概要
PK20は、ポール・ケアホルムが1968年に発表したラウンジチェアである。マットクローム仕上げのスプリングスチールによるカンチレバーのフレームに、レザーまたは籐を張る。レザー仕様は背が高くヘッドレストが付き、籐仕様は背が低くヘッドレストを持たない。当初はE.コルド・クリステンセンが製造し、1982年からフリッツ・ハンセンが生産を引き継いでいる。
特徴・コンセプト
張力で形を保つフレーム
左右のフレームは、1本の横材で連結される。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の記録によれば、フレームは最初に垂直と水平が正確に出る状態で組まれ、そのうえで横材が6mmだけたわむように曲げられる。そこへ張地を帯状に渡して締め上げると、フレームは元の形へ引き戻され、以後は張力がかかったまま安定する。座面を支える材と、フレームの形を保つ材が同じであるため、部材を増やさずに剛性が得られている。
フレームはスプリングスチールで、後脚を持たないカンチレバーとして床に接する。体重をかけると全体がわずかにしなり、身体の動きに追従する。
レザーと籐
レザー仕様は背を高くとり、リング状のヘッドレストを背もたれに掛けて用いる。位置を上下に動かせるため、体格や姿勢に合わせて頭の当たる高さを変えられる。籐仕様は背が低く、ヘッドレストを持たない。無処理の籐を編んだ面は光を透かし、フレームの輪郭が背後まで見通せる。同じフレームに異なる素材を張ることで、座り方も見え方も変わる。
スチールという選択
ケアホルムは木工の訓練を受けた家具職人でありながら、構造材にスチールを選び続けた。彼はスチールの構造上の性能だけでなく、表面での光の屈折を仕事の重要な要素として挙げている。マットクロームの面は鏡のように映り込むのではなく、角度によって明るさが移り変わる。
エピソード
フリッツ・ハンセンが伝えるところでは、この椅子の当初の構想は、他のレザー家具の製造で出る細長い端材を座面に使うというものであった。生産で余る材料を無駄にしない方法として考えられたが、端材は一本ごとに色と質感が異なり、一脚のなかで揃わなかった。この案は取り下げられ、現在は選別したレザーのみが用いられている。
評価と影響
後脚を持たない構成による軽い見え方と、スプリングスチールのしなりによる座り心地を両立させた点が評価されている。ケアホルムの1960年代の仕事のなかでも、PK22 ラウンジチェアの構成をラウンジチェアの寸法へ展開した例として位置づけられる。
美術館コレクション
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、E.コルド・クリステンセン製の1968年の椅子を収蔵番号CIRC.457-1970で登録している。クロームメッキのスチールフレームにオックスハイドの革を張ったもので、寸法は高さ89cm・幅80.5cm・奥行74cmと記録されている。
ポール・ケアホルムの設計思想や経歴について詳しくはポール・ケアホルムプロフィールページをご覧ください。
フリッツ・ハンセンの歴史や他の製品について詳しくはフリッツ・ハンセンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | PK20 ラウンジチェア / PK20 Lounge Chair |
|---|---|
| デザイナー | ポール・ケアホルム(Poul Kjærholm) |
| ブランド | フリッツ・ハンセン(1982年〜)/E.コルド・クリステンセン(当初) |
| 発表年 | 1968年 |
| デザインの成立国 | デンマーク |
| 分類 | ラウンジチェア |
| フレーム | マットクローム仕上げのスプリングスチール(カンチレバー) |
| 座面 | レザー(背高・ヘッドレスト付)または無処理の籐(背低・ヘッドレストなし) |
| サイズ | 幅80cm × 奥行71cm × 高さ89cm(レザー)/高さ84cm(籐)、座面高37cm |
| 収蔵 | ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(CIRC.457-1970) |
Reference
- PK20 chair in leather | Fritz Hansen
- https://www.fritzhansen.com/en/categories/by-series/pk20/pk20-leather
- Chair, 1968, Poul Kjaerholm | Victoria and Albert Museum
- https://api.vam.ac.uk/v2/museumobject/O176231