概要
ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ(1913-1968)は、イタリアの建築家・デザイナーである。兄リヴィオ、弟のアキッレとともにミラノで設計事務所を運営し、1952年にリヴィオが離れた後は、1968年に没するまでアキッレと二人で設計を行った。既製の工業部品をそのまま家具に転用する方法をとり、1957年のメッツァドロとセッラがその例にあたる。
バイオグラフィー
1913年4月22日、ミラノに生まれた。父ジャンニーノ・カスティリオーニは彫刻家である。ミラノ工科大学で建築を学び、1937年に修了した。
同年、兄リヴィオとルイジ・カッチャ・ドミニオーニとともに設計事務所を開いた。1944年に弟のアキッレが加わっている。
1952年にリヴィオが独立し、以後はアキッレと二人で設計を行った。1955年のルミナトール、1957年のメッツァドロとセッラ、1962年のアルコとトイオなどはこの期間の設計にあたる。
1968年11月2日、55歳で没した。以後の作品はアキッレ単独の名義となる。
デザインの思想と方法
カスティリオーニ兄弟が用いたのは、すでに大量に生産されている工業部品を、本来の用途とは別の家具に転用するという方法である。部品は設計者が作るのではなく、既存のものから選ぶ。設計の対象は、何を選び、どう組み合わせるかに移る。
既製部品を選んで組み合わせる
メッツァドロは、トラクターの座席、鋼の帯、木の横木という3つの部材で構成される。座席は農機具として量産されており、そのまま入手できる。帯の弾性が座ったときの揺れを生み、横木が接地を担う。新たに設計したのは組み合わせだけになる。
用途を移し替える
セッラは、自転車のサドルを鉄の棒に取り付け、半球の台座に載せた腰掛けである。台座が丸いため直立せず、常に傾く。電話をかけるあいだの短い時間だけ腰掛けるという用途を想定している。座り続けられないことが、この形の条件にあたる。
光源の性能から照明を決める
トイオは自動車のヘッドライトを光源とし、変圧器を台座に用いる。ルミナトールは投光器の構造を家庭用に転用したものである。いずれも既存の部品の性能が、器具の構成を規定している。
兄弟で共同設計する
作品はすべて兄弟の共同名義で発表され、個々の担当は公表されていない。1968年にピエル・ジャコモが没した後、アキッレは単独で設計を続けた。
フロスの歴史や他の製品について詳しくはフロス ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ルミナトール(1955年、フロス)
細い管を床から立ち上げ、上端に電球を上向きに取り付けた床置き照明である。光は天井に当たって反射し、部屋全体を照らす。投光器の構造を家庭用に転用したものにあたる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号232.1994)。→ルミナトール
メッツァドロ(1957年、ザノッタ)
トラクターの座席を鋼の帯に取り付け、木の横木で支えた腰掛けである。座席は農機具として量産されており、そのまま入手できる。帯の弾性が座ったときの揺れを生む。新たに設計したのは組み合わせだけにあたる。→メッツァドロ
セッラ(1957年、ザノッタ)
自転車のサドルを鉄の棒に取り付け、半球の台座に載せた腰掛けである。台座が丸いため直立せず、常に傾く。座り続けられないことが、電話をかけるあいだの短い時間という想定に対応している。メトロポリタン美術館が収蔵している(収蔵番号2016.645.1)。→セラ
トイオ(1962年、フロス)
自動車のヘッドライトを光源とし、変圧器を台座に用いた床置き照明である。釣り竿の部品で高さを調整し、配線は支柱に沿って露出させる。既製部品の組み合わせで照明を成立させた例にあたる。→トイオ
アルコ(1962年、フロス)
大理石の台座から鋼の弧を伸ばし、先端に笠を吊る床置き照明である。天井に配線せずに卓の上を照らせる。台座には持ち運びのための穴が開いており、棒を通して二人で運ぶ。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号65.1990)。
評価と影響
カスティリオーニ兄弟は一般に、既製の工業部品を家具に転用する方法を確立した設計者と評価されている。設計の対象を、部品をつくることから選んで組み合わせることへ移した点が挙げられる。
1938年から1968年までの30年間、兄弟での共同設計が続いた。作品はすべて連名で発表され、個々の担当は公表されていない。
1968年にピエル・ジャコモが55歳で没した後、アキッレは2002年まで設計を続けた。両者の共同期に生まれた製品の多くが、現在も生産されている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。いずれもアキッレ・カスティリオーニとの共同名義で登録されている。
- MoMA カトラリー(1938年) 収蔵番号 634.1980.1-8
- MoMA ボウル(1950年) 収蔵番号 260.1958.1-2
- MoMA トゥビーノ ランプ(1951年) 収蔵番号 1423.2000
- MoMA ルミナトール フロアランプ(1955年) 収蔵番号 232.1994
- MoMA スパルテル 電気掃除機(1956年) 収蔵番号 1603.2000
- MoMA メッツァドロ(1957年) 収蔵番号 468.1972
- MoMA ヴィスコンテア 吊り照明(1960年) 収蔵番号 373.1963
- MoMA タラクサカム 吊り照明(1960年) 収蔵番号 374.1963
- MoMA トイオ フロアランプ(1962年) 収蔵番号 459.1970
- MoMA アルコ フロアランプ(1962年) 収蔵番号 65.1990
- Met タッチャ ランプ(1962年) 収蔵番号 1987.18a–c
- Met トイオ フロアランプ(1962年設計) 収蔵番号 2002.582.5a, b
- Met セッラ スツール モデル20(1957年) 収蔵番号 2016.645.1
- AIC メッツァドロ スツール(1957年) 収蔵番号 2015.600
- AIC ヴィスコンテア 吊り照明(1960年) 収蔵番号 2015.599
- AIC スヌーピー テーブルランプ(1967年) 収蔵番号 2016.408
V&A では該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
いずれもアキッレ・カスティリオーニとの共同設計による。
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1955年 | 照明 | ルミナトール | Flos |
| 1957年 | スツール | メッツァドロ | Zanotta |
| 1957年 | スツール | セラ | Zanotta |
| 1960年 | 照明 | ヴィスコンテア | Flos |
| 1962年 | 照明 | トイオ | Flos |
| 1962年 | 照明 | タッチア | Flos |
| 1962年 | 照明 | アルコ | Flos |
| 1960年代 | 照明 | ガット テーブルランプ | Flos |
| 1960年代 | 時計 | フィレンツェ クロック | Alessi |
| 1938年 | カトラリー | カトラリー | — |
プロフィール
| 生没年 | 1913年4月22日〜1968年11月2日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・ミラノ |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | ミラノ |
| 分野 | 家具、照明、建築、展示 |
| 主な協働ブランド | Flos、Zanotta、Cassina、Alessi |
Reference
- Fondazione Achille Castiglioni
- https://www.fondazioneachillecastiglioni.it/
- Castiglioni | Flos
- https://flos.com/designers/achille-castiglioni/
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection