概要
リソム ラウンジチェアは、デンマーク出身のデザイナー、イェンス・リソムが1941年にデザインしたラウンジチェアである。ハンス・ノール・ファニチャー・カンパニー(現ノール社)が初めて委託した家具コレクション「600シリーズ」の中核をなす一脚で、アメリカにスカンディナヴィアンモダンを広めた初期の作品として知られる。第二次世界大戦中の材料制限のもと、メープル材のフレームと、パラシュート製造で余ったウェビングを組み合わせて作られた。
ヨーロッパ製家具の輸入を手がけていたハンス・ノールは、戦争で供給が途絶えることを見越し、アメリカ国内で生産できるオリジナル家具のデザイナーを探していた。一方リソムは自作を販売してくれる相手を求めており、1941年に二人は出会う。アメリカ各地を巡る調査旅行を経て、1942年に最初のノールカタログが発行され、リソムによる15点の家具が掲載された。
特徴・コンセプト
戦時下の制約から生まれた設計
リソム ラウンジチェアの特徴は、戦時中の材料不足という制約を逆手に取った点にある。多くの材料が軍事用に転用されるなか、リソムは、規格に満たず破棄される予定だったパラシュート用のウェビングに着目し、座面と背もたれの素材として用いた。
フレームには入手しやすいメープル材を使用している。リソムは自らのデザインを「非常に基本的で、シンプルで、安価で、作りやすい」と評した。限られた資源を活かしつつ、美しさと機能性を保つ設計となっている。
スカンディナヴィアンモダンの造形
リソム ラウンジチェアには、リソムがアメリカに持ち込んだスカンディナヴィアンデザインの造形が表れている。柔らかな曲線と幾何学的な角度を組み合わせ、北欧デザインに見られる有機的なフォルムと構造の明快さを併せ持つ。フレームの各部材はほぞ組み(モルティスアンドテノン)で接合され、金属の留め具を使わない木工技術で組み上げられている。
ウェビングは交差するように編み込まれ、バスケット織りのパターンを形成する。この編み方により、座面と背もたれは適度な弾力と通気性を持ち、長時間の使用でも快適性を保つ。
現代の仕様
このチェアのデザインは、80年以上を経た現在もノール社で生産が続けられている。現行品では、オリジナルの素材に加えてサンブレラ素材を用いたアウトドア版や多様なカラーのウェビングが展開され、フレーム材もメープルに加えてウォルナットやエボナイズド(黒染め)仕上げが選べる。本質的なデザインは変えずに、現代のインテリアに対応する選択肢が用意されている。
収蔵と評価
リソム ラウンジチェアは、アメリカにスカンディナヴィアンモダンを紹介した初期の作品として評価されている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションには、レザーウェビングを用いた1941年製のモデル650(Low Lounge Chair)が、デザイナー本人からの寄贈として収蔵されている(受入番号1424.2001)。
第二次世界大戦後、リソムは1946年に独立して自身の会社を設立した。1997年にはノール社が1940〜50年代のリソムのデザインを再発売し、ミッドセンチュリーモダン家具への関心が高まるなかで、その作品はあらためて注目を集めた。
基本情報
| 名称 | リソム ラウンジチェア |
|---|---|
| 英語名 | Risom Lounge Chair |
| デザイナー | イェンス・リソム(Jens Risom) |
| デザイン年 | 1941年 |
| 製造開始年 | 1942年 |
| メーカー | Knoll(ノール) |
| シリーズ | 600シリーズ |
| モデル番号 | 650(ローラウンジチェア)ほか |
| フレーム素材 | メープル材(クリア仕上げ、エボナイズド仕上げ)、ウォルナット材 |
| 張地素材 | コットンウェビング、ナイロン/コットンブレンドウェビング、サンブレラウェビング(アウトドア版) |
| 構造方式 | ほぞ組み(モルティスアンドテノン)工法 |
| 寸法(アームレス版) | 幅51cm × 奥行71cm × 高さ77cm(座面高41cm) |
| 寸法(アーム付版) | 幅60cm × 奥行70cm × 高さ77cm(座面高約41cm) |
| コレクション収蔵 | MoMA(ニューヨーク近代美術館、モデル650・1941年、受入番号1424.2001) |
| 認証 | GREENGUARD認証 |
| 現行製造 | Knoll(1997年リイシュー以降継続生産) |