インフィニートは、イタリアを代表する建築家でありデザイナーのフランコ・アルビーニが、パートナーのフランカ・ヘルグとともに1956年から1957年にかけてデザインしたモジュラー式シェルフシステムである。その名が示す通り「無限」の組み合わせを想定したこの作品は、空間に浮遊するような軽やかさと構造美を兼ね備えている。
当初はイタリアのポッジ社から製造され、2008年にカッシーナが「イ・マエストリ」コレクションの一つとして復刻した。天井と床の間に圧力で固定される構造により、壁面への固定を必要とせず、空間の中央に配置して両面から使用できる自立式の家具として、建築的なスケールと家具としての機能性を両立させている。
特徴とコンセプト
構造の特徴
インフィニートの最も顕著な特徴は、軽やかな佇まいとそれを支える構造システムにある。垂直支柱は天井と床の間に圧力を加えることで固定され、高さは268センチメートルから290センチメートルまで調整できる。支柱には一定間隔で孔が穿たれており、棚板や収納キャビネットを任意の高さに配置できる。
支柱は無垢材を組み合わせた構成で、複数の細い角材を真鍮のネジで接合してつくられている。この構成が視覚的な軽さを生み、家具が空間を遮断するのではなく、空間と一体化することを意図したアルビーニの設計思想を反映している。
モジュラーシステム
インフィニートは、支柱・棚板・収納キャビネットという少数の構成要素から成り立つ。棚板は奥行きを変えて配置でき、収納キャビネットには開き扉とフラップ式の扉が用意され、収納物や用途に応じて選択できる。この限られた要素の組み合わせによって、多様なレイアウトを構成できる点がこのシステムの特徴である。
棚板には浅い周縁が設けられ、その側面は前面に向かって面取りされている。こうした細部の処理に、機能性と仕上げへの配慮がうかがえる。
空間との関係性
インフィニートは壁面に固定する必要がないため、空間の中央に配置して間仕切りとして機能させることができる。両面から使用できるため、書棚としてだけでなく、オブジェを展示するディスプレイとしても活用できる。アルビーニが追求した「軽さ」は、物理的な軽量化だけでなく、空間における視覚的な開放性をも意味している。
このシェルフシステムは収納家具にとどまらず、空間を分節する要素としても機能する。リビングルーム、書斎、オフィスなど、設置する場所に応じた表情を生み出す。
デザインの背景
インフィニートは、カーサ・フェッラリオという個人邸宅の内装プロジェクト(1956年)のために構想された。アルビーニとヘルグは、すでに各所で試みていた「軽量化された垂直支柱」の手法を用い、天井から床へと立ち上がる構造として、両面から使える間仕切りにもなる書棚を考案した。その後1958年には、天井との連結を必要としない自立式のLB10へと展開している。
1950年代のイタリアでは、伝統と新しい技術の間で家具デザインの方向性が模索されていた。インフィニートは、過去の様式を尊重しながら現代の技術と材料を用いるという、この時代の姿勢を示す作品として位置づけられている。
評価と影響
インフィニートは、発表当時から建築・デザインの分野で高く評価されてきた。重力に逆らうような軽い構造、伝統的な家具の枠組みからの解放、工業生産と造形性の統合がその理由である。カッシーナによる2008年の復刻は、この作品が半世紀以上を経てなお現代の空間で機能し得ることを示している。
トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム(ミラノ)は、インフィニートを永久コレクションに収蔵している。この作品は家具における構造的な実験の幅を広げ、後続の世代のデザイナーにも影響を与えてきた。
基本情報
| デザイナー | フランコ・アルビーニ、フランカ・ヘルグ |
|---|---|
| デザイン年 | 1956-1957年 |
| ブランド | カッシーナ(Cassina) |
| 製品番号 | 835 Infinito |
| 分類 | モジュラーシェルフシステム |
| 素材 | 無垢材(アッシュ材またはアメリカンウォルナット)、スチール |
| 仕上げ | ナチュラルアッシュ、ブラックステインアッシュ、アメリカンウォルナット |
| 高さ調節範囲 | 268-290cm |
| 所蔵 | トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム(ミラノ) |