このページについて
ボールチェアは、エーロ・アールニオが1963年に設計した椅子である。球を切り欠いた形の樹脂のシェルに、内側からクッションを張る。台座で回転する。現在はエーロ・アールニオ・オリジナルズが製造している。
このページでは、搬入と設置に要する条件、正規品とライセンスを受けていない製品との差、シェルに囲まれる座り心地、手入れ、購入できる場所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。
エーロ・アールニオの設計思想や経歴について詳しくはエーロ・アールニオ プロフィールページをご覧ください。
ボールチェアのデザインストーリーについて詳しくはボールチェア紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
ボールチェアは、1962年に独立したばかりのアールニオが新居のために「まったく新しい椅子」を創造しようと決意したことから生まれた。1963年1月11日に描かれた最初のスケッチを起点に、ヨット製造で用いられていたFRP樹脂に着目し、球体という幾何学的に最もシンプルな形態を家具に応用するという前例のない試みに挑んだ。妻ピルッコの協力を得て実物大の図面で着座時の頭部動線を記録し、サロの学校工作室で合板と濡れた新聞紙から雌型を作成して最初のプロトタイプを自ら製作した。1965年秋にアスコ社に持ち込まれたこのデザインは、マーケティング担当タパニ・リエッキネンの後押しにより1966年のケルン国際家具見本市への出展が決定。わずか一週間で30カ国以上との販売契約が成立し、世界的なデザインアイコンとなった。
| 正式名称 | Ball Chair(ボールチェア)/ 別名:Globe Chair(グローブチェア)/ フィンランド語:Pallotuoli |
|---|---|
| 製造ブランド | エーロ・アールニオ・オリジナルズ(2016年〜)。それ以前はアスコ、アデルタが製造した |
| 製造国 | フィンランド |
| シェル | ガラス繊維で強化した樹脂 |
| 脚部 | アルミニウムの鋳造。360度回転する |
| クッション | ポリウレタンのフォームに、ウール混紡の布または革を張る |
| サイズ | 幅1,100 × 奥行970 × 高さ1,200mm、座面高400mm。シェルの直径は約1,100mm |
| 重量 | 約40kg |
| 搬入条件 | 幅790mm以上の開口を通る経路が要る |
| 遮音性能 | シェルが頭の周囲を覆うため、外からの音が届きにくくなる |
| カラー展開 | 布は14色、革は2色を展開する |
| 参考価格帯 | メーカー公式で価格を公開している(2026年8月19日確認)。日本国内の価格は輸入代理店と取扱店により異なる。張り地で価格が変わり、輸入品のため為替の影響も受ける |
| 納期 | 受注生産。納期は取扱店に確認する |
| 収蔵 | V&A ボールチェア 08702(1963年) 収蔵番号 CIRC.12:1 to 3-1969 |
| 生産状況 | 現行 |
搬入と設置
この椅子を選ぶ際、最初に確かめるのは搬入の可否である。シェルは分解できない。
搬入経路
幅790mm以上の開口を通る経路が要る。玄関の扉、廊下の幅、階段の踊り場、エレベーターの寸法を実測する。
シェルの直径は約1,100mm。開口を斜めに通す場合も、この寸法が回せる余地が要る。
重量は約40kg。運搬には複数人を要する。
設置場所
幅1,100×奥行970×高さ1,200mm。台座で360度回転するため、周囲に人が通る余裕を見込んでおく。
床の耐荷重も確かめる。40kgに座る人の体重が加わる。
正規品とライセンスを受けていない製品の違い
権利者のライセンスを受けていない同型の製品が流通している。公表されている情報から確認できる差を整理する。仕様が公表されていない項目は「公表なし」と記し、推測では埋めていない。
公表されている仕様
エーロ・アールニオ・オリジナルズは、シェルがガラス繊維で強化した樹脂であること、台座がアルミニウムの鋳造で360度回転すること、寸法、重量約40kg、フィンランドでの製造、選べる張り地と色を公表している。
ライセンスを受けていない製品では、これらの仕様が公表されていない場合が多い。シェルの厚みは重量に現れる。同じ寸法でも軽ければ、樹脂の量が少ないことになる。
| 比較項目 | 正規品 | ライセンスを受けていない製品 |
|---|---|---|
| シェル | ガラス繊維で強化した樹脂(公表) | 公表なし |
| 台座 | アルミニウムの鋳造(公表) | 公表なし |
| 寸法と重量 | 直径約1,100mm、約40kg(公表) | 公表なし |
| 製造国 | フィンランド(公表) | 公表なし |
| メーカー保証 | 対象 | 対象外 |
類似商品・競合との比較
身体を包む椅子は、包む範囲と支え方で分かれる。床に置くか吊るすかによっても、設置の条件が変わる。
| 比較項目 | ボールチェア | バブルチェア | ウームチェア |
|---|---|---|---|
| 包む範囲 | 頭の周囲まで覆う | 頭の周囲まで覆う | 背面と側面 |
| 設置 | 床に置く(台座) | 天井から吊るす | 床に置く(脚) |
| シェル | 不透明 | 透明 | 張り地で覆う |
