アングルポイズ タイプ1227は、1935年に発表された革新的なデスクランプである。英国の自動車技術者ジョージ・カーワーダインによって設計されたこの照明器具は、スプリング式タスクランプの原型として照明デザイン史に不朽の地位を確立した。独自のコンスタントテンション・スプリング機構により、最小限の力であらゆる角度への調整が可能でありながら、設定した位置を正確に保持するという画期的な機能を実現している。

カーワーダインは元来、自動車のサスペンションシステム開発を専門とする技術者であった。1932年、車両用サスペンションの研究過程で考案したスプリング機構に、照明器具としての応用可能性を見出したことが、このランプ誕生の契機となった。当初は産業用途を想定した4スプリング式モデル1208が製造されたが、より家庭環境に適した洗練されたデザインとして、3スプリング式のタイプ1227が開発された。

その機能美と優れた実用性により、タイプ1227は発表当初から絶大な支持を獲得し、医療施設、工房、オフィス、そして一般家庭へと急速に普及していった。現在もなお、世界中のデザイン愛好家から支持され続けており、英国デザインの象徴的存在として認知されている。

特徴とコンセプト

革新的なスプリング機構

タイプ1227の最大の特徴は、カーワーダインが特許を取得したコンスタントテンション・スプリング技術にある。この機構は、従来の照明器具が採用していたカウンターウェイト方式とは根本的に異なるアプローチを採用している。3本の精密に調整されたスプリングが、人間の腕の筋肉の緊張に類似した方式で機能し、軽い力での位置調整と安定した保持を両立させている。

このスプリング機構により、使用者は最大90センチメートルのリーチ範囲内で、シェードを自在に配置することができる。調整後は外部からの力が加わらない限り、その位置を正確に維持し続ける。この「あらゆる角度で均衡を保つ」能力こそが、アングルポイズ(Anglepoise)という名称の由来となっている。

機能主義的デザイン哲学

タイプ1227のデザインは、徹底した機能主義に基づいている。アールデコ様式の影響を受けた3段構造のベースは、美的要素を備えながらも、主要な目的は照明器具全体の安定性確保にある。直径15センチメートルの鋳鉄製ベースは、アームとシェードの可動域を支えるために必要な重量を提供している。

円錐形のアルミニウム製シェードは、光を効率的に集束させる形状として設計されている。このシェード設計により、タイプ1227は25ワットの低出力電球でも、他の照明器具における60ワット電球と同等の照度を実現できると当時宣伝された。エネルギー効率性への配慮は、1930年代としては先進的な視点であり、持続可能性という概念が一般化する以前から、資源の効率的利用を実践していた。

工業美学と普遍性

タイプ1227は、産業デザインの機能が視覚的に表現された好例である。スプリングとアームの構造が露出したデザインは、機械的なメカニズムを隠蔽せず、むしろそれを美的要素として提示している。この誠実な設計姿勢は、同時代のバウハウスや機能主義運動の理念と共鳴するものであった。

また、タイプ1227のデザインは時代を超越した普遍性を持つ。発表から90年近くを経た現在においても、その形態は古びることなく、クラシカルな空間からモダンな環境まで、幅広いインテリアスタイルに調和する。この時代を超えた適応性こそが、真の意味でのデザインクラシックの証左といえる。

エピソード

偶然から生まれた名品

タイプ1227の誕生は、セレンディピティの好例である。カーワーダインが勤務していたホーストマン自動車会社が1929年に倒産した際、彼は長年の関心事であったスプリングとレバー機構の研究に専念する機会を得た。自宅の庭に設けた工房で、車両用サスペンション開発のために実験を重ねていたカーワーダインは、開発したスプリング機構が照明器具に応用可能であることに気づいた。当初は「イクイポイズ(Equipoise)」という名称を希望したが、商標登録局から既存語であるとして却下され、アングルポイズという名称が採用された経緯がある。

戦時下での活躍

第二次世界大戦の勃発は、タイプ1227に予期せぬ役割をもたらした。英国が1939年9月3日にドイツへ宣戦布告した当日、ハーバート・テリー社は「理想的な防空ランプ」として広告を掲載した。集束された光が外部に漏れにくい特性が、防空灯火管制下での使用に適していたのである。

