概要
エーロ・アールニオ(1932年生まれ)は、フィンランドのデザイナーである。1960年代にファイバーグラスの成形で椅子をつくり、脚を持たない構成を試みた。1963年のボールチェアは球体を切り取った殻を台座に載せたもので、1968年のバブルチェアは同じ形を透明のアクリルで作り天井から吊る。木を主とする当時の北欧の家具とは異なる方向をとった。
バイオグラフィー
1932年7月21日、ヘルシンキに生まれた。ヘルシンキの中央工芸学校で学び、1957年に修了している。
1962年、ヘルシンキに自身の事務所を開いた。当初は籐を用いた家具も手がけている。
1963年にボールチェアを設計し、1966年のケルン国際家具見本市で発表した。これが国外で知られる契機となっている。
1968年のバブルチェア、1967年のパスティッリ、1968年のピンポン、2005年のパピーなど、以後も樹脂による製品を発表し続けている。
デザインの思想と方法
1960年代前半の北欧の家具は、木の骨組みに座面を張る構成が主流だった。アールニオが用いたファイバーグラスは、型さえあれば継ぎ目のない立体を作れる。この性質を使えば、部材の区別のない椅子が成立する。
継ぎ目のない殻をつくる
ボールチェアは、球体の一部を切り取った形の殻を、金属の台座に載せる。座面、背もたれ、肘掛けの区別がなく、内側の面がすべてを担う。木や金属では部材を接合する必要があるが、樹脂の成形では一体で作れる。
囲うことで領域をつくる
殻が身体を左右と背後から囲むため、内側に入ると外部の音と視線が遮られる。椅子でありながら小さな部屋のように働く。開口の向きを変えることで、どこを向くかも決められる。
透明にして脚を消す
バブルチェアは同じ形を透明のアクリルで作り、天井から吊る。床に接する部分がないため、下の空間が空く。透明であることと吊ることで、椅子が占める体積の印象が大きく減る。
色を材料の側で持つ
成形樹脂は、材料そのものに色を混ぜられる。塗装ではないため、傷がついても下地が出ない。同じ型から多数の色を作れる。
代表作にみる方法
ボールチェア(1963年)
球体の一部を切り取ったファイバーグラスの殻を、金属の台座に載せた椅子である。座面、背もたれ、肘掛けの区別がなく、内側の面がすべてを担う。殻が身体を囲むため、内側では外部の音と視線が遮られる。1966年のケルン国際家具見本市で発表された。V&Aが収蔵している(収蔵番号CIRC.12:1 to 3-1969)。→ボールチェア
パスティッリ(1967年)
丸みを帯びた樹脂の塊による椅子である。脚を持たず、床に直接置く。屋外でも使え、水に浮く。V&Aが収蔵している(収蔵番号CIRC.13-1969)。
ジャイロチェア(1968年)
パスティッリと同じ系統の椅子である。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号196.1987)。
バブルチェア(1968年)
ボールチェアと同じ形を透明のアクリルで作り、天井から吊った椅子である。床に接する部分がないため下の空間が空く。透明であることと吊ることで、占有する体積の印象が大きく減る。→バブルチェア
パピー(2005年)
犬の形を単純な立体の組み合わせで表した子供用の腰掛けである。回転成形の樹脂で作られ、屋内外で使える。ニューヨーク近代美術館とV&Aが収蔵している。→パピー
評価と影響
アールニオは一般に、1960年代のフィンランドで樹脂による家具を確立した設計者と評価されている。木を主とする当時の北欧の家具とは異なる方向をとった点が挙げられる。
ボールチェアとバブルチェアは、椅子が囲いとして働くという構成で知られる。座具でありながら小さな領域をつくるという設定にあたる。
1963年の設計から60年以上を経て、現在も生産が続いている。近年も樹脂による製品を発表し続けている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
- V&A ボールチェア 08702(1963年) 収蔵番号 CIRC.12:1 to 3-1969
- V&A パスティッリ チェア(1967年) 収蔵番号 CIRC.13-1969
- MoMA ジャイロチェア(1968年) 収蔵番号 196.1987
- MoMA パピー(2005年) 収蔵番号 131.2013.1-2
- V&A パピー(2005年) 収蔵番号 B.6-2023
- V&A フライング・カーペット(2006年) 収蔵番号 B.14-2023
Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。フィンランド国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1963年 | 椅子 | ボールチェア | Eero Aarnio Originals |
| 1967年 | 椅子 | パスティッリ | Eero Aarnio Originals |
| 1968年 | 椅子 | ジャイロチェア | Eero Aarnio Originals |
| 1968年 | 椅子 | バブルチェア | Eero Aarnio Originals |
| 1968年 | 椅子 | ピンポン | Eero Aarnio Originals |
| 2005年 | 腰掛け | パピー | Magis |
| 2006年 | 玩具 | フライング・カーペット | Eero Aarnio Originals |
プロフィール
| 生年 | 1932年7月21日 |
|---|---|
| 出身地 | フィンランド・ヘルシンキ |
| 国籍 | フィンランド |
| 活動拠点 | ヘルシンキ |
| 分野 | 家具 |
| 主な協働ブランド | Eero Aarnio Originals、Magis |
Reference
- Eero Aarnio Originals(公式)
- https://www.eeroaarnio.com/
- Designmuseo Helsinki
- https://www.designmuseum.fi/en/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/