概要

ボールチェアは、エーロ・アールニオが1963年に設計したラウンジチェアである。球体の一部を切り取ったファイバーグラスシェルに座面と背もたれを収め、一本の脚で支える。1966年のケルン国際家具見本市で公開され、アスコが製造した。現在はエーロ・アールニオ・オリジナルズが生産している。グローブチェアとも呼ばれる。

特徴・コンセプト

球という形の必然

アールニオはファイバーグラスを家具に使う方法を探しており、閉じた球であればほとんどの力に耐えられるという判断から、この形にたどり着いた。曲率が一定の球面は、どの方向から荷重がかかっても面全体で受け止める。強度を得るために骨組みを足す必要がなく、素材の性質がそのまま形の理由になっている。

一家4人が一緒に座れる大きさの椅子が自宅に必要だった、という事情も出発点にある。実際に完成したシェルは、内側に人が入り込める寸法を持つ。

部屋の中の部屋

球の一部を切り欠いた開口は、正面の一方向だけに開いている。座ると視界は開口部の範囲に限られ、左右と背後、頭上はシェルに囲まれる。外の音もシェルに遮られて弱まる。発表当時の報道でも、座った人がほとんど見えなくなり音も遮られる点が取り上げられた。空間の中にもう一つの区切りをつくるという性格は、公共の場や広い部屋で特に働く。

初期には内部に電話機を組み込んだ仕様もつくられた。囲われた場所で会話ができるという使い方が、発表当初から想定されていた。

構造と寸法

シェルはファイバーグラスで成形し、内側に詰め物を入れてファブリックまたはレザーを張る。台座はアルミニウムで、シェルは軸まわりに回転する。開口の向きを変えられるため、同じ位置に置いたまま視線の抜ける方向を選べる。直径は約110cmあり、搬入には79cm以上の開口幅が必要になる。

エピソード

最初のスケッチには1963年1月11日の日付がある。当初アールニオは、家具メーカーがこの形を理解しないだろうと考え、複数の会社に持ち込んでも関心を得られなかった。そこで自分で試作することにし、義兄が勤めていたサロの学校の工作室を週末ごとに借りて、シェルを成形した。

1965年の秋、かつて勤めたアスコの担当者と、新任のマーケティング責任者タパニ・リエッキネンに設計を持ち込んだ。二人はすぐに関心を示し、翌年のケルン国際家具見本市への出展を決める。社内には懐疑的な意見もあったが、見本市用に6脚が製作された。ブースには「アスコから偉大なものが生まれる」と大書した幕が掲げられ、最初に訪れた2人のイタリア人がその場で6脚を注文した。1週間のうちに30か国から注文が入り、フィンランドや米国の新聞がこの椅子を取り上げた。

2016年、エーロ・アールニオ・オリジナルズが設立され、アールニオの作品の製造がフィンランドに戻された。

評価と影響

1960年代のプラスチック家具を代表する一脚として知られている。アールニオ自身は未来的な見た目を狙ったわけではなく、外界から離れて過ごせる繭のような場所をつくることを意図していた。椅子が座具であると同時に空間を区切る装置になりうることを示した例として、後続の設計にも参照されている。

美術館コレクション

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、1963年の設計によるボールチェアを収蔵番号CIRC.12:1 to 3-1969で登録している。

基本情報

名称 ボールチェア / Ball Chair(別名 Globe Chair)
デザイナー エーロ・アールニオ(Eero Aarnio)
ブランド エーロ・アールニオ・オリジナルズ(2016年〜)/アスコ、アデルタ(歴代)
発表年 1963年設計/1966年 ケルン国際家具見本市で公開
デザインの成立国 フィンランド
分類 ラウンジチェア
主要素材 シェル:ファイバーグラス/張地:ファブリックまたはレザー/台座:アルミニウム
サイズ 幅110cm × 奥行97cm × 高さ120cm
搬入条件 79cm以上の開口幅が必要
機構 回転
収蔵 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(CIRC.12:1 to 3-1969)

Reference

The Story of the Ball Chair | Eero Aarnio Originals
https://www.aarniooriginals.com/pages/ball-chair
The Ball Chair | Eero Aarnio Originals
https://www.aarniooriginals.com/products/ball-chair
'Ball' chair | Victoria and Albert Museum
https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=CIRC.12-1969