このページについて
バレルチェアは、フランク・ロイド・ライトが1904年に設計した椅子である。背もたれが円筒状に立ち上がり、細い角材を並べて構成する。現在はカッシーナが、フランク・ロイド・ライト財団の認証を受けて製造している。
このページでは、正規品の仕様と識別、正規品とライセンスを受けていない製品との差、座り方と設置の条件、手入れ、購入できる場所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。
フランク・ロイド・ライトの設計思想や経歴について詳しくはフランク・ロイド・ライト プロフィールページをご覧ください。
バレルチェアのデザインストーリーについて詳しくはバレルチェア紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
バレルチェアの正規復刻品は、カッシーナ社の「イ・マエストリ・コレクション」に収録されるモデル606として、イタリア・メーダの自社工場において製作されている。フランク・ロイド・ライト財団の正式な認証のもと、オリジナルの設計図に忠実に再現されたこの椅子は、37の部品から構成される極めて複雑な構造を持つ。アメリカンチェリーの無垢材から切り出された3つのパーツを異なる角度で蒸気曲げし、乾燥過程で生じる張力を相殺するために2つに切断した後、再び背中合わせに接着するという高度な技術が用いられている。すべての接合部は木材に直接彫り込まれ、熟練の職人による手仕上げが施される。以下に、正規復刻品の詳細仕様を示す。
| 正式名称 | 606 バレル / 606 Barrel(タリアセン バレルチェアとも) |
|---|---|
| 製造国 | イタリア |
| ライセンス | フランク・ロイド・ライト財団の認証による |
| フレーム素材 | アメリカンチェリーの無垢材。無着色、ウォールナット色、黒の3つの仕上げから選ぶ |
| 構造 | 37の部材を蒸気で曲げて接着する。接合部は木材に直接彫り込む |
| 座面 | 円形のクッション。両面が使える。革または布を張る |
| 背もたれ | 細い角材を並べ、円筒状に立ち上げる |
| サイズ | 幅545 × 奥行520 × 高さ805mm |
| 座面高 | 480mm |
| 参考価格帯(税込目安) | カッシーナは価格を公表していない(2026年8月19日確認)。正規取扱店への問い合わせによる。木部の仕上げと張り地で価格が変わり、輸入品のため為替の影響も受ける |
| 納期 | 受注生産。納期は取扱店に確認する |
| 刻印・認証 | ブランドの刻印、通し番号、財団の認証を示す表示、設計者の署名の複製 |
| 収蔵 | 本製品の美術館収蔵は、公開情報の範囲では確認できていない。同じ設計者の他の椅子では、MoMA が Office Armchair(185.1948)ほかを収蔵している |
バレルチェアの最大の特徴は、円筒形の構造に見られる幾何学的純粋性と有機的曲線の調和にある。広がりを持つフレアバックレストは座る人を優しく包み込むように設計され、規則的に配された角材のスピンドルが背もたれを構成する。円形の両面クッションシートはどの角度からも着座が可能であり、空間における配置の自由度を高めている。ライトが追求した「自然の形態と幾何学の融合」という理念が、この一脚に凝縮されている。
正規品とライセンスを受けていない製品の違い
権利者のライセンスを受けていない同型の製品が流通している。公表されている情報から確認できる差を整理する。仕様が公表されていない項目は「公表なし」と記し、推測では埋めていない。
財団の認証
カッシーナはフランク・ロイド・ライト財団の認証を受けて製造している。正規品には財団の認証を示す表示と、設計者の署名の複製が付される。
個体の識別
正規品にはブランドの刻印と通し番号がある。番号は個体ごとに異なる。中古で選ぶ場合、これらの表示の有無で判別できる。
公表されている仕様
カッシーナは、フレームがアメリカンチェリーの無垢材であること、37の部材を蒸気で曲げて接着する構造、接合部を木材に直接彫り込むこと、寸法、選べる仕上げと張り地、イタリアでの製造を公表している。
ライセンスを受けていない製品では、これらの仕様が公表されていない場合が多い。無垢材か突板かは、背もたれの角材の木口から確認できる箇所にあたる。
| 比較項目 | 正規品(カッシーナ) | ライセンスを受けていない製品 |
|---|---|---|
| 財団の認証 | あり | なし |
| 刻印・通し番号 | あり | なし |
| フレーム | アメリカンチェリーの無垢材(公表) | 公表なし |
| 構造 | 37の部材を蒸気で曲げて接着(公表) | 公表なし |
| 製造国 | イタリア(公表) | 公表なし |
| メーカー保証 | 対象 | 対象外 |
類似商品・競合との比較
背もたれが身体を囲む椅子は、囲みをどうつくるかで性格が分かれる。細い部材を並べるか、面で覆うかによって、座ったときの当たり方と視線の抜けが変わる。
| 比較項目 | バレルチェア | CH24 ウィッシュボーンチェア | リソム ラウンジチェア |
|---|---|---|---|
| 背もたれの構成 | 細い角材を並べ、円筒状に立ち上げる | 曲げた木の笠木と1本の支柱 | 帯状のウェビングを編む |
| 身体の囲み方 | 背面から側面まで囲む | 背面と肘掛けを兼ねる | 背面のみ |
| 視線の抜け | 角材の間から抜ける | 抜ける | 帯の間から抜ける |
