概要
ドムスチェアは、イルマリ・タピオヴァーラが1946年に設計した椅子である。ヘルシンキの学生寮ドムス・アカデミカの内装のために、妻アンニッキとともに手がけた一連の家具のひとつで、読書にも食事にも会議にも使える多用途の椅子として計画された。短いアームレストと、三次元に曲げた成形合板の座を持つ。現在はアルテックが製造している。
特徴・コンセプト
短いアームレスト
アームレストは通常より短く、肘のあたる範囲だけを受ける。前方へ伸ばさないため、椅子をテーブルの下まで深く押し込める。学生の居室のように机と椅子の距離が取れない場所では、椅子が突き出したままにならないことが条件になる。肘を置く役目を残しながら、収まりの良さを両立させるための寸法である。
木だけでつくる
戦後まもないフィンランドでは、家具に使える材料が木材にほぼ限られていた。タピオヴァーラは、座と背を1枚の成形合板で三次元に曲げ、身体の曲面に沿わせている。金属のばねや詰め物を使わずに、板そのものの曲面で身体を受ける構成であり、材料の制約がそのまま形を決めている。フレームとアームレストには無垢材を用いる。
分解した状態で出荷する
ドムスチェアは、工場から部材の状態で出荷され、販売店または使用者が組み立てる方式をとっていた。輸送時の体積が小さくなるため、遠方へ送る費用を抑えられる。ビスの頭が見えたまま残されているのは、この組立方式から来た造形である。座を重ねられるノックダウン的な扱いに加え、完成後もスタッキングができる。
エピソード
1946年、タピオヴァーラ夫妻はドムス・アカデミカの内装の仕事を得た。求められたのは、居室でも食堂でも会議室でも使える椅子である。用途を絞らずに1種類で足りることが、限られた予算と材料のなかでの条件であった。
この椅子は、戦後フィンランドで最初に輸出で成功した家具となった。イギリスでは「Stax」、アメリカではノルの流通により「Finnchair」の名で販売され、以後タピオヴァーラの仕事が国外へ広がる契機になった。ドムスチェアを含むタピオヴァーラの家具がアルテックのコレクションに加わったのは2010年である。
評価と影響
1950年にシカゴのグッドデザイン賞、1951年のミラノ・トリエンナーレで金賞を受けている。用途を限定しない椅子を、限られた材料と輸送の条件のもとで成立させた例として参照されることが多い。現在はバーチ材とオーク材の仕様があり、張地を加えた仕様も用意される。製造はフィンランドで行われている。
イルマリ・タピオヴァーラの設計思想や経歴について詳しくはイルマリ・タピオヴァーラプロフィールページをご覧ください。
アルテックの歴史や他の製品について詳しくはアルテックブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | ドムスチェア / Domus Chair(別称 Finn Chair、Stax) |
|---|---|
| デザイナー | イルマリ・タピオヴァーラ(Ilmari Tapiovaara) |
| ブランド | アルテック(Artek/2010年〜) |
| 発表年 | 1946年 |
| デザインの成立国 | フィンランド |
| 分類 | ダイニングチェア/多用途チェア |
| 主要素材 | 座・背:成形合板(バーチまたはオークの突板)/フレーム・アームレスト:無垢材 |
| サイズ | 幅58cm × 奥行54cm × 高さ79cm、座面高44.5cm、アームレスト高66cm |
| スタッキング | 可 |
| 受賞 | 1950年 グッドデザイン賞(シカゴ)、1951年 ミラノ・トリエンナーレ金賞 |
Reference
- Domus Chair | Artek
- https://www.artek.fi/en/products/domus-chair
- Designing for the world | Artek
- https://www.artek.fi/en/stories/designing-for-the-world