トイオ ― 自動車のヘッドライトから生まれたフロアランプ

1962年、イタリアのデザイナー、アキッレ・カスティリオーニとピエル・ジャコモ・カスティリオーニ兄弟は、自動車のヘッドライトという既製品に着目し、それを一本のフロアランプに仕立てた。トイオ(Toio)と名付けられたこの照明は、英語の「toy(おもちゃ)」に由来する名称が示すとおり、遊び心と機能性を併せ持つ作品である。照明ブランドFlos(フロス)の創業年と同じ1962年に発表されて以来、60年以上にわたり生産が続いており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品にも数えられている。

デザインの背景と特徴

レディメイドの発想

カスティリオーニ兄弟のデザインには、日常の既製品(レディメイド)を異なる文脈に置き換えることで新たな用途を見いだすという発想がある。トイオはその代表的な実践であり、アメリカから取り寄せた300ワットの自動車用ヘッドライト(PAR電球)を光源に採用した。工業部品を照明器具の構成要素として使うこの手法は、マルセル・デュシャンの「レディメイド」の概念にも通じるものである。

構造と素材

ベース部分はエナメル塗装を施したアングル鉄と成形スチールで構成され、内部にはトランスフォーマーが収められている。このトランスフォーマーはカウンターウェイトを兼ね、ランプ全体の安定性を確保する。六角断面のニッケルメッキ真鍮製ステムはテレスコピック機構を備え、高さを約158cmから195cmまで調整できる。

とりわけ特徴的なのが、電気コードの処理方法である。ステムに沿って取り付けられた釣り竿用のガイドリングがコードを電球からトランスフォーマーまで導き、ベースに設けられた船舶用クリートで余ったコードを巻き取る。これらはいずれも他分野の工業パーツの転用であり、機能から形を導くという兄弟のデザインの考え方がそのまま形に表れている。

光の特性

トイオは間接照明として設計されており、上方へ拡散する光が天井や壁面に反射し、空間に穏やかな明るさをもたらす。現行のLEDモデルでは20W(Gx16d口金、PAR56型)のLED電球を採用し、色温度2500Kの温かみのある光を放つ。ケーブルに組み込まれた電子式ディマーで光量を調整できる。かつてのハロゲン300W仕様に比べて消費電力を大きく抑えつつ、約1,500ルーメンの明るさを確保している。

エピソード

カスティリオーニ兄弟がトイオの着想を得たきっかけは、自動車用ヘッドライトの力強い光にあったとされる。当時のイタリアでは入手しにくかったアメリカ製の300ワットPAR電球をわざわざ取り寄せ、照明器具の光源として使うという発想は、既成概念にとらわれないものであった。釣り竿のガイドリングや船舶用クリートといった異分野の工業部品を組み合わせる手法は、日常のあらゆるものにデザインの可能性を見いだす兄弟の観察眼から生まれている。

「トイオ」という名称は、英語の「toy(おもちゃ)」をイタリア語風に綴ったもので、この照明が持つ遊び心とユーモアを端的に表している。

評価と影響

トイオは、発表以来イタリアンデザインを代表する照明の一つとして評価されてきた。ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品となっており(1970年収蔵)、既製品を転用したレディメイドの手法を照明という形で示した作品として、デザイン史のなかで独自の位置を占めている。

トイオはカスティリオーニ兄弟とFlosの協働から生まれた照明の一つであり、アルコなどと並ぶ両者の代表作として広く知られている。現行モデルはLED光源に置き換えられ、オリジナルの構成を保ちながら現代の暮らしで使われている。

基本情報

商品名 トイオ / Toio
デザイナー Achille Castiglioni(アキッレ・カスティリオーニ、1918–2002)& Pier Giacomo Castiglioni(ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ、1913–1968)
国籍 イタリア
デザイン年 1962年
ブランド Flos(フロス / イタリア)
製造国 イタリア
分類 フロアランプ(間接照明)
サイズ ベース幅 約210mm × 全高 1,580〜1,950mm(高さ調整可能)/ 反射鏡径 約170mm
重量 約8.2 kg
素材 ベース:アングル鉄・成形スチール(エナメル塗装)/ ステム:ニッケルメッキ真鍮(六角断面)/ ガイドリング:釣り竿用リング
光源 LED 20W Gx16d PAR56(2500K、約1,500lm)※電球付属
調光 ケーブル上の電子式ディマーにより調光可能
コード長 約2,470mm
カラー ブラック / レッド / ホワイト
参考価格 約264,000円(税込目安)