リソム ラウンジチェア 購入ガイド ─ この名作が長く愛される理由
リソム ラウンジチェアは、デンマーク出身のデザイナー、イェンス・リソム(1916–2016)が1941年にデザインした、アメリカにおけるスカンディナヴィアンモダンデザインの先駆けとなった記念碑的作品である。ハンス・ノール・ファニチャー・カンパニー(現ノール社)が初めて委託した家具デザインの一つであり、第二次世界大戦中の材料不足という困難な状況下で、パラシュート工場の余剰ウェビングとメープル材の端材から生み出された。1950年代のIKEA上陸に遥かに先立ち、スカンディナヴィアンデザインの美学をアメリカ人の暮らしに紹介したこの椅子は、MoMAの永久コレクションに収蔵され、80年以上を経た現在もノール社から継続生産されている。
本ガイドでは、ノール社正規品の仕様とフレーム・ウェビングの選び方、座り心地と空間への取り入れ方、ウェビングのメンテナンスと交換、そして日本国内での購入ルートを包括的に解説する。
イェンス・リソムの設計思想や経歴について詳しくはイェンス・リソム プロフィールページをご覧ください。
リソム ラウンジチェアのデザインストーリーについて詳しくはリソム ラウンジチェア紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
リソム ラウンジチェアは、1997年のリイシュー以降、ノール社(Knoll)がアメリカで継続生産している。KnollStudioのロゴとデザイナーのサインが刻印された正規品であり、GREENGUARD認証を取得した持続可能な製造プロセスにより生産されている。リソムのオリジナルの設計思想を忠実に尊重しながら、現代の生活に適合する素材オプションが追加されている。
| 正式名称 | Risom Lounge Chair(リソム ラウンジチェア)/ 600シリーズ |
|---|---|
| デザイナー | イェンス・リソム(Jens Risom、1916–2016、デンマーク生まれ・アメリカ在住) |
| デザイン年 | 1941年(1942年発売、1997年リイシュー) |
| 製造 | Knoll(ノール)、アメリカ製 |
| フレーム素材 | セレクトメープル(クリア仕上げ / エボナイズド仕上げ)またはライトウォルナット、いずれもクリアラッカー仕上げ |
| フレーム構造 | ほぞ組み(モルティスアンドテノン)工法。金属製留め具不使用 |
| ウェビング(コットン) | 100%天然コットンウェビング。10色:オーバジーン、ブラック、ダークグレー、フラックス、フォレストグリーン、カーキ、メイズ、ネイビー、レッド、スティールブルー |
| ウェビング(ナイロン/コットン) | ナイロン60%・コットン40%ブレンド、汚れ防止加工。6色:ブルーベリー、ユーカリ、リコリス、トマト等 |
| ウェビング(アウトドア) | サンブレラ®(アクリル87%・ポリエステル13%)。UV/退色耐性、撥水、漂白洗浄可能 |
| サイズ(アームレス) | W510mm × D710mm × H770mm / 座面高410mm |
| サイズ(アーム付き) | W600mm × D690mm × H740mm / 座面高390mm / アーム高560mm |
| 重量 | 約8kg(インドア版)/ 約5.9kg(アウトドア版チェア) |
| 組立 | 不要(完成品納品) |
| 保証 | インドア版:5年 / アウトドア版:1年 |
| 認証 | GREENGUARD認証(持続可能な素材・製造) |
| 参考価格帯(税込目安) | アームレス:約250,000〜350,000円 / アーム付き:約350,000〜450,000円(フレーム・ウェビングにより変動) |
| 収蔵美術館 | MoMA(ニューヨーク近代美術館)、イェール大学アートギャラリー、ブルックリン美術館 |
バリエーション
- アームレス ラウンジチェア(モデル654L)
- コレクションの中核モデル。アームレストのない開放的なフォルムは、様々な空間に柔軟に適応する。W510mm × D710mm × H770mm。軽量で移動が容易。
- アーム ラウンジチェア(モデル654LA)
- アームレスト付きバージョン。シートバスケットがアームフレームに不可視のスクリューで取り付けられ、安定感のある座り心地を提供。W600mm × D690mm × H740mm。
- コントラクト版
- 商業施設向けの強化版。座面下部にソリッドウッドのストレッチャー(補強材)を追加し、高頻度使用に対応。フレーム仕上げに合わせた補強材。
- リソム アウトドア ラウンジチェア
- オリジナルコレクションを屋外使用向けに再設計。オイル仕上げのチーク材フレームとサンブレラ®ウェビングの組み合わせ。チークは経年により銀色のパティナを形成。UV耐性、撥水、汚れ耐性を備える。
