概要

レッジェーラ646は、ジオ・ポンティがカッシーナのために設計した木製の椅子である。名称はイタリア語で「軽い」を意味する。1957年のスーパーレッジェーラ699の前身にあたる。

19世紀にリグーリア州キアヴァリで製作されていた木製の椅子を出発点とする。細く削り出した支柱と、横桟を並べた背もたれで構成される。ニューヨーク近代美術館は1951年の作として、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は1951年から1952年の作として登録している。

特徴・コンセプト

支柱を細く保つ

支柱はほぼ円形の断面をとる。後継のスーパーレッジェーラが三角断面を用いるのに対し、こちらは丸みを持つ。支柱は先端へ向かって細くなる。荷重は下へいくほど大きいため、上端は細くできる。

フレームにはアッシュ材を用いる。もとになったキアヴァリの椅子はブナ材による。アッシュは繊維が長く、細い断面でも折れにくい。部材を細くするほど、この性質が効く。

座面の2つの仕様

座面にはペーパーコードを編む仕様と、張り地を施す仕様がある。ペーパーコードは荷重で撓むため、詰め物なしで座り心地が得られる。

張り仕様では、フレームにベルトを渡してウレタンの座クッションを載せる。座面の構造を変えても、支柱の断面は変わらない。

形を切り詰める

日常的に使う椅子から、構造に要らない要素を落としていくという方針をとる。装飾を加えず、部材の数と断面だけで形が決まる。

ポンティはこの方針をここで終わらせず、支柱の断面を三角形に変えたスーパーレッジェーラへ進めている。レッジェーラ646はその途中の到達点にあたる。

エピソード

キアヴァリの椅子から

出発点は、19世紀のリグーリア州キアヴァリで作られていた木製の椅子である。編んだ座面とはしご状の背もたれを持ち、軽く、安価で、丈夫であることで知られていた。

ポンティは様式を写し取るのではなく、細い部材で強度を得るという構造上の仕組みだけを取り出した。素材をブナからアッシュに替え、断面と比率を決め直している。

カッシーナとの協働の始まり

レッジェーラ646の開発は、ポンティとカッシーナの長い協働の出発点にあたる。細い部材で椅子を成立させるには、木取りと組み手の精度が要る。設計と製作の往復を重ねる進め方が、ここで定まった。

この過程で得られた知見が、5年後のスーパーレッジェーラにつながっている。

評価と影響

1957年に発表されたスーパーレッジェーラは、支柱を三角断面に変えることで1.7kgまで軽量化した。三角形は同じ断面積でも曲げに対する抵抗が大きく取れる。レッジェーラ646は円形断面のまま生産が続いている。

部材を細くして重量を抑える方向は、トリックスAチェアが板を折り曲げて剛性を得るのとは異なる。木では断面の形と樹種の選択で対応している。

受賞・収蔵

以下の収蔵が確認できる。ニューヨーク近代美術館の記録では素材はアッシュ材とセロファンのラッシュとされ、製造元からの寄贈にあたる。

  • ニューヨーク近代美術館 レッジェーラ サイドチェア(model 646、1951年) 収蔵番号 596.1953
  • ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 レッジェーラ(1951-1952年) 収蔵番号 W.4-2011

基本情報

デザイナー ジオ・ポンティ
ブランド カッシーナ
発表年 1952年(MoMAの登録は1951年)
デザインの成立国 イタリア
主要素材 アッシュ材(ナチュラル/黒塗装/白塗装)、カナレット・ウォールナット材
座面 ペーパーコード編み、または革・布の張り仕様
サイズ 幅450 × 奥行470 × 高さ870mm。座面の高さ460mm