概要
ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ(1913-1968)は、イタリアの建築家・デザイナーである。兄リヴィオ、弟のアキッレとミラノで設計を行い、リヴィオが離れた1950年代初めからは、1968年に没するまでアキッレと二人で家具・照明・展示・建築を手がけた。トラクターの座席を使ったメッツァドロや、自転車のサドルを使ったセッラのように、既製の工業部品を別の用途に転用する方法で知られる。
バイオグラフィー
1913年4月22日、ミラノに生まれた。父ジャンニーノ・カスティリオーニは彫刻家である。ミラノ工科大学で建築を学び、1937年に卒業した。
在学中から兄リヴィオと設計の仕事を始め、ルイジ・カッチャ・ドミニオーニとともにフォノラ社のラジオや、1938年のカトラリーを設計している。1944年に弟のアキッレが加わった。
1950年代初めにリヴィオが事務所を離れ、以後はアキッレと二人で設計を行った。1955年のルミナトールは同年のコンパッソ・ドーロを受けている。1957年のメッツァドロとセッラ、1962年のアルコとトイオもこの時期の設計にあたる。
1968年11月27日、ミラノで55歳で没した。
デザインの思想と方法
カスティリオーニ兄弟は、すでに量産されている工業部品や既存の照明の手法を、本来とは別の用途の家具・照明に移し替えた。設計の中心は、何を選び、どう組み合わせるかに置かれる。
既製部品を選んで組み合わせる
メッツァドロはトラクターの座席を、セッラは競技用自転車のサドルを座に用いる。トイオは自動車用の反射鏡付き電球を光源とし、変圧器をそのまま台座の重りにしている。新たにつくる部材は、既製品どうしをつなぐ部分に限られる。
使い方から形を決める
セッラは、公衆電話を使うあいだ動き回りながら半ば腰掛けたいという、アキッレ自身の動作から考えられた腰掛けである。アルコは、天井に穴を開けずに卓の上を照らすという条件から、大理石の台座と長い弧の支柱で構成されている。
フロスの歴史や他の製品について詳しくはフロス ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
ルミナトール(1955年)
細い管を三脚で立て、上端の電球で天井を照らす間接照明である。写真撮影用の間接照明の手法を家庭に持ち込んだもので、名称は1933年に同じ手法を家庭用に提案したピエトロ・キエーザのルミナトールにちなむ。当初はジラルディ&バルザーギが製造し、のちにフロスが生産した。→ルミナトール
メッツァドロ(1957年、ザノッタ)
トラクターの座席を弾性のある鋼の帯に取り付け、ブナ材の横木で支えた腰掛けである。座席は自転車と同じ方式のねじで固定する。製品化は没後で、ザノッタが生産している。→メッツァドロ
セッラ(1957年、ザノッタ)
競技用自転車のサドルを鋼の支柱に取り付け、鋳鉄の半球形の台座に載せた腰掛けである。電話をかけるあいだ体を預けるための家具として考えられた。ザノッタによる生産は1983年に始まった。→セラ
トイオ(1962年、フロス)
アメリカから輸入した自動車用の反射鏡付き電球を光源とし、変圧器を鋼板の台座に載せて重りとした床置き照明である。六角形の支柱はねじで高さを固定し、電線は釣り竿のガイドリングで支柱に沿わせる。→トイオ
アルコ(1962年、フロス)
カッラーラ大理石の台座から弧を描く支柱を伸ばし、先端に反射笠を吊る照明である。街灯から着想し、天井に穴を開けずに食卓の上へ光を届ける。台座の穴に棒を通して二人で運べる。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア&アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。カトラリーとボウルはルイジ・カッチャ・ドミニオーニとの共同名義、それ以外はアキッレ・カスティリオーニとの共同名義で登録されている。
- MoMA カトラリー(1938年) 収蔵番号 634.1980.1-8
- MoMA ナイフ、フォーク、スープスプーン(1938年) 収蔵番号 528.1977.1-3
- MoMA ボウル(1950年) 収蔵番号 260.1958.1-2
- MoMA トゥビーノ ランプ(1951年) 収蔵番号 1423.2000
- MoMA ルミナトール フロアランプ(1955年) 収蔵番号 232.1994
- MoMA スパルテル 電気掃除機(1956年) 収蔵番号 1603.2000
- MoMA メッツァドロ(1957年) 収蔵番号 468.1972
- MoMA ヴィスコンテア 吊り照明(1960年) 収蔵番号 373.1963
- MoMA タラクサカム 吊り照明(1960年) 収蔵番号 374.1963
- MoMA トイオ フロアランプ(1962年) 収蔵番号 459.1970
- MoMA アルコ フロアランプ(1962年) 収蔵番号 65.1990
- MoMA スヌーピー ランプ(1967年) 収蔵番号 20.2008
- V&A トイオ(1962年設計) 収蔵番号 M.35:1-1992
- V&A ブリオンヴェガ RR126 ラジオ・レコードプレーヤー(1966年) 収蔵番号 W.1-2016
- Met タッチャ ランプ(1962年) 収蔵番号 1987.18a–c
- Met トイオ フロアランプ(1962年設計) 収蔵番号 2002.582.5a, b
- Met セッラ スツール モデル20(1957年) 収蔵番号 2016.645.1
- AIC メッツァドロ スツール(1957年) 収蔵番号 2015.600
- AIC ヴィスコンテア 吊り照明(1960年) 収蔵番号 2015.599
- AIC スヌーピー テーブルランプ(1967年) 収蔵番号 2016.408
作品一覧
1938年のカトラリーはルイジ・カッチャ・ドミニオーニとの共同設計、ほかはアキッレ・カスティリオーニとの共同設計による。
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1938年 | カトラリー | カトラリー | — |
| 1955年 | 照明 | ルミナトール | Gilardi & Barzaghi/Flos |
| 1957年 | スツール | メッツァドロ | Zanotta |
| 1957年 | スツール | セラ | Zanotta |
| 1960年 | 照明 | ヴィスコンテア | Flos |
| 1960年 | 照明 | ガット テーブルランプ | Flos |
| 1962年 | 照明 | トイオ | Flos |
| 1962年 | 照明 | タッチア | Flos |
| 1962年 | 照明 | アルコ | Flos |
| 1965年 | 時計 | フィレンツェ クロック | Alessi |
プロフィール
| 生没年 | 1913年4月22日〜1968年11月27日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・ミラノ |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | ミラノ |
| 分野 | 家具、照明、建築、展示 |
| 主な協働ブランド | Flos、Zanotta、Alessi |
Reference
- Pier Giacomo Castiglioni | Domus
- https://domusweb.it/en/biographies/2023/04/22/pier-giacomo-castiglioni.html
- Achille Castiglioni: Design! | Luminator | MoMA
- https://www.moma.org/interactives/exhibitions/1997/castiglioni/luminator.html
- Achille Castiglioni: Design! | Toio | MoMA
- https://www.moma.org/interactives/exhibitions/1997/castiglioni/toio.html
- Achille Castiglioni: Design! | Arco | MoMA
- https://www.moma.org/interactives/exhibitions/1997/castiglioni/arco.html
- Achille Castiglioni: Design! | Sella | MoMA
- https://www.moma.org/interactives/exhibitions/1997/castiglioni/sella.html
- Luminator | ADI Design Museum
- https://www.adidesignmuseum.org/en/collection/luminator-floor-lamp-with-indirect-light/
- Mezzadro | Zanotta
- https://zanotta.com/en-us/products/furnishing-accessories/mezzadro
- "Taccia" Lamp | The Metropolitan Museum of Art
- https://www.metmuseum.org/art/collection/search/484731