PK24 ハンモックチェア

1965年、ポール・ケアホルムがデザインしたシェーズロングである。ロココ時代のフランス式長椅子に着想を得ながら、スチールと籐という素材で再解釈された。PK24™ ハンモックチェアと名づけられたこの作品は、身体を二点間に吊り下げるように支える構造を持ち、ケアホルムの代表作のひとつとして半世紀以上にわたり生産が続けられている。

概要

PK24は、ポール・ケアホルムのコレクションのなかでも認知度の高い作品のひとつで、現在はフリッツ・ハンセンが製造・販売を手がけている。ロココ様式のシェーズロングがもつ曲線と寸法を継承しながら、サテン仕上げのステンレススチールによるベースフレームと、籐またはレザーによるシート面という素材構成で再構築されている。

最大の構造的特徴は、シート部分とベースフレームの間に物理的な接合が存在しないことである。両者は重力と摩擦によって支えられ、ハンモックのように身体を二つの支点間に懸架する。ケアホルム自身がこの作品を「ハンモックチェア」と呼んだのはこのためである。独立した要素によって家具を構成するというケアホルムの設計原理を、最も明快に示した作品といえる。

特徴・コンセプト

独立要素の構造

PK24を構成するスチールのベースフレーム、籐またはレザーのシート、レザーのヘッドレストという三つの要素は、いずれも個別に取り外すことができ、ボルトやビスによる固定は施されていない。各パーツはそれぞれに適した素材で仕上げられ、独立しながら全体として調和している。

スチールという素材

同時代のデンマークのデザイナーの多くが木材を主要素材としたのに対し、ケアホルムはスチールを選び続けた。PK24では、サテン仕上げのステンレススチールが用いられ、流れるような曲線を描くスプリングスチールのベースが、強度と軽やかな見え方を両立させている。

ロココへの参照

一見すると、PK24のミニマルな造形はロココ時代の装飾的な長椅子とはかけ離れて見える。しかしケアホルムは、フランスのシェーズロングがもつ曲線と寸法を参照し、装飾を削ぎ落としながらもその流動的な曲線を残した。古典的な形態を近代の素材と構造に置き換えた再解釈の作品である。

エピソード

E・コール・クリステンセンによる生産

PK24は、ケアホルムの協力者であった製造者エイヴィン・コール・クリステンセンのもとで1965年に生産が開始された。両者のイニシャルを組み合わせた「KK」のロゴが、初期製品には用いられている。

フリッツ・ハンセンへの継承

1980年のケアホルム逝去後、1982年にフリッツ・ハンセンがケアホルム・コレクションの製造と販売を引き継いだ。以降、オリジナルの設計に沿った生産が現在まで続けられている。

番号体系の意味

ケアホルムは自身の作品にPKの接頭辞と数字を付す番号体系を用いていた。「PK」のイニシャルは存命中には使われておらず、没後に加えられたものである。PK24という名称は、作品目録における位置を示している。

評価

PK24は、20世紀のシェーズロングのなかでも広く知られる一脚である。ニューヨーク近代美術館(MoMA)はPK24を収蔵しており(1965年、E. Kold Christensen製)、デザイン史における評価の高さを示している。

構造的には単純でありながら、重力と摩擦のみで成立する設計は、ケアホルムの精密な計算に支えられている。宙に浮くように見えるシートの佇まいが、この椅子の見どころとなっている。

基本情報

正式名称 PK24™ ハンモックチェア / PK24™ Hammock Chair(Chaise Longue)
デザイナー Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)/デンマーク/1929–1980
デザイン年 1965年
製造ブランド Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)/デンマーク
初期製造 E. Kold Christensen(1965–1982)
主要素材 ベース:サテン仕上げステンレススプリングスチール/シート:籐(ウィッカー)またはレザー/ヘッドレスト:レザー(ステンレススチール製カウンターウェイト付き)
サイズ W670 × D1550 × H850 mm(座面高:約140 mm)
仕上げの選択肢 籐張り+レザーヘッドレスト/オールレザー+レザーヘッドレスト
レザーカテゴリ カテゴリ4(Aura)/カテゴリ5(Grace、Embrace、Rustik、Natural)
構造的特徴 シートとベースは非接合。重力と摩擦のみで保持。ヘッドレストはカウンターウェイトにより位置調整可能
スタッキング 不可
保証 フリッツ・ハンセン製品登録で最長20年間の限定保証