概要

セルジュ・ムーイユ(1922-1988)は、フランスの銀細工師・照明デザイナーである。金属を叩いて成形する技術を持ち、1953年から照明の設計を始めた。細い鋼の腕の先に、曲面の笠を取り付ける構成をとる。笠は乳房を思わせる形から名を取り、内側が白く塗られる。生産は自らの工房で行われ、数は限られた。

バイオグラフィー

1922年12月24日、パリに生まれた。13歳でパリの応用美術学校に入り、銀細工を学んでいる。

1945年に自身の工房を開き、銀細工の制作を行った。1946年からは同校で教えている。

1953年、室内装飾家ジャック・アドネの依頼で照明の設計を始めた。以後、1960年代前半まで一連の照明を制作している。

1960年代に蛍光灯を用いた系列も手がけたが、生産の規模は限られた。1988年に没している。現在は同名のブランドが再生産を行っている。

デザインの思想と方法

ムーイユは銀細工の訓練を受けており、金属を叩いて曲面をつくる技術を持っていた。照明の笠をこの方法で成形すれば、型を用いずに複雑な曲面が作れる。ただし一つずつ手で作るため、数は増やせない。

叩いて曲面をつくる

笠は鋼板を叩いて成形する。型を用いないため、曲率を自由に決められる。内側は白く塗り、光を反射させる。外側は黒く塗ることで、消灯時には輪郭だけが見える。

腕を細く長くする

笠を支える腕は、細い鋼の棒による。断面が小さいため、空間の中では線として見える。腕の先に笠という体積があることで、線と塊の対比が生まれる。

関節で向きを変える

腕と笠の接合部、腕と支柱の接合部に関節を持つ。光の向きを変えられるが、機構は最小限で、摩擦だけで位置を保つ。部品を増やさないという判断にあたる。

工房で作る

生産は自らの工房で行われ、量産の体制はとらなかった。一つずつ手で叩いて作るため、製作数は限られる。現在の再生産も同じ工程による。

代表作にみる方法

一本腕の床置き照明(1953年)

細い鋼の腕の先に、叩いて成形した笠を取り付けた床置き照明である。笠の内側は白く、外側は黒く塗られる。関節は摩擦だけで位置を保つ。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号465.1997)。→ワンアーム・フロアランプ

三本腕の床置き照明(1953年)

一本の支柱から3本の腕を伸ばした床置き照明である。それぞれの腕の長さと角度が異なり、光を別々の方向へ配れる。→スリーアーム・フロアランプ

サチュルヌ(1958年)

球体の周囲に環を配した吊り照明である。名称は土星の環に由来する。叩いて成形する技術を、球と環という別の形式に適用した例にあたる。→サターン

壁付けの系列

壁から腕を伸ばし、先端に笠を取り付ける照明である。腕の長さと関節の数で複数の型が用意される。

蛍光灯の系列(1960年代)

蛍光灯を用いた照明も手がけたが、生産の規模は限られた。光源が直管であるため、笠の形も従来とは異なる。

評価と影響

ムーイユは一般に、1950年代のフランスの照明を代表する制作者と評価されている。銀細工の技術で笠を叩いて成形するという方法が、その特徴にあたる。

生産は自らの工房で行われ、量産の体制はとらなかった。製作数が限られるため、当時の流通も限定的だった。

1980年代以降に中古市場での評価が高まり、現在は同名のブランドが再生産を行っている。工程は当初と同じく手作業による。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。

  • MoMA 床置き照明(1950年頃) 収蔵番号 465.1997

V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。フランス国内の館については照合手段がない。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1953年 照明 ワンアーム・フロアランプ Serge Mouille
1953年 照明 スリーアーム・フロアランプ Serge Mouille
1950年代 照明 壁付けの系列 Serge Mouille
1958年 照明 サターン Serge Mouille
1960年代 照明 蛍光灯の系列 Serge Mouille
1940-50年代 銀細工 銀細工の制作

プロフィール

生没年 1922年12月24日〜1988年
出身地 フランス・パリ
国籍 フランス
活動拠点 パリ
分野 照明、銀細工
主な協働ブランド Serge Mouille

Reference

Serge Mouille(公式)
https://www.sergemouille.com/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
Musée des Arts Décoratifs, Paris
https://madparis.fr/en