概要

イェンス・リソム(1916-2016)は、デンマーク出身でアメリカで活動した家具デザイナーである。1941年、ハンス・ノルの依頼でノル社の最初の製品群を設計した。戦時中の材料統制のもと、余剰の落下傘用ウェビングを座面に用いた椅子がその代表にあたる。1946年に自身の会社を設立している。

バイオグラフィー

1916年5月8日、コペンハーゲンに生まれた。父スヴェン・リソムは建築家である。コペンハーゲンの美術工芸学校で家具の設計を学び、1938年に修了している。

1939年にアメリカへ渡り、ニューヨークで働いた。1941年、ハンス・ノルと出会い、ノル社の最初の製品群を設計している。

1943年から1946年まで従軍した。復員後、1946年にジェンズ・リソム・デザインを設立している。

同社では事務用と住宅用の家具を製造し、1970年代まで続けた。2016年12月9日、100歳で没している。

デザインの思想と方法

1941年のアメリカは戦時下にあり、金属と良質な木材は軍需に優先された。リソムが設計したのは、この統制のもとで作れる家具である。入手できる材料から構成を決めるという順序をとる。

余剰の材料を使う

落下傘用のウェビングは、軍需で使われなかった余剰分が入手できた。これを座面と背に張れば、詰め物も金属のばねも要らない。材料の調達の条件が、そのまま構成を決めている。

帯を織って面をつくる

ウェビングを縦横に織り、木の枠に張る。帯は荷重でたわみ、身体に沿う。面としては連続していないが、間隔が狭ければ支えられる。

木の枠を単純に保つ

枠はカバやメープルの角材で構成し、接合は最小限にする。加工が単純なため、限られた設備でも作れる。

事務用の家具を扱う

1946年に設立した自社では、事務用の家具も製造した。住宅用とは使用頻度と耐久性の条件が異なるため、構成も変わる。

代表作にみる方法

ラウンジチェア 650(1941年、ノル)

木の枠に落下傘用のウェビングを縦横に織って張った椅子である。詰め物も金属のばねも持たない。戦時下の材料統制のもとで、余剰の材料から構成が決まっている。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号1424.2001)。→リソム ラウンジチェア

ノル社の最初の製品群(1941年)

ハンス・ノルの依頼で設計した15点あまりの家具である。同社の最初の製品群にあたる。いずれも入手できる材料から構成を決めている。

ジェンズ・リソム・デザインの家具(1946年〜)

自社で製造した住宅用と事務用の家具である。木の枠と単純な接合という構成が共通する。

事務用の家具

使用頻度と耐久性の条件が住宅用とは異なる。部材の断面と接合の方法がこれに応じて変わる。

評価と影響

リソムは一般に、20世紀中期のアメリカの家具設計を担った一人と評価されている。デンマークで学んだ設計の方法を、アメリカの生産条件で適用した立場にあたる。

1941年のノル社の最初の製品群は、同社の出発点にあたる。戦時下の材料統制という条件が、構成を規定している。

1946年に設立した自社は1970年代まで続いた。ラウンジチェア650は現在もノルが生産している。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。

  • MoMA ロウ ラウンジチェア(モデル650、1941年) 収蔵番号 1424.2001

V&A、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。

作品一覧

区分 作品名 ブランド
1941年 椅子 リソム ラウンジチェア Knoll
1941年 家具 ノル社の最初の製品群 Knoll
1946年 会社 ジェンズ・リソム・デザイン 設立 アメリカ
1946-1970年代 家具 住宅用・事務用の家具 Jens Risom Design

プロフィール

生没年 1916年5月8日〜2016年12月9日
出身地 デンマーク・コペンハーゲン
国籍 デンマーク(のちアメリカ)
活動拠点 ニューヨーク、コネチカット州
分野 家具
主な協働ブランド Knoll、Jens Risom Design

Reference

Jens Risom | Knoll
https://www.knoll.com/designer/Jens-Risom
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325