考え方は、ここで示されたものである。
DSWのベースは木のダウエルを脚とし、金属の細い部材で斜めにつないで固める。木の脚は視覚的に細く見えるが、そのままでは横方向の力に弱い。斜材を入れて三角形をつくることで、細さを保ったまま揺れを抑えている。シェルと脚部はゴム製のショックマウントで接合され、荷重が一点に集中しない。
素材の置き換え
製品化当初のシェルはガラス繊維強化ポリエステル樹脂であったが、後にポリプロピレンへ変更された。2024年からは、ドイツの家庭ごみ回収から得られる再生プラスチックを用いた仕様に切り替わり、シリーズはEames Plastic Chair REと呼ばれている。再生材を使うため、明るい色のシェードには細かな斑点が現れる。素材が替わってもシェルの形は変わっていない。
エピソード
この椅子の原型は、ニューヨーク近代美術館が1948年に開催した「Low-Cost Furniture Design」のコンペティションに出品された。狭い住宅に置ける、手に入りやすく、動かしやすく、手入れのしやすい量産家具が求められていた時期である。出品時のシェルは金属をプレスしたもので、量産にあたって樹脂へ置き換えられた。
製造の相手には、航空機のレドームを手がけていたゼニス・プラスチックが選ばれた。家具の製造経験はなかったが、樹脂の成形についての技術を持っていた。1950年、Aシェル(肘掛け付き)とSシェル(肘掛けなし)が発売され、量産されたプラスチック製の椅子としては最初の例となった。
2015年、ヴィトラはベースの高さを43cmに改めた。1948年の設計以来、平均身長がおよそ10cm伸びたことへの対応で、同じ年にイームズ ラウンジチェアの高さも見直されている。変更幅は小さく、並べて比べなければ気づきにくい。
評価と影響
プラスチックを装飾や部品ではなく構造そのものに用いた点で、後続の設計に影響を与えた。ヴェルナー・パントンやエーロ・アールニオらによる1960年代以降のプラスチック家具は、この方向の延長にある。身体の形に沿って成形した一枚のシェルという考え方は、現在のオフィスチェアや施設向けの椅子にも受け継がれている。
ニューヨーク近代美術館は、同じシェルにワイヤーのベースを組み合わせた1950年型を収蔵番号641.1973で登録している(ガラス繊維強化ポリエステル、設計者からの寄贈)。木のダウエルベースのDSW自体は同館の登録記録には含まれない。
二人の設計思想や経歴について詳しくはチャールズ・イームズ、レイ・イームズの各プロフィールページをご覧ください。
ヴィトラの歴史や他の製品について詳しくはヴィトラブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | イームズ プラスチック サイドチェア DSW / Eames Plastic Side Chair DSW |
|---|---|
| デザイナー | チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames) |
| ブランド | ハーマンミラー(アメリカ)/ヴィトラ(ヨーロッパ・中東) |
| 発表年 | 1948年(原型)/1950年 製品化 |
| デザインの成立国 | アメリカ |
| 分類 | ダイニングチェア/サイドチェア |
| 名称の意味 | D=Dining height、S=Side chair、W=Wood base |
| 主要素材 | シェル:ポリプロピレン(2024年以降は再生プラスチック/初期はガラス繊維強化ポリエステル)/脚部:メープル材、スチール |
| 座面高 | 43cm(2015年以降) |
| 脚部の仕上げ | メープル(イエロイッシュ/ダーク/ブラックステイン) |
Reference
- Eames Plastic Side Chair RE DSW | Vitra
- https://www.vitra.com/en-un/product/details/eames-plastic-side-chair-re-dsw
- Side Chair (1950) | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/2105