- リソム オットマン
- ラウンジチェアに合わせた専用オットマン。足を上げた状態でのリラクゼーションを提供。インドア版・アウトドア版の両方が用意されている。
- リソム サイドチェア / スツール
- 600シリーズには、ダイニング向けのサイドチェア(モデル666C)やスツール(モデル667)も含まれ、統一されたデザイン言語で空間を構成可能。
フレームとウェビングの選び方
- クリアメープル × フラックス / カーキ
- 最もオリジナルに近い組み合わせ。メープルの明るい木肌とナチュラルなウェビングの温かみが、スカンディナヴィアンモダンの美学を忠実に表現する。北欧テイストのインテリアに最適。
- ウォルナット × ブラック / ダークグレー
- ウォルナットの深い色味とダークトーンのウェビングにより、よりコンテンポラリーでシックな印象。モダンなリビングや書斎に調和する。
- エボナイズドメープル × レッド / ネイビー
- 黒染めメープルにビビッドなウェビングを合わせることで、大胆なコントラストが生まれる。アクセントチェアとして空間の焦点となる組み合わせ。
- チーク(アウトドア)× サンブレラ
- 屋外使用に特化した組み合わせ。チークの耐候性とサンブレラの耐UV・撥水性能により、テラスやプールサイドでの長期使用が可能。チークは時間とともに銀色のパティナを形成し、屋外空間に風格を与える。
類似作品・競合との比較
リソム ラウンジチェアは、ノール社の独占製品であり、リプロダクト製品は流通していない。ここでは、同時代のウェビングチェアや類似のアプローチを持つ名作との比較を通じて、選択の指針を示す。
| 比較項目 | リソム ラウンジチェア(Jens Risom / Knoll) | CH25 ラウンジチェア(Hans J. Wegner / Carl Hansen) | Flag Halyard Chair(Hans J. Wegner / PP Møbler) |
|---|---|---|---|
| デザイン年 | 1941年 | 1950年 | 1950年 |
| フレーム素材 | メープル / ウォルナット / チーク(アウトドア) | オーク / ウォルナット | クロームスチール + フラッグライン(旗揚げロープ) |
| シート素材 | コットン / ナイロンブレンド / サンブレラ ウェビング | ペーパーコード | フラッグハリヤード(旗揚げロープ)+ シープスキンクッション |
| 構造 | ほぞ組み、金属不使用 | ほぞ組み、伝統的ジョイナリー | スチールフレーム + ロープ巻き |
| アウトドア対応 | あり(チーク + サンブレラ) | なし | なし |
| ウェビング交換 | ノール社純正リウェビングキットあり | ペーパーコード張り替え可能(専門業者推奨) | フラッグライン張り替え可能(PP Møbler対応) |
| 参考価格帯(税込目安) | 約250,000〜450,000円 | 約400,000〜600,000円 | 約1,500,000〜2,000,000円 |
リソムの独自性は、アメリカで生まれたスカンディナヴィアンデザインという出自と、アウトドア版を含む幅広い展開にある。CH25がデンマークのペーパーコード伝統を体現し、Flag Halyard Chairがウェグナーの彫刻的実験の極致であるのに対し、リソムは「非常に基本的で、非常にシンプルで、安価で、作りやすい」というリソム自身の言葉通り、民主的で親しみやすいモダンデザインの象徴である。また、ウェビングの色やフレーム材の組み合わせによる豊富なカスタマイズ性は、他の名作には見られない特徴である。
使用感と暮らしへの取り入れ方
座り心地
リソム ラウンジチェアのウェビングは、フレームに対してバスケット織りのパターンで交差するように編み込まれ、身体の重みに応じて適度にしなる。この弾力性が、クッション材を使用せずにハンモックのような柔らかな座り心地を実現している。通気性にも優れ、夏場でも蒸れにくい。座面高410mm(アームレス版)は、一般的なソファと同程度の高さであり、立ち座りも自然に行える。
アーム付きバージョンでは、木製のアームレストが安定した支持を提供し、読書時の肘掛けや立ち上がる際の支えとして機能する。約8kgという軽量さは、室内での移動や模様替えを容易にする。
空間別の提案
- リビングルーム
- クリアメープル × フラックスの組み合わせは、北欧テイストのリビングに自然に溶け込む。ソファの傍にアクセントチェアとして配置すれば、空間にデザイン史の奥行きを加える。ウォルナット × ダークカラーは、ミッドセンチュリーモダンのインテリアに最適。
- 書斎・ワークスペース
- アームレスのコンパクトなフォルムは、デスク傍の読書チェアとして最適。軽量で必要に応じて容易に移動でき、来客時のサイドチェアとしても機能する。ウェビングの通気性は、長時間の読書でも快適。
