概要

渡辺力(1911-2013)は、日本のインテリアデザイナーである。1949年に東京で個人の設計事務所を開き、フリーランスの設計者という職業を日本で成立させた一人にあたる。1952年のヒモイスは、安価な材料と少ない工程で椅子をつくるという課題への解答として作られた。1957年に籐のトリイスツールでミラノ・トリエンナーレ金賞を受け、晩年の2003年にはリキクロックを発表している。

バイオグラフィー

1911年7月17日、東京・白金に生まれた。1936年に東京高等工芸学校(現・千葉大学工学部)木材工芸科を卒業し、群馬県工芸所に入所している。同所ではブルーノ・タウトの指導を受けた。

1940年に母校の助教授となる。1943年には東京帝国大学農学部林学科の選科(森林利用学)を修了し、同大学の助手を務めた。木材について、工芸と林学の両面から学んだ経歴にあたる。

1949年、38歳で東京・銀座に渡辺力デザイン事務所を設立した。企業に属さずに設計を行う体制は、当時の日本では前例が少ない。

1952年に新日本工業デザイン展でヒモイスを発表。1956年に松村勝男、渡辺優とQデザイナーズを結成した。1957年、第11回ミラノ・トリエンナーレでトリイスツールと円形テーブルが金賞を受けている。1966年に東京造形大学室内建築科の開講に加わり、教授を務めた。2013年1月8日、101歳で没した。

デザインの思想と方法

戦後の日本には物資がなく、椅子は一般の家庭にほとんど入っていなかった。渡辺が扱ったのは、限られた材料と工程でどこまで安く椅子を作れるかという課題である。この条件では、部材の数と加工の手間が直接に価格を決める。

安価な材料と少ない工程で組む

ヒモイスは、木の枠に紐を張って座面と背をつくる。紐は張力を受け、枠は圧縮を受けるという分担で、それぞれ最小の断面で済む。詰め物も張り工程も要らないため、材料費と加工費の双方が下がる。

床に座る生活を前提に寸法を決める

当時の日本の住宅は床に座る生活が中心で、部屋も狭い。椅子の座面を低くし、外形を小さく抑えることで、畳の部屋にも置ける寸法になる。西洋の椅子の寸法をそのまま持ち込まないという判断にあたる。

材料の性質から構造を決める

籐は曲げに強く、しなる。トリイスツールでは、この性質を利用して座面と脚を少ない部材で結んでいる。段ボールを用いたリキスツールでは、面を折り曲げて断面をつくることで、薄い材料に強度を持たせた。材料が変われば構造も変わるという順序をとる。

読み取りの条件から文字を配る

時計の設計では、数字の大きさと配置を読み取りの条件から決める。リキクロックの数字は等間隔の格子ではなく、文字の形に合わせて位置をずらしてある。円周上に並べたときに間隔が均等に見えるための調整にあたる。

代表作にみる方法

ヒモイス(1952年)

木の枠に紐を張って座面と背をつくった椅子である。紐が張力を、枠が圧縮を受けるため、いずれも細い断面で済む。詰め物と張り工程を持たないので、材料費と加工費が下がる。1955年に銀座松屋のグッドデザイン・セクションに選ばれた。

ソリッドスツール(1954年)

建築家・清家清が設計した住宅「数学者の家」のために作られた腰掛けである。玄関先に置ける寸法と形状を条件とした。トリイスツールの原型にあたる構成をとる。

トリイスツール(1956年)

籐を用いた腰掛けで、座面と脚を少ない部材で結ぶ。籐がしなるため、荷重に応じて全体がわずかに動く。名称は形が鳥居を思わせることによる。1957年のミラノ・トリエンナーレで金賞を受けた。

リキスツール(1960年代)

十条製紙(現・日本製紙)のために開発した段ボール製の腰掛けである。面を折り曲げて断面をつくることで、薄い材料に強度を持たせる。軽く、使わないときは畳める。

リキクロック(2003年)

92歳のときにタカタレムノスから発表した掛け時計である。数字は等間隔の格子ではなく、文字の形に合わせて位置をずらして配される。円周上で間隔が均等に見えるための調整にあたる。2004年にグッドデザイン賞を受けた。→リキクロック

評価と影響

渡辺は一般に、剣持勇柳宗理と並んで戦後日本のモダンデザインを確立した設計者と評価されている。1949年の事務所設立は、企業に属さない設計者という職業を日本で成立させた例にあたる。

1957年のミラノ・トリエンナーレでの金賞は、日本の工業製品の設計が国外で評価された早い例として言及される。同じ回では柳宗理のバタフライスツールも金賞を受けている。

建築家・清家清との協働は50年以上に及び、住宅の内装と家具を継続して担当した。2006年には東京国立近代美術館で回顧展が開かれている。

受賞・収蔵

受賞

  • 1957年 第11回ミラノ・トリエンナーレ 金賞(トリイスツール、円形テーブル)
  • 1976年 紫綬褒章
  • 1991年 第19回 国井喜太郎産業工芸賞
  • 2004年 グッドデザイン賞(リキクロック)

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。日本国内の館については照合手段がない。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド / 場所
1952年 椅子 ヒモイス
1954年 スツール ソリッドスツール 清家清「数学者の家」
1956年 スツール トリイスツール
1956年 テーブル 円形センターテーブル
1960年代 スツール リキスツール(段ボール) 十条製紙
1972年 公共 ポール時計(日比谷 第一生命ビル前) 東京
2003年 時計 リキクロック タカタレムノス
2000年代 時計 リキシリーズの各種 タカタレムノス
1950-2000年代 内装 清家清設計の住宅の内装・家具 日本各地

プロフィール

生没年 1911年7月17日〜2013年1月8日
出身地 日本・東京
国籍 日本
活動拠点 東京
分野 家具、インテリア、時計
主な協働ブランド タカタレムノス、十条製紙

Reference

渡辺力 | タカタレムノス
https://www.lemnos.jp/designer/riki-watanabe/
東京国立近代美術館
https://www.momat.go.jp/
公益社団法人 日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)
https://www.jida.or.jp/