| 回転 | 360度 | 吊り下げによる | しない |
| 重量 | 約40kg | 製品による | 製品による |
選び分けの目安
- 周囲から遮られたい場合
- シェルが頭の周囲まで覆う。不透明のため視界も遮られる。透明のシェルでは、囲まれつつ外が見える。
- 設置の工事を避けたい場合
- 床に置く方式のため、天井の補強を要さない。吊り下げる方式では、天井への固定が必要になる。
- 搬入に制約がある場合
- 直径約1,100mmのシェルは分解できない。幅790mm以上の開口が要る。
使用感と設置条件
シェルに囲まれる
シェルが頭の周囲まで覆う。外からの音が届きにくくなり、視界も背面と側面が遮られる。開口は前方のみである。
そのかわり、周囲の様子が把握しにくい。人の出入りがある場所では、この点を踏まえる。
台座で360度回転するため、開口の向きを変えられる。壁に向ければ、より遮られた状態になる。
座り方
座面高400mm。シェルの内側に張ったクッションが身体を受ける。開口の縁が肘を置く高さに来る。
シェルの縁をまたいで出入りすることになる。座面高400mmに対してシェルの底部があるため、立ち座りの動作は一般的な椅子と異なる。
張り地の選択
布は14色、革は2色を展開する。シェルの外側の色は、張り地とは別に決まる。
経年変化とメンテナンス
素材ごとに起きること
ガラス繊維で強化した樹脂は、紫外線で表面の光沢が失われる。直射日光の当たる面から先に進む。
シェルの外側は塗装で仕上げられる。硬いものが当たると欠ける。欠けた箇所からは繊維が露出する。
内側のクッションは荷重で潰れる。座る位置が偏ると、その箇所だけ先に沈む。
台座の回転部は繰り返しの使用で摩耗する。
日常の手入れ
- シェルの外側
- 固く絞った布で拭ける。研磨剤は塗装を削る。
- 内側のクッション
- 張り地により手入れの方法が異なる。掃除機で埃を吸う。奥まで手が届きにくい。
- 台座
- 回転が渋くなった場合、取扱店に相談する。自分で注油しない。
どこで買うか
取扱店の調べ方
エーロ・アールニオ・オリジナルズは公式サイトで製品情報と価格を公開している。日本国内の価格は輸入代理店と取扱店により異なるため、正規取扱については輸入代理店の案内を確認するのが確実である。
注文の際に決めるのは張り地と色である。受注生産のため、納期は取扱店に確認する。
実物を確認する
シェルに囲まれる感覚と、出入りの動作は座ってみないと分からない。搬入経路の実測とあわせて、購入前に確かめておく。
中古の流通
1960年代以降の個体が流通している。製造元が時期によって異なるため、仕様にも差がある。相場は年式、製造元、状態で幅があり、一定していない。
確認箇所は、シェルの欠けとひび、塗装の状態、内側のクッションの沈みと張り地の傷み、台座の回転、床への接地部である。シェルの補修は難しい。
購入前チェックリスト
- 搬入経路(幅790mm以上の開口。シェルは分解できない)
- 運搬の人手(約40kg)
- 設置場所の寸法(幅1,100×奥行970×高さ1,200mm+回転の余地)
- 床の耐荷重
- 張り地と色(布14色/革2色)
- 周囲の様子が把握しにくいこと
- 直射日光を避けられる位置か
- 中古の場合、製造元による仕様の差とシェルの状態
よくある質問
- 価格はどのくらいですか?
- メーカー公式で価格を公開しています(2026年8月19日確認)。日本国内の価格は輸入代理店と取扱店により異なり、張り地で価格が変わります。輸入品のため為替の影響も受けます。
- どこで購入できますか?
- エーロ・アールニオ・オリジナルズの公式サイトで製品情報を確認できます。日本国内の正規取扱については輸入代理店の案内をご確認ください。
- 搬入できますか?
- 幅790mm以上の開口を通る経路が必要です。シェルは分解できず直径は約1,100mmあるため、玄関の扉、廊下の幅、階段の踊り場、エレベーターの寸法を実測してください。重量は約40kgで、運搬には複数人を要します。
- 設置に必要な寸法を教えてください。
- 幅1,100×奥行970×高さ1,200mmです。台座で360度回転するため、周囲に人が通る余裕も見込んでください。床の耐荷重もお確かめください。40kgに座る人の体重が加わります。
- 座り心地はどうですか?
- シェルが頭の周囲まで覆い、外からの音が届きにくくなります。視界も背面と側面が遮られ、開口は前方のみです。そのかわり周囲の様子が把握しにくくなるため、人の出入りがある場所ではこの点を踏まえてください。台座で360度回転するので開口の向きは変えられます。
- 立ち座りはしやすいですか?
- シェルの縁をまたいで出入りすることになります。座面高400mmに対してシェルの底部があるため、立ち座りの動作は一般的な椅子と異なります。
- 収蔵されている美術館はありますか?
- ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が収蔵しています('Ball' chair 08702、1963年、収蔵番号CIRC.12:1 to 3-1969)。
- 手入れはどうすればよいですか?
- シェルの外側は固く絞った布で拭けます。研磨剤は塗装を削ります。内側のクッションは張り地により手入れの方法が異なり、掃除機で埃を吸いますが奥まで手が届きにくくなります。台座の回転が渋くなった場合は自分で注油せず取扱店にご相談ください。