コロナード / Coronado

コロナードは、アフラ&トビア・スカルパが設計し、当時のC&B Italia(現B&B Italia)が1966年に発表したソファである。鉄骨フレームと低温発泡成型ポリウレタンフォームという、当時の家具産業にとって新しい素材の組み合わせによって誕生した。伝統的な木枠構造が主流であった時代に、工業生産の合理性と造形の美意識を結びつけたこの作品は、B&B Italiaの産業文化を代表する存在として、半世紀以上にわたり生産が続けられている。

概要

コロナードは、アフラ・スカルパ(1937–2011)とトビア・スカルパ(1935–)によって設計された、B&B Italiaの創成期を代表するソファコレクションである。鉄製フレームに低温発泡成型ポリウレタンフォームを組み合わせる製造技術を導入し、家具における素材と工法の可能性を広げた。コレクションはソファに加えてアームチェア、ハイバックアームチェア、オットマンで構成され、いずれも現在まで継続的に生産されている。

特徴・コンセプト

コロナードの設計思想は「オールインクルーシブ・デザイン」という概念に集約される。デザイン、素材、製造技術、そして生産効率と国際的な流通までを一つのプロジェクトとして統合的に設計するという、当時としては先駆的なアプローチが採られた。

構造の特徴

本体は4つの独立した構造パーツで構成され、わずか2本のネジで組み立てることができる。この設計により、各パーツの個別製造が可能となり、分解した状態での保管・輸送が容易になった。B&B Italiaが国際市場へ展開するうえで、この合理的な構造は重要な役割を果たした。

快適性を支えるサスペンション

背もたれの内部には、ハーモニック・スチール・バンド(鋼製音楽線)によるサスペンションシステムが組み込まれている。この機構が背中全体を柔軟に支え、長時間の着座でも快適性を保つ。座面と肘掛けのクッションには密度の異なるポリウレタンフォームが用いられ、身体の各部位に応じたサポートを実現している。

伝統と近代の架橋

コロナードの意匠は、当時好まれていた重厚な造形から意識的に離れ、均整のとれたプロポーションと反伝統的なイメージを打ち出した。伝統的な家具様式と、高まりつつあったモダニズムへの志向とを結ぶ「トレ・デュニオン(結合点)」として構想され、当時の上流中産階級の期待に応える製品として受け入れられた。

エピソード

コロナードは、B&B Italiaの前身であるC&B Italiaにとって、創業初期の基幹プロジェクトの一つであった。1966年、ピエロ・アンブロージオ・ブスネリとチェザーレ・カッシーナがミラノ北部に設立したC&B Italiaは、イタリアのモダニストを招き、先進的な製造方法による家具の開発を目指していた。コロナードはその理念にもとづく最初期の成果であり、低温発泡成型ポリウレタンという新素材を家具分野へ本格的に導入する契機となった。

評価

コロナードは、イタリアンデザインの産業史において重要な位置を占める作品として評価されている。デザイン、素材、製造技術の革新性を一つの製品に統合したアプローチは、B&B Italiaの公式資料において「オールインクルーシブ・デザインの代表的な事例の一つ」と位置づけられている。半世紀以上にわたり基本設計を変えることなく生産が続けられていることは、このソファの完成度を示している。

ヴィンテージ市場においてもコロナードへの関心は高く、1960年代から1970年代に製造されたオリジナルの革張りモデルは、コレクターや愛好家の間で取引されている。国際的なデザイン・オークションでは、状態やサイズに応じて幅広い価格帯で流通している。

基本情報

作品名 コロナード / Coronado
デザイナー アフラ&トビア・スカルパ / Afra & Tobia Scarpa
デザイナー国籍 イタリア
デザイン年 1966年
ブランド B&B Italia(旧 C&B Italia)
製造国 イタリア
分類 ソファ
内部フレーム スチールチューブおよびスチールプロファイル
クッション素材 低温発泡成型ポリウレタンフォーム、ポリエステルファイバー(座面・肘掛けは密度の異なる成型ポリウレタン)
サスペンション ハーモニック・スチール・バンド(背もたれ内部)
脚部 熱可塑性素材(地上高約3cm)
張地 ファブリックまたはレザー(多数のオプションから選択可能)
サイズ(3人掛けソファ参考値) 約 W220 × D98 × H77 cm / 座面高 約45cm
コレクション構成 ソファ(2人掛け・3人掛け)、アームチェア、ハイバックアームチェア、オットマン