概要

スリーアーム・フロアランプは、フランスの照明デザイナー、セルジュ・ムーイユが1952年に発表したフロアランプである。3本の可動アームの先端に、それぞれ向きを変えられるシェードを持つ。

デザインの特徴

有機的フォルムと可動機構

3本のアームは異なる高さと角度で配される。先端の真鍮製ボールジョイントにより、シェードは任意の方向へ向けられる。一つの光源では照らせる範囲が一箇所に限られるが、独立して向きを変えられる3つの光源であれば、複数の場所を同時に照らせる。

シェードの外側は黒く、内側は白く塗装される。外側が黒ければ光が漏れず、内側が白ければ反射光が拡散する。アームは細いスチールチューブで、台座は3本脚による。アームが伸びる方向へ重心が移るため、台座の脚は接地の間隔を広く取る。

接合部の扱い

接合部の真鍮製ネジやワッシャーは覆われず、そのまま外に現れる。隠すためのカバーを設ければ部材が増え、分解も難しくなる。露出させることで構成が読め、部品の交換もできる。

制作背景

本作は1952年、フランス工芸会社からの委嘱により制作された。ムーイユが手がけた一連の黒い照明作品の出発点にあたる。

技術仕様と製造

構造と材料

3本脚の台座は先端へ向かって細くなる。中央のポールから3本のアームが異なる高さで分岐し、先端に真鍮製のボールジョイントを持つ。アームの付け根には六角のネジが配され、締め付けで位置を固定する。摩擦で保持する方式のため、任意の角度で止まる。

シェードはアルミニウム板から手作業で成形される。消灯時は外側の黒だけが見え、点灯時に内側の白い面が反射光を拡散する。同じ形でも、点灯の有無で見え方が変わる。

寸法と仕様

全体の高さは210センチメートル、最大奥行き145センチメートル、最大幅135センチメートルという大型の照明である。各シェードは約28.6×22.9センチメートル、高さ15.9センチメートルの楕円形状を持ち、三脚台座の寸法は約83.2×80.6センチメートルである。E26(E27)口金に対応し、各灯具に最大60ワットの白熱電球、または相当するLED電球を使用する。電源コードには床置き型のオン・オフスイッチが取り付けられている。

製造工程

正規復刻版は1950年代の製法を踏襲する。アルミニウム板は一枚ずつ手作業で成形され、ボールジョイントは旋盤で削り出される。型による成形では同じ形が繰り返されるが、手作業では個体ごとに差が残る。

評価と影響

可動する照明では、アングルポイズ タイプ1227がスプリングで釣り合いを保ち、ジェルデ シグナル SI333が関節を摩擦で固定する。ムーイユも摩擦による保持だが、アームは伸縮せず、シェードの向きだけが変わる。

1999年には、オリジナルの型と製法を用いた正規復刻版を製造する「エディション・セルジュ・ムーイユ」社が設立された。各作品には製造番号が刻印される。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。同館は「Floor Lamp」として登録しており、素材(塗装した真鍮とスチール)は本製品と整合するが、制作年は1950年頃と記録されている。本記事が扱うスリーアーム・フロアランプの発表年(1952年)とは異なるため、同一の製品と断定はできない。

  • MoMA フロアランプ(1950年頃) 収蔵番号 465.1997

基本情報

デザイナー セルジュ・ムーイユ(Serge Mouille)
デザイン年 1952年
製造 エディション・セルジュ・ムーイユ(Éditions Serge Mouille)
製造国 フランス
分類 フロアランプ
材料 アルミニウム(シェード)、スチール(アーム・台座)、真鍮(ジョイント・ネジ)
仕上げ 黒色ラッカー(外装)、白色エナメル(内装)
寸法 高さ210cm × 奥行145cm × 幅135cm
シェード寸法 約28.6cm × 22.9cm × 高さ15.9cm(各)
台座寸法 約83.2cm × 80.6cm
灯数 3灯
口金 E26 / E27
推奨電球 60W白熱電球または相当LED電球(各灯)
カラーバリエーション ブラック、ホワイト
付属品 製造番号刻印、認証書