アスタリスク クロックは、ジョージ・ネルソン・アソシエイツがハワード・ミラー社のためにデザインした壁掛け時計である。中心から放射状に伸びる12本のロッドが、活字記号「*(アスタリスク)」を思わせる星形のシルエットを描く。文字盤の数字も目盛りも持たず、ロッドの配置だけが時刻の指標となる。
特徴・コンセプト
この時計の出発点は、時刻の読み取り方についての観察にあった。人は針の相対的な位置で時間を把握しており、数字がなくとも読み取りは成立する。しかも腕時計が普及した当時、壁の時計はすでに室内装飾としての役割を強めていた——この認識が、数字を持たない一連のウォールクロックを生んだ。
アスタリスク クロックは、その考え方が最も簡潔な形をとった一例である。中心のムーブメントカバーから12本のロッドが等間隔に伸び、それぞれが時針の位置を示す座標として働く。ロッドは中心から先端に向かって細く絞られており、正面から見ると鋭い星形に、斜めから見ると立体的な放射構造に見える。直径は約25cmとネルソン クロックの中では小型だが、放射状の輪郭が視覚的な広がりを生む。
現行のヴィトラ製は、ブラックが塗装スチール、ブラスが真鍮によって製作される。壁面に落ちる影が光の向きとともに変化するため、時計としてだけでなく壁面のグラフィック要素としても機能する。
エピソード
アスタリスクは、ハワード・ミラー社の当初のカタログにモデル番号2213として掲載されている。ウォールクロックの第一弾となる14点のコレクションは1949年に市場に登場し、以後35年間で100種類を超えるモデルが生み出された。ヴィトラはネルソンの資料アーカイヴをもとに、1999年から復刻生産を続けている。
「アスタリスク」という名称は、その形が活字の記号を連想させることに由来する。語源をたどればギリシャ語の「小さな星」であり、放射状の造形そのものを言い当てた名でもある。
評価
ネルソン クロックのウォールクロック群は、1950年代アメリカのデザインを代表するプロダクトとして広く知られている。その中でアスタリスク クロックは、装飾を最小限に抑えた抽象的な構成という点で際立つ位置を占める。ミッドセンチュリーモダンへの関心が高まった1990年代以降、オリジナルのヴィンテージ品はコレクターの収集対象となり、ヴィトラによる復刻を通じて現在も入手が可能である。
基本情報
| 製品名 | アスタリスク クロック(Asterisk Clock) |
|---|---|
| デザイナー | ジョージ・ネルソン(George Nelson)/ジョージ・ネルソン・アソシエイツ |
| デザイン年 | 1950年代(ヴィトラはウォールクロック コレクションを1949〜1960年と表記) |
| オリジナルメーカー | ハワード・ミラー・クロック・カンパニー(Howard Miller Clock Company/モデル2213) |
| 現行メーカー | ヴィトラ(Vitra/1999年より復刻) |
| 素材 | 塗装スチール(ブラック)/真鍮(ブラス) |
| サイズ | 直径 約250mm |
| ムーブメント | クォーツ式(単3電池1本) |
| カテゴリ | 壁掛け時計 |
| スタイル | ミッドセンチュリーモダン |