- テラス・バルコニー
- アウトドア版のチーク × サンブレラの組み合わせにより、屋外空間にミッドセンチュリーの洗練を持ち込める。チークの耐候性は数世代にわたり、ほぼメンテナンスフリー。オットマンと組み合わせれば、屋外の究極のリラクゼーションスポットが完成する。
- 寝室
- ベッドサイドのパーソナルチェアとして、就寝前の読書やくつろぎに。ウェビングの織りなす陰影が、間接照明のもとで美しいテクスチャーを生み出す。
経年変化とメンテナンス
ウェビングのケア
- コットンウェビング
- 定期的にブラシで汚れを払い落とす。汚れが目立つ場合は、掃除機で吸い取る。シミが付いた場合は、ステインリムーバーを使用し、目立たない部分でテストした上で、シミに向かって円を描くように優しく処理する。コットンは液体を吸収しやすいため、飲み物のこぼれには速やかに対処する。
- ナイロン/コットンブレンドウェビング
- 汚れ防止加工が施されているため、日常のメンテナンスはコットンよりも容易。湿った布で拭き取りが可能。食事をしながら座ることが多い場合に推奨される。
- サンブレラ®ウェビング(アウトドア版)
- 漂白洗浄が可能で、UV耐性、撥水性を備える。屋外での長期使用にも退色しにくい。汚れた場合は、中性洗剤を薄めた水で洗浄可能。
ウェビングの交換
長年の使用によりウェビングが伸びたり劣化した場合、ノール社から純正のリウェビングキットが購入可能である。キットにはモデルごとに適合するウェビングが含まれ、好みの色への変更も兼ねた張り替えが行える。ノールの正規販売店やDesign Within Reach等の正規小売店を通じて注文可能。張り替え作業は比較的シンプルで、DIYで行うユーザーも多いが、確実な仕上がりを求める場合は専門業者への依頼が推奨される。
フレームのケア
メープル、ウォルナットともにクリアラッカー仕上げのため、柔らかい乾いた布で定期的に拭く。水分の付着は速やかに拭き取る。直射日光の長時間照射は木材の退色につながるため避ける。チーク材(アウトドア版)は、経年により銀色のパティナを形成する。これは自然な経年変化であり、チーク特有の風格として楽しめる。オイルを塗布すればオリジナルの色味を維持できるが、メンテナンスフリーでのパティナ形成を好む所有者も多い。
どこで買うか:正規販売店と購入方法
2025年春、ノール ジャパン株式会社は東京・青山一丁目の直営ショールーム(2018年開設)の営業を終了し、法人を解散した。このため、日本国内でのリソム ラウンジチェアの購入は、ノール社正規取扱店またはノール公式オンラインストア(海外)を通じて行うこととなる。
Knoll公式オンラインストア
ノール社の公式オンラインストア(knoll.com)では、リソム ラウンジチェアの全モデル・全フレーム仕上げ・全ウェビングカラーから選択可能。受注生産品は通常6〜8週間で出荷。日本への直接配送については、ノール社に問い合わせが必要。米国定価はアーム付きラウンジチェアで約$2,784(2024年時点)。
日本国内の正規取扱店
- FLYMEe(フライミー)
- 日本最大級のデザイナーズ家具通販サイト。Knoll(ノール)の正規取り扱いがあり、リソム ラウンジチェアを含むKnollStudio製品をオンラインで注文可能。
- designshop(デザインショップ)
- Knoll正規取扱店。オンラインでの購入が可能。税込8,800円以上送料無料。
- Comfort Q(コンフォートキュー)
- Knoll正規取扱店。リソムを含むKnoll製品を取り扱い。
- 海外正規販売店経由
- Hive Modern、2Modern、Lumens、Design Within Reach等のノール正規小売店から国際配送が可能。受注生産品は返品・キャンセル不可の場合が多いため、事前に条件を確認すること。
ヴィンテージ市場
1942年から1960年代のオリジナルヴィンテージ品は、コレクターズアイテムとして価値がある。MoMAに収蔵されたモデル650(レザーウェビング仕様)は1941年製であり、初期の作品は特に希少。ヴィンテージ品購入時は、ほぞ組みの状態とフレームの構造的健全性を確認し、ウェビングは純正キットで張り替えることで、現代の生活で快適に使用できる状態に復元可能である。
購入時チェックリスト
- モデルの選択(アームレス / アーム付き / アウトドア版)
- フレーム仕上げの選択(クリアメープル / エボナイズドメープル / ライトウォルナット / チーク[アウトドア])
- ウェビング素材の選択(100%コットン[10色] / ナイロン/コットンブレンド[6色] / サンブレラ[アウトドア])
- 正規品であることの確認(KnollStudioロゴ、デザイナーサイン刻印)
- オットマンの追加購入の検討
