リキクロックは、渡辺力が2003年に発表した掛時計である。製造は、富山県高岡市に本社を置くタカタレムノス。時計として最も基本的な「見やすさ」を主題に据え、大きく取った12の数字と、太さと長さに差をつけた針で構成されている。2004年度グッドデザイン賞を受賞し、JIDAデザインミュージアムセレクションにも選定されている。

特徴・コンセプト

数字を省かない文字盤

文字盤には1から12までのアラビア数字がすべて置かれ、その間は5分刻み(Sサイズは1分刻み)の目盛で等分される。数字は盤面に対して大きく、離れた位置からも読み取れる。針は時針・分針で太さと長さを明確に変えてあり、一瞥で両者を区別できる。装飾を持たないのは、意匠のためというより、時刻を読むという機能を妨げないためである。

プライウッドの枠体

枠体には曲げたプライウッド(積層合板)が用いられる。この加工を担うのは、タンバリンやドラムなど楽器の枠を長く手がけてきた木工職人である。楽器の胴と同じ手法で円形をつくることで、薄い断面と正確な真円、そして仕上げの質を両立させている。厚みは48mmで、盤面の外周を細いリングが囲む構成になる。

サイズと書体の展開

掛時計としてはSサイズ(φ203mm、410g)とLサイズ(φ354mm、950g)の2寸法があり、それぞれ数字を太く組んだ書体と細く組んだ書体が選べる。単三形乾電池1本で駆動する。ムーブメントはモデルにより異なり、細字のSサイズにはスイープセコンドが採用されている。

リキクロックの発表以降、渡辺力とタカタレムノスの協働はシリーズとして展開された。電波受信機能を備えたリキクロック RC、アルミニウム枠のリキアルミニウムクロック、スチール枠のリキスチールクロック、置時計のリキアラームクロックなどが加わっている。

エピソード

時計というライフワーク

渡辺力にとって時計の仕事は長い蓄積を持つ主題だった。壁時計に始まり、日比谷第一生命ビルのポール時計のような公共の時計、さらに腕時計まで、生涯にわたって手がけている。リキクロックは、その延長線上に置かれた掛時計であり、公共の時計で求められる読み取りやすさを住宅の壁面に持ち込んだ作品として理解できる。

素材と価格の設計

プライウッドという素材の選択には、製造時と廃棄時の環境負荷が小さいという判断も含まれている。価格を抑えることも設計条件のひとつであり、Sサイズは7,700円、Lサイズは13,200円(いずれも税込・メーカー希望小売価格)に収められている。誰もが手に取れる価格で標準的な時計をつくるという方針が、素材と構造の選択を規定している。

評価

リキクロックは、発表から二十年以上を経て、日本製の掛時計としては例外的に長く同一仕様で生産が続いている。強い個性を主張しないため、和洋いずれの室内にも収まり、住宅のほか各地の商業施設でも採用されている。

時刻表示がスマートフォンに移った今日、壁に掛ける時計は必ずしも必要ではない。それでもこの時計が選ばれるのは、部屋に入った人が視線を上げれば時刻がわかるという、掛時計にしかない性質を最も簡潔な形で備えているためだろう。

基本情報

製品名 RIKI CLOCK(リキクロック)
デザイナー 渡辺力(Riki Watanabe)
発表年 2003年
メーカー タカタレムノス(Lemnos)
製造国 日本
素材 プライウッド、ガラス
サイズ・重量 S:φ203 × d48mm/410g L:φ354 × d48mm/950g
書体 太字タイプ(WR-0401)/細字タイプ(WR-0312)
電源 単三形乾電池1本
受賞・選定 2004年度グッドデザイン賞、JIDAデザインミュージアムセレクション Vol.6