Chair_One - 幾何学的なフォルムを持つチェア
Chair_One(チェアワン)は、ドイツのプロダクトデザイナー、コンスタンティン・グルチッチが手がけ、イタリアの家具メーカーMagis(マジス)が2004年に発表したチェアである。複数の平面を角度をつけて組み合わせた立体的なフォルムを特徴とし、二次元の線描を立体化したような外観を持つ。グルチッチとMagisにとって最初の協働プロジェクトであり、名称の「One」もこれに由来する。
デザインの特徴
構造とフォルム
Chair_Oneの特徴は、サッカーボールのように複数の平面を角度をつけて組み合わせ、三次元の形態を構築した点にある。座面と背もたれはダイキャストアルミニウムの一体成形で、強度が必要な箇所は密な格子状に、そうでない部分は開放的な構造とすることで、必要最小限の材料で強度を確保している。
グルチッチはダイキャスト技術を用いる機会を得て、その可能性を突き詰める方向で設計を進めた。カードボードモデルからプロトタイプへと進める過程で構造の論理を確かめながら、最終的な形へとまとめている。
4年にわたる開発
Chair_Oneの実現には4年におよぶ開発期間を要した。ダイキャストアルミニウムによる一体成形のシート製造には、大規模で技術的に複雑な金型が必要であった。家具製造においてダイキャスト自体は新しい技術ではなかったが、この規模と構造的な意図をもって用いられた例は多くなかった。開発では手作業による物理モデル、デジタルレンダリング、コンピューターシミュレーションを併用し、格子状の構造が必要な強度と快適性をもたらすことを確かめながら調整が重ねられた。
デザイン史における位置づけ
Chair_Oneは、2000年代初頭に角張ったグラフィカルな造形を家具にもたらした。ワイヤーフレームのような線的な形態は、コンピューター支援設計(CAD)の使用にも一部起因している。ヴィクトリア&アルバート博物館は、グルチッチがこの椅子でクリスタルやフラクタルに通じる新しい造形の語彙を現代家具に持ち込み、多くのデザイナーに影響を与えたと評している。1950年代から1960年代にハリー・ベルトイアやチャールズ&レイ・イームズが手がけたワイヤーロッドチェアを想起させながら、ワイヤーではなくアルミダイキャストの原理を用いることで独自の性格を備えている。
実用性と機能
素材と耐久性
Chair_Oneのシートはダイキャストアルミニウムにフッ化チタン処理を施し、ポリエステルパウダー塗装で仕上げられている。脚部はアルミニウム押出材で、アルマイト仕上げまたはポリエステルパウダー塗装が選べる。これらの素材により屋外使用にも対応する耐久性を備え、金属素材ながら約4.3kgと比較的軽量で、移動や配置換えもしやすい。
座り心地
幾何学的な外観だが、Chair_Oneは座り心地の面でも評価されている。格子状の構造は、背もたれ部分では身体を支えるために立ち上がり、座面の短辺では側面を支えるために折り上げられ、身体を受け止める形状をつくり出している。屋内用には布製または革製のクッション、屋外用にはポリウレタン製クッションがオプションで用意されている。
スタッキングと用途
Chair_Oneは8脚までスタッキングでき、商業空間や公共施設での使用に適している。当初は主に屋外の公共座席として構想されたことを反映し、レストラン、カフェ、オフィス、公共施設など幅広い環境で採用されている。個人邸宅では、その造形的な存在感から空間のアクセントとしても用いられる。
ファミリーの展開と20周年
Chair_Oneの明快なシルエットは展開しやすく、発表後すぐに多様なバリエーションが生まれた。屋外向けの円錐形コンクリートベース版は容易に動かせないよう設計され、公共空間での使用に向く。3脚を中央のクロスバーで連結したベンチ、同じ幾何学を用いた3本脚のスツール、ダイニングテーブルやビストロテーブルなど、ひとつのデザインから派生したファミリーが展開されている。
2024年から2025年にかけては発売20周年を迎え、ヴェネツィアのジャルディーニ・レアーリ(王立庭園)で特別展示が開催された。この展示にあわせ、オリジナルのダイキャストシェルにゴールド塗装を施し、シチリア島エトナ火山の麓で採取した溶岩石をベースに用いた16脚の限定エディションが制作された。
基本情報
| デザイナー | コンスタンティン・グルチッチ(Konstantin Grcic) |
|---|---|
| ブランド | Magis(マジス) |
| 製造国 | イタリア |
| 発表年 | 2004年 |
| サイズ | 幅55cm × 奥行59cm × 高さ82cm(座面高45cm) |
| 重量 | 約4.3kg |
| 素材 | シート:ダイキャストアルミニウム(フッ化チタン処理、ポリエステルパウダー塗装) 脚部:アルミニウム押出材(アルマイト仕上げまたはポリエステルパウダー塗装) |
| 機能 | スタッキング可能(8脚まで)、屋外使用可能 |
| 主な受賞歴 | Compasso d'Oro セレクション(2004) Good Design Award(2004) German Design Award(Designpreis Deutschland、2006) |
| 主な収蔵先 | ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン) シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago) インディアナポリス美術館 |