ペタル クロック(Petal Clock)は、ジョージ・ネルソンがハワード・ミラー・クロック・カンパニーのために設計した壁掛け時計のひとつである。四つ葉のクローバーを思わせる4枚のペタル(花弁)が90度間隔で並び、その一枚一枚が15分を示す。「ラッキー クローバー(Lucky Clover)」の別名で呼ばれることもある。

時刻の指標は文字ではなく真鍮のスタッドで、中央の真鍮のサークルが時針と分針を支える。有機的な輪郭と幾何学的な規則性が同居する構成は、1950年代アメリカのバイオモルフィックな造形志向をよく示している。現在はヴィトラがライセンス生産を行っている。

特徴・コンセプト

有機的造形と幾何学

4枚のペタルは滴形を基調としながら、厳密な90度間隔の放射対称に配置されている。花弁という自然のモチーフでありながら、時計としての等分割の要請を満たす形でもある。輪郭の柔らかさと配置の厳格さ、その二重性がこの時計の性格を決めている。

時刻の読み取りは、4枚のペタルが示す15分刻みと、その間に置かれた真鍮スタッドが担う。数字は一切ない。

素材と色彩

ペタル部分はMDFにブラックラッカーを施したもの。真鍮のスタッドとサークルが黒地の上に浮かび、時針・分針にはホワイトラッカー仕上げのスチールが用いられる。黒・真鍮・白という三色構成により、装飾性を保ちながら視認性が確保されている。

直径約45cmという寸法

直径は約448mm。ネルソンの時計群のなかでは中型にあたり、直径約76cmのタービン クロックやサンフラワー クロックほど壁面を選ばない。リビングの一角やダイニング、ワークスペースの壁面に無理なく収まる大きさである。

背景

1947年、ネルソンはハワード・ミラー・クロック・カンパニーから時計コレクションの設計を依頼された。ネルソンの分析はこうである。人は時刻を読むとき数字ではなく針の位置を見ており、しかも大半の人は腕時計を持っている。ならば壁掛け時計の役割は、時刻の表示よりも室内の装飾に近い。この判断から、数字を持たない時計群が生まれた。

ジョージ・ネルソン・アソシエイツはその後35年にわたり100種類を超える時計を設計し、ボール クロック、サンバースト クロック、アスタリスク クロックなど、多くのモデルを残した。ペタル クロックもこの系譜に属する一台である。

製造を担ったハワード・ミラー・クロック・カンパニーは、ミシガン州ジーランドに拠点を置く時計メーカーであり、創業者ハワード・ミラーは家具会社ハーマンミラーの社名の由来となったハーマン・ミラーの息子にあたる。家具と時計、二つの分野でネルソンとミラー家の協働が続いたことが、この時代のアメリカン・モダニズムを形づくった。

評価

ペタル クロックは、ネルソンの時計群のなかでも装飾性の強い一台として位置づけられる。幸運のシンボルを壁に掛けるという着想の軽やかさと、造形としての静けさが同居しており、コレクションのなかでは比較的落ち着いた印象を与える。

実務上の使いやすさも評価されている。モダン、コンテンポラリー、北欧、ミニマルと多様な様式に馴染み、住宅のみならずオフィスやホスピタリティ空間でも採用されている。黒と真鍮という配色が、背景の壁色を選ばないためである。

基本情報

デザイナー ジョージ・ネルソン(George Nelson)/ ジョージ・ネルソン・アソシエイツ
デザイン年 1957年頃(ヴィトラはウォールクロック・コレクション全体を1949〜1960年と表記)
オリジナルメーカー ハワード・ミラー・クロック・カンパニー(Howard Miller Clock Company)
現行メーカー ヴィトラ(Vitra)
素材 MDF(ブラックラッカー塗装)、真鍮、スチール(ホワイトラッカー塗装)
ムーブメント クォーツ(単3電池1本)
サイズ 直径 約448mm × 奥行 約76mm
カラー ブラック / 真鍮
別名 ラッキー クローバー(Lucky Clover)
スタイル ミッドセンチュリーモダン