| 座面 | 円形のクッション(両面が使える) | ペーパーコードを編む | ウェビングを編む |
| 座面高 | 480mm | 製品による | 410mm |
選び分けの目安
- 座ったまま向きを変える場合
- 背もたれが側面まで囲むため、身体をひねる動作に制約がある。背面のみの椅子では、この制約が小さい。
- 座面を後から替えたい場合
- バレルチェアの座面はクッションで、両面が使える。片面が傷んでも裏返して使える。
- 圧迫感を抑えたい場合
- 背もたれは角材を並べた構成で、間から視線が抜ける。面で覆う椅子より、背後が見通せる。
使用感と設置条件
座り方
座面高480mm。円形のクッションを載せる。背もたれが円筒状に立ち上がり、背面から側面まで身体を囲む。
囲まれることで身体の位置が定まるいっぽう、座ったまま大きく身体をひねる動作には制約がある。食卓で用いる場合、この点を確かめる。
背もたれは細い角材を並べた構成で、間から視線が抜ける。面で覆う椅子より、背後が見通せる。
座面のクッション
円形で、両面が使える。片面が傷んだ場合、裏返して使える。革と布から選ぶ。
設置に要する寸法
幅545×奥行520×高さ805mm。背もたれが高く、一般的な食卓の椅子より上方に伸びる。並べて置く場合、背もたれの高さが視界にどう入るかを見込んでおく。
脚は4本で、背もたれの円筒が座面より外へ広がる。テーブルの下に収める場合、この張り出しを確かめる。
経年変化とメンテナンス
素材ごとに起きること
アメリカンチェリーは、日光を受けると色が濃くなる。赤みを帯びた色へ進み、経年で深まる。直射日光の当たる面から先に変化するため、置き場所によって差が出る。
37の部材を接着する構造のため、接合部が多い。湿度の変化が大きい環境では、この箇所に負担がかかる。
座面のクッションは、座る位置が偏るとその箇所だけ先に潰れる。両面が使えるため、裏返して摩耗を均せる。
日常の手入れ
- 木部
- 乾いた柔らかい布で拭く。角材の間に埃が溜まるため、柔らかい刷毛で払う。
- クッション
- 張り地により手入れの方法が異なる。掃除機で埃を吸い、ときどき裏返す。
- 置き場所
- 直射日光と暖房の風を避ける。急な乾燥は接合部に負担をかける。
どこで買うか
取扱店の調べ方
カッシーナは公式サイトで取扱店を案内している。同社は価格を公表しておらず、正規取扱店への問い合わせによる。日本国内の正規取扱については、輸入代理店の案内を確認するのが確実である。
注文の際に決める項目は、木部の仕上げ(無着色/ウォールナット色/黒)と、クッションの張り地である。受注生産のため、納期は取扱店に確認する。
実物を確認する
背もたれが身体を囲む感触は、座ってみないと分からない。食卓で用いる場合、テーブルの下に収まるかもあわせて確かめられるとよい。
中古の流通
1986年以降のカッシーナによる個体が流通している。相場は年式と状態で幅があり、一定していない。
確認箇所は、ブランドの刻印と通し番号、財団の認証を示す表示、角材の欠けと接合部の緩み、木部の色の変化、クッションの状態である。クッションは交換できる場合がある。
購入前チェックリスト
- 木部の仕上げ(無着色/ウォールナット色/黒)
- クッションの張り地(革/布)
- 設置場所の寸法(幅545×奥行520×高さ805mm)
- 背もたれの高さ(並べたときの視界への入り方)
- テーブルの下に収まるか(背もたれの円筒が座面より外へ広がる)
- 座ったまま身体をひねる動作に制約があること
- 直射日光と暖房の風を避けられる位置か
- 中古の場合、刻印と認証の表示
よくある質問
- 価格はどのくらいですか?
- カッシーナは価格を公表しておらず、正規取扱店への問い合わせによります(2026年8月19日確認)。木部の仕上げと張り地で価格が変わり、輸入品のため為替の影響も受けます。
- どこで購入できますか?
- カッシーナの公式サイトで取扱店が案内されています。日本国内の正規取扱については輸入代理店の案内をご確認ください。
- 正規品かどうかはどう見分けますか?
- 正規品にはブランドの刻印と通し番号、フランク・ロイド・ライト財団の認証を示す表示、設計者の署名の複製が付されます。番号は個体ごとに異なります。中古で選ぶ場合はこれらの表示の有無で判別できます。
- 座り心地はどうですか?
- 座面高480mmで、円形のクッションを載せます。背もたれが円筒状に立ち上がり背面から側面まで身体を囲むため、身体の位置が定まります。いっぽうで座ったまま大きく身体をひねる動作には制約があります。食卓で用いる場合はこの点をご確認ください。
- 圧迫感はありませんか?
- 背もたれは細い角材を並べた構成で、間から視線が抜けます。面で覆う椅子より背後が見通せます。
- 座面は交換できますか?
- 円形のクッションで両面が使えるため、片面が傷んだ場合は裏返して使えます。交換については取扱店にご確認ください。革と布から選べます。
- テーブルの下に収まりますか?
- 背もたれの円筒が座面より外へ広がるため、この張り出しをご確認ください。幅545×奥行520mm、高さ805mmで、背もたれが一般的な食卓の椅子より上方に伸びます。並べて置く場合は視界への入り方も見込んでおいてください。
- 手入れはどうすればよいですか?
- 木部は乾いた柔らかい布で拭きます。角材の間に埃が溜まるため、柔らかい刷毛で払ってください。クッションは掃除機で埃を吸い、ときどき裏返すと摩耗が均せます。アメリカンチェリーは日光を受けると色が濃くなるため、直射日光は避けてください。