LC3 グランコンフォール ─ 建築的思考から生まれたソファ

LC3 グランコンフォール(Fauteuil Grand Confort, grand modèle)は、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの協働によって1928年にデザインされたソファである。構造体としてのスチールパイプフレームと、そこに収まるクッションとを明確に分ける設計は、建築における躯体と壁の関係を家具のスケールに置き換えたものであり、モダニズムデザインを代表する作品のひとつとして知られている。

イタリアの家具メーカー、カッシーナ(Cassina)が1965年よりル・コルビュジエ財団の公式ライセンスのもとで製造を続けており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションにも収蔵されている。

デザインの特徴とコンセプト

構造とクッションの分離

LC3の特徴は、支持構造であるスチールパイプのフレームと、座面・背もたれ・アームレストを構成する四つの独立したクッションとが分離している点にある。ル・コルビュジエはこの構造を「クッションの籠(cushion basket)」と呼んだ。鉄骨や鉄筋コンクリートの骨組みが荷重を担い、壁は仕切りとして自由に配されるという近代建築の考え方を、家具という小さなスケールに置き換えた設計である。

クロームメッキまたはエナメル塗装が施されたスチールパイプのフレームは外骨格のように露出し、内部のクッションの豊かなボリュームとの間に視覚的な対比を生む。装飾を排したピュリスムの美学に基づきながらも、身体を預けたときの深い安楽は、「グランコンフォール(大いなる快適)」の名の通りである。

LC2との関係 ─ プティモデルとグランモデル

グランコンフォールには、プティモデル(LC2)とグランモデル(LC3)の二種がある。LC3はLC2に比べて座面の幅と奥行きが約20cm大きく、全高と座面高はやや低く抑えられている。この違いにより、LC2が端正な姿勢での着座を想定しているのに対し、LC3は脚を組んだり斜めに腰掛けたりといった、よりくつろいだ姿勢を許容する。両者は同じ考え方を共有しながら、座り心地と存在感において異なる個性を持つ。

素材と仕上げ

カッシーナが製造する現行モデルは、フレームにクロームメッキ仕上げ、またはエナメル塗装仕上げ(複数色)を選択できる。クッションの中材には密度の異なるポリウレタンフォームとポリエステルパッディング、あるいはフェザーパッディングが用意され、張地はレザーまたはファブリックから選ぶことができる。

誕生の背景とエピソード

三者の協働から生まれた家具

LC3を含むLCコレクションは、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの協働によって生み出された。三者は家具を建築空間の延長として設計するという方針のもと、家具の制作に取り組んだ。当時新しい素材であったスチールパイプの軽量性と柔軟性を活かし、フレームとクッションを分離する構成がまとめられていった。グランコンフォールは、19世紀の英国クラブチェアをモダニズムの視点から再解釈したものと位置づけられている。

サロン・ドートンヌでの発表

LC3は1928年にデザインされ、翌1929年のパリ・サロン・ドートンヌにおいて、LC1、LC2、LC4とともに「住居の設備(Équipement intérieur d'une habitation)」と題された展示の一部として公開された。装飾的な家具とは一線を画す造形は当時の批評家の間で賛否を呼んだが、やがてモダニズム家具の代表作として広く認知されるようになった。

カッシーナによる製造と名称の変更

1965年、カッシーナがル・コルビュジエ財団の公式ライセンスを取得し、LC3の製造を開始した。以来、カッシーナはシャルロット・ペリアンやその娘ペルネット、ル・コルビュジエ財団と連携しながら、原設計に忠実な製造を続けている。2022年に製品名が「Fauteuil Grand Confort, grand modèle」へと改められ、2023年のカッシーナ iMaestri コレクション50周年を機に、遺族および各財団との合意のもと「LC」の接頭辞を外したフランス語の原名称へと正式に回帰した。カッシーナ製の正規品には、デザイナーの署名の刻印とシリアルナンバーが付されており、これが真正品の証明となっている。

評価と文化的影響

LC3 グランコンフォールは、20世紀デザイン史における重要な家具作品のひとつとして国際的に評価されている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに収蔵されているほか、各地のデザインミュージアムでモダニズム家具の代表作として紹介されている。

その幾何学的なフォルムは、英国クラブチェアをモダニズムの視点から再解釈したものと位置づけられ、装飾を排した構造の美しさと快適性を両立させた点が、後の家具デザインに影響を与えた。発表から約一世紀を経た現在も、住宅、オフィス、ホテルなど多様な空間で用いられている。

バリエーション

LC3 グランコンフォールには、以下のバリエーションが用意されている。

  • 1人掛けアームチェア(Fauteuil Grand Confort, grand modèle)
  • アームレスト片側仕様のアームチェア
  • 2人掛けソファ(deux places)
  • 3人掛けソファ(trois places)
  • アウトドア仕様(ステンレススチールフレーム、耐候性ファブリック)

基本情報

作品名(日本語) LC3 グランコンフォール
作品名(英語) LC3 Grand Confort(3 Fauteuil Grand Confort, grand modèle)
デザイナー ル・コルビュジエ(Le Corbusier, 1887–1965)、ピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret, 1896–1967)、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand, 1903–1999)
デザイン年 1928年
発表 1929年 パリ・サロン・ドートンヌ
ブランド Cassina(カッシーナ)/イタリア
製造開始 1965年(カッシーナによる製造)
分類 ソファ/アームチェア
素材 フレーム:スチールパイプ(クロームメッキまたはエナメル塗装)、クッション:ポリウレタンフォーム+ポリエステルパッディング(またはフェザー)、張地:レザーまたはファブリック
サイズ(1人掛け) W990 × D730 × H620 mm(座面高 約400mm)
サイズ(2人掛け) W1680 × D730 × H620 mm(座面高 約400mm)
サイズ(3人掛け) W2370 × D730 × H620 mm(座面高 約400mm)
所蔵 ニューヨーク近代美術館(MoMA)コレクション