- 設置場所の確認(アームレスW510mm × D710mm、アーム付きW600mm × D690mm)
- アウトドア使用の場合:チーク材のパティナ形成を許容するか、オイルメンテナンスで色味を維持するかの方針決定
- リウェビングキットの入手先確認(長期使用に備えて)
- 受注生産品のリードタイム確認(通常6〜8週間)
- ノール ジャパン解散後の日本国内サポート体制の確認
コーディネート事例
スカンディナヴィアン・ウォームス ── リソムの精神
クリアメープル × フラックスのリソム ラウンジチェアを、フィン・ユールのチーフテンテーブルやボーエ・モーエンセンのスパニッシュチェアとともに配する。いずれもデンマークの伝統的なクラフツマンシップと木材への敬意を共有する作品であり、北欧デザインの系譜が空間に連なる。ナチュラルなリネンカーテンとオーク材のフローリングが、ウェビングの有機的テクスチャーと美しく調和する。
アメリカン・ミッドセンチュリー ── 1942年カタログの世界
ウォルナット × ブラックのリソムを、ノール社の他の名作── サーリネンのチューリップテーブル、ベルトイアのサイドチェア、バルセロナチェア── とともに配する。ノールの歴史そのものを空間に構成するこのアプローチは、リソムが「最初のノールデザイナー」としてアメリカにモダンデザインを持ち込んだ記念碑的な物語を体現する。ジョージ・ネルソンのバブルランプが、時代の空気感を添える。
アウトドア・リビング ── チークの風格
チークフレーム × サンブレラウェビングのアウトドア版リソムを、テラスやデッキに配する。同じノール社のリチャード・シュルツ1966コレクション(アウトドア家具の先駆的シリーズ)とともに、屋外空間にミッドセンチュリーの洗練を構築する。チークのパティナが進むにつれ、自然と一体化する趣深い景観が生まれる。
よくある質問
- 正規品の価格はどのくらいですか?
- アームレスラウンジチェアが約250,000〜350,000円、アーム付きラウンジチェアが約350,000〜450,000円が税込目安です(フレーム仕上げ・ウェビング素材により変動)。米国定価はアーム付きで約$2,784です。最新価格はノール公式サイトまたは正規取扱店でご確認ください。
- どこで購入できますか?
- Knoll公式オンラインストア(knoll.com)、日本国内ではFLYMEe、designshop、Comfort Q等のノール正規取扱店で購入可能です。なお、ノール ジャパン青山ショールームは2025年春に営業を終了しています。
- 実物を確認できますか?
- ノール ジャパン直営ショールームの閉鎖後、日本国内で実物を常設展示している場所は限られています。FLYMEe等の正規取扱店に展示状況をお問い合わせください。海外ではKnollの北米ショールーム(20拠点以上)やDesign Within Reach店舗で確認可能です。
- 納期はどのくらいですか?
- 受注生産品の場合、通常6〜8週間で出荷されます。一部の在庫品は即時出荷可能です。日本への国際配送の場合、さらに1〜2週間を見込んでください。
- ウェビングは張り替えられますか?
- ノール社から純正のリウェビングキットが購入可能です。モデルごとに適合するキットが用意されており(例:654L-KIT-[カラーコード])、好みの色への変更も可能です。ノールのショールームまたは正規小売店を通じて注文できます。DIYで張り替えるユーザーも多いですが、確実な仕上がりを求める場合は専門業者への依頼をお勧めします。
- コットンとナイロン/コットンブレンド、どちらが良いですか?
- 100%コットンはオリジナルに最も近い素材感と触感を提供し、カラーバリエーションも10色と豊富です。ナイロン/コットンブレンドは汚れ防止加工が施されており、日常的な使用で汚れが気になる方に適しています。質感はコットンよりやや滑らかで光沢があります。用途と好みに応じてお選びください。
- メンテナンスは大変ですか?
- ウェビングの日常メンテナンスはブラッシングや掃除機がけが基本で、特別な手入れは不要です。フレームのほぞ組み構造は金属留め具を使用しないため、経年での緩みが少なく、堅牢性を長期にわたり維持します。ウェビングの張り替えにより、チェア全体を再生できる点も長期使用の利点です。
- 他に検討すべきラウンジチェアはありますか?
- ウェビング構造の名作として、ウェグナーのCH25(Carl Hansen)やFlag Halyard Chair(PP Møbler)、アアルトのウェビングチェア41(Artek)が比較対象となります。また、同じノール社のワシリーチェア(Marcel Breuer)やバルセロナチェア(Mies van der Rohe)も、異なるアプローチのラウンジチェアとして検討に値します。
Knollの全コレクションについてはノール ブランドページをご覧ください。