さらに、英国空軍の爆撃機には、航法士用として特別仕様のアングルポイズランプが装備された。これらは非磁性材料で製造され、計器の磁気コンパスへの干渉を防ぐよう設計されていた。また、飛行中の振動に対処するため、摩擦調整機構が追加された。1986年、スコットランドのネス湖から引き揚げられた第二次世界大戦時のウェリントン爆撃機の残骸から、驚くべきことに機能する状態のアングルポイズランプが発見され、その耐久性と品質の高さが実証された。

文化的影響

タイプ1227は、単なる照明器具の枠を超えて、文化的アイコンとしての地位を確立した。著名な作家ロアルド・ダールは、アングルポイズランプの灯りの下で多くの作品を執筆したことで知られており、ロアルド・ダール博物館には特注の巨大版アングルポイズランプが展示されている。

1986年、映像制作会社ピクサーが制作した短編アニメーション「ルクソーJr.」は、アングルポイズランプをモデルとしたキャラクターを主人公としており、このランプはその後ピクサーのマスコットキャラクターとして全作品のロゴに登場している。また、ピーター・ガブリエルのミュージックビデオ「ショック・ザ・モンキー」(1982年)や、彫刻家デイヴィッド・マックによる360台のアングルポイズランプで構成された巨大な手の彫刻作品「ナックル・シャッフル」(1985年)など、芸術作品のモチーフとしても頻繁に採用されている。

継承と進化

カーワーダインは1947年に61歳で逝去したが、彼とハーバート・テリー社との協力関係は生涯続いた。テリー家は5世代にわたってアングルポイズブランドを継承し、2003年には著名なプロダクトデザイナー、ケネス・グランジ卿をデザインディレクターに迎えた。グランジは、オリジナルの1227を現代的に解釈したタイプ75やタイプ3を開発し、ブランドの伝統と革新の調和を実現している。2009年にはアングルポイズ75周年を記念してオリジナル1227の復刻版が発売され、2025年には90周年限定モデルが400台限定で制作された。

評価と影響

タイプ1227は、産業デザイン史における最も重要な作品の一つとして広く認識されている。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、デザインミュージアム、サイエンスミュージアムなど、世界の主要なデザイン博物館のコレクションに収蔵されている。

2009年、英国の郵便事業会社ロイヤルメールは「英国を代表する10のデザイン」記念切手シリーズを発行した。タイプ1227は、コンコルド、ミニクーパー、ロンドンの2階建てバス、赤い公衆電話ボックスなどと並んで選定され、英国の工業デザイン遺産の象徴として公式に認定された。

デザインミュージアムは、タイプ1227を「以降のすべてのタスクライトの基準を設定した」作品と評価している。実際、現代に至るまで製造される可動式デスクランプの大部分は、カーワーダインが確立したスプリングバランス機構の原理に何らかの形で依拠している。タイプ1227は、デザインの模倣を超えて、一つの製品類型そのものを創出した稀有な例である。

また、その影響は照明デザインの領域にとどまらない。機能と形態の統合、材料の誠実な使用、そして時代を超越した美学という、タイプ1227が体現する設計原則は、20世紀の工業デザイン全般に対して深遠な影響を与えた。エンジニアリングの精密性と美的洗練を両立させたカーワーダインの業績は、デザイナーとエンジニアの協働の重要性を示す模範的事例として、現代のデザイン教育においても頻繁に参照されている。

受賞歴と栄誉

  • 2009年 ロイヤルメール記念切手「英国を代表する10のデザイン」選定
  • ロンドン・デザインミュージアム 常設コレクション
  • ヴィクトリア&アルバート博物館 コレクション
  • サイエンスミュージアム(ロンドン) コレクション

基本情報

デザイナー ジョージ・カーワーダイン(George Carwardine)
発表年 1935年
製造 ハーバート・テリー&サンズ(Herbert Terry & Sons)
現行ブランド アングルポイズ(Anglepoise)
分類 デスクランプ / タスクランプ
主要材料 アルミニウム(シェード、アーム)、鋳鉄(ベース)、スチール、真鍮(金具)
仕上げ グロス塗装、ブライトクローム、サテン仕上げ、ブラス
シェード寸法 直径141mm × 高さ190mm
アームリーチ 最大約900mm(ベースからシェードまで)
ベースサイズ 150mm × 150mm
重量 約3.6kg
機構 コンスタントテンション・スプリング技術(3スプリング式)
特許番号 404,615(4スプリング機構、1932年) / 433,617(3スプリング機構、1934年)