概要
イルマリ・タピオヴァーラ(1914-1999)は、フィンランドの家具デザイナーである。1946年にヘルシンキ工科大学の学生寮のために設計したドムスチェアは、成形合板の座面と背を木の脚が支える椅子で、積み重ねができる。生涯に多数の椅子を設計し、国外への輸出も行った。
バイオグラフィー
1914年9月7日、フィンランドのヘルシンキに生まれた。中央工芸学校で家具の設計を学び、1937年に修了している。
1937年にロンドンでアルテックの店舗の設計に関わり、1938年からアスコの設計部門の責任者を務めた。1941年からはケラヴァの家具工場の責任者となっている。
1946年、ヘルシンキ工科大学の学生寮「ドムス・アカデミカ」の家具を設計した。ドムスチェアはこのときの椅子にあたる。
1951年に自身の事務所を開いた。1952年から1953年にかけて、ル・コルビュジエの事務所で短期間働いている。1999年に没した。
デザインの思想と方法
タピオヴァーラが設計したのは、学生寮や公共施設で多数使われる椅子である。この条件では、積み重ねられること、壊れにくいこと、安く作れることが要求される。装飾を加える余地はない。
積み重ねを構成の条件にする
ドムスチェアは、座面と背が成形合板で、脚は木の棒による。脚の角度と座面の形状が、積み重ねたときに互いが噛み合うよう決められている。保管の場所が限られる施設では、この条件が導入の可否を分ける。
接合部を減らす
部材が少なく接合が単純なほど、壊れる箇所も減る。多数の人が使う施設では、修理の手間が運営の費用に直結する。ドムスチェアの構成は、この観点から決まっている。
座面と背を一続きにする
成形合板は曲げられるため、座面から背へ連続する面を作れる。部材が減り、接合も少なくなる。曲率は合板の限界の内側に収める必要がある。
工場の責任者としての経験
1938年からアスコ、1941年からケラヴァの工場で設計部門の責任者を務めた。製造の条件を把握したうえで設計する立場にあり、この経験が構成の単純さを支えている。
アルテックの歴史や他の製品について詳しくはアルテック ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ドムスチェア(1946年)
ヘルシンキ工科大学の学生寮のために設計した椅子である。成形合板の座面と背を木の脚が支え、積み重ねができる。脚の角度と座面の形状が、積み重ねたときに噛み合うよう決められている。国外へも輸出され、アメリカでは「フィンチェア」の名で流通した。→ドムスチェア
ファネット チェア(1949年)
木の枠に籐の座面を張った椅子である。部材が細く、軽い。ドムスチェアより住宅向けの寸法をとる。→ファネットチェア
マドモアゼル ラウンジチェア(1956年)
木の枠に紐や布を張った安楽椅子である。詰め物を持たず、張り材のたわみで座り心地を得る。→マドモアゼル ラウンジチェア
ポラール(1964年)
V&Aが収蔵している椅子である(収蔵番号CIRC.12 to G-1968)。
公共施設のための家具
学生寮、図書館、事務所のための家具を多数設計した。いずれも多数を並べて使うことを前提とし、積み重ねと修理のしやすさが条件になる。
評価と影響
タピオヴァーラは一般に、20世紀フィンランドの家具設計を代表する人物の一人と評価されている。多数使われる椅子という条件から構成を決める進め方が特徴にあたる。
1938年からアスコとケラヴァの工場で設計部門の責任者を務めた経験が、製造の条件を前提とする設計につながっている。
ドムスチェアは国外へも輸出され、アメリカでは「フィンチェア」の名で流通した。現在はアルテックが生産している。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
- V&A ポラール(1964年) 収蔵番号 CIRC.12 to G-1968
MoMA、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。フィンランド国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1946年 | 椅子 | ドムスチェア | Artek |
| 1949年 | 椅子 | ファネットチェア | Artek |
| 1956年 | 椅子 | マドモアゼル ラウンジチェア | Artek |
| 1964年 | 椅子 | ポラール | Asko |
| 1940-90年代 | 家具 | 学生寮・図書館・事務所のための家具 | Asko ほか |
プロフィール
| 生没年 | 1914年9月7日〜1999年 |
|---|---|
| 出身地 | フィンランド・ヘルシンキ |
| 国籍 | フィンランド |
| 活動拠点 | ヘルシンキ |
| 分野 | 家具、インテリア |
| 主な協働ブランド | Artek、Asko |
Reference
- Ilmari Tapiovaara | Artek
- https://www.artek.fi/en/company/designers
- Designmuseo Helsinki
- https://www.designmuseum.fi/en/
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/