AB1アラームクロックは、1987年にディートリッヒ・ルブスがディーター・ラムスのもとでBraun AGのために設計したアナログ目覚まし時計である。約64mm四方の小さな筐体に、時刻表示とアラームという目覚まし時計に必要な機能を簡潔にまとめた本作は、ラムスが掲げた「Less, but better(より少なく、しかしより良く)」という設計理念を反映した一作として知られている。
デスククロックとしてもトラベルクロックとしても使える汎用性を持ち、発売から長年にわたって生産が続けられてきた。その文字盤デザインは、後年Appleが2013年のiOS 7で時計アプリを刷新した際に参照されたことでも広く知られている。
デザインの特徴
AB1は、正方形の簡潔な筐体に、白い文字盤、黒い時針・分針、そしてBraunの時計を象徴する黄色い秒針という最小限の要素で構成されている。文字盤には視認性の高いサンセリフ書体アクツィデンツ・グロテスク(Akzidenz Grotesk)が用いられ、時刻を瞬時に読み取れるよう配慮されている。装飾的な要素は排され、すべての形状と素材が機能的な理由に基づいて選ばれている。
側面にはリブ状の加工が施され、暗い場所でも手探りで時計をつかみ、アラームを止められるよう工夫されている。針には蓄光塗料が用いられ、暗所での視認にも対応する。アラームは音量が徐々に大きくなるクレッシェンド方式を採用し、急な大音量を避けて穏やかに目覚めを促す。電源は乾電池で、クォーツムーブメントにより静かに時を刻む。
デザインの影響と継承
AB1の簡潔な文字盤デザインは、後年のプロダクトデザインに影響を与えた。スミソニアン協会のクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館は、Appleが2013年のiOS 7時計アプリの文字盤デザインにおいて、AB1を含むBraunの時計のデザインを参照したと指摘している。Apple製品のデザインを長く率いたジョナサン・アイヴがラムスから受けた影響は広く知られており、ラムス自身も、自らが追求した原則に沿って製品をつくる数少ない企業の一つとしてAppleに言及している。
近年では、AB1から派生したBraunのBC02クロックを題材に、複数のブランドとのコラボレーションが行われている。2020年にはポール・スミスによる限定版が、2021年にはヴァージル・アブロー率いるオフホワイト(Off-White)とのコラボレーションによる鮮やかなオレンジとペールブルーの限定版が発表された。発売から数十年を経てもなお生産と再解釈が続けられている点に、本作のデザインの息の長さがうかがえる。
基本情報
| デザイナー | ディートリッヒ・ルブス(デザイン監修:ディーター・ラムス) |
|---|---|
| ブランド | Braun AG |
| 発表年 | 1987年 |
| 製品コード | 4746 / AB1 |
| サイズ | 約64mm四方(モデル・年代により多少異なる) |
| 素材 | プラスチック、アクリル |
| 機構 | クォーツムーブメント |
| 電源 | 乾電池 |
| 主な機能 | アナログ時刻表示、クレッシェンドアラーム、スヌーズ、ライト機能、蓄光針、黄色い秒針 |
| 生産国 | ドイツ |