概要

トビア・スカルパ(1935年生まれ)は、イタリアの建築家・デザイナーである。父は建築家カルロ・スカルパ。1960年から2011年まで妻のアフラ・スカルパと共同で設計を行い、作品はすべて連名で発表された。ヴェネツィアのガラス工房での実務を経ており、材料の加工から形を決める進め方をとる。カッシーナ、B&Bイタリア、フロスなどと協働した。

バイオグラフィー

1935年、イタリアのヴェネツィアに生まれた。父は建築家カルロ・スカルパである。ヴェネツィア建築大学で学んでいる。

1957年から1961年まで、ムラーノ島のヴェニーニでガラスの設計に携わった。吹きガラスの工程を実務で学んでいる。

1960年、アフラ・ビアンキンと結婚し、以後は共同で設計を行った。作品はすべて連名で発表されている。

1960年代からカッシーナ、B&Bイタリア、フロス、モルテーニなどのために家具と照明を設計した。建築の設計も並行して行っている。2011年にアフラが没した後も設計を続けている。

デザインの思想と方法

スカルパの進め方は、材料をどう加工できるかから始まる。ヴェニーニでの4年間で、吹きガラスの工程には作れる形の範囲があることを実務で把握した。この経験が、家具でも同じ順序をとる根拠になっている。

加工の範囲から形を決める

ガラスは吹く、型に入れる、削るという工程ごとに作れる形が違う。家具でも同じで、成形合板の曲率、革の張り込みの限界、金属の曲げの範囲がそれぞれ形を規定する。工程を知らずに図面を引くと、作れない形になる。

詰め物を布で包む

ソリアナは、詰め物を布で包み、金属の帯で外側から留める構成をとる。骨組みを持たず、留め具の位置で輪郭が決まる。詰め物の量と留める位置だけが設計の対象になる。

接合部を意匠として扱う

925チェアなど木の家具では、部材の接合部を隠さない。仕口の形がそのまま外観に現れる。木工の技術を前提とした構成にあたる。

連名で発表する

1960年から2011年までの作品はすべてアフラとの連名で発表され、個々の担当は公表されていない。2011年にアフラが没した後は単独名義となる。

代表作にみる方法

オッキ(1959年頃、ヴェニーニ)

色ガラスを格子状に組んで吹いたガラス器である。ヴェニーニ在籍時の設計にあたり、吹きガラスの工程を前提とする。V&Aが収蔵している(収蔵番号C.192-1991)。→オッキ

925 チェア(1966年、カッシーナ)

直線で組んだ木の枠に、曲げた成形合板の座面と背もたれを組む椅子である。部材の接合部を隠さず、仕口の形がそのまま外観に現れる。ニューヨーク近代美術館とメトロポリタン美術館が収蔵している。→925 チェア

チプレア(1967年、カッシーナ)

成形したポリウレタンによる肘掛け椅子である。骨組みを持たず、詰め物そのものが形を担う。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号476.1970)。→チプレア

ソリアナ(1970年、カッシーナ)

詰め物を布で包み、金属の帯で外側から留めた椅子である。骨組みを持たず、留め具の位置で輪郭が決まる。1970年にコンパッソ・ドーロ賞を受けた。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号476.1972)。→ソリアナ

コロナード(1966年、B&Bイタリア)

成形した詰め物と布による長椅子である。同社が樹脂の成形を家具に用い始めた時期の製品にあたる。→コロナード

評価と影響

スカルパは一般に、材料の加工の範囲から形を決める進め方をとる設計者と評価されている。ヴェニーニでの4年間の実務が、その前提にある。

1960年から2011年までのアフラとの共同設計は51年に及んだ。作品はすべて連名で発表され、個々の担当は公表されていない。

カッシーナ、B&Bイタリア、フロスなど複数のメーカーと長期の関係を持つ。ソリアナと925チェアは現在も生産が続いている。

受賞・収蔵

受賞

  • 1970年 コンパッソ・ドーロ賞(ソリアナ、アフラ・スカルパと共同)

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。アフラ・スカルパとの共同名義で登録されているものを含む。

  • V&A オッキ(1959年頃) 収蔵番号 C.192-1991
  • MoMA ボウル(1960年頃) 収蔵番号 244.1965
  • V&A ガラス器(1965年) 収蔵番号 CIRC.332-1970
  • MoMA チェア モデル925(1966年) 収蔵番号 2243.1967
  • Met 925 サイドチェア(1966年) 収蔵番号 1987.370.3
  • MoMA チプレア アームチェア(1967年) 収蔵番号 476.1970
  • V&A ガラス器(1967年) 収蔵番号 CIRC.331-1970
  • MoMA ソリアナ ラウンジチェア(1970年) 収蔵番号 476.1972
  • MoMA アリエッテ 壁・天井照明(1973年) 収蔵番号 117.1976
  • V&A ラウリアーナ(1977年) 収蔵番号 W.27:1-1978
  • MoMA プレート(1991年) 収蔵番号 31.1997.1-15

AIC では該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

1960年から2011年までの作品はアフラ・スカルパとの共同設計による。

発表年 区分 作品名 ブランド
1959年頃 ガラス器 オッキ Venini
1966年 椅子 925 チェア Cassina
1966年 ソファ コロナード B&B Italia
1967年 椅子 チプレア Cassina
1970年 椅子 ソリアナ Cassina
1973年 照明 アリエッテ Flos
1977年 ソファ ラウリアーナ B&B Italia
1960-2010年代 照明 フロスのための照明 Flos
1960-2010年代 建築 住宅・工場・美術館の設計 イタリア各地

プロフィール

生年 1935年
出身地 イタリア・ヴェネツィア
国籍 イタリア
活動拠点 トレヴィーゾ
分野 家具、照明、ガラス、建築
主な協働ブランド Cassina、B&B Italia、Flos、Molteni&C、Venini

Reference

Afra e Tobia Scarpa | Cassina
https://www.cassina.com/ww/en/designers.html
B&B Italia
https://www.bebitalia.com/en/designers
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/