概要

コーンチェアは、ヴェルナー・パントンが1958年に設計した椅子である。円錐を逆さに立て、その上半分を切り欠いて背もたれとする。

デンマークの食堂の改装のために設計され、同年にプラス・リニエが量産を始めた。同社の消滅後は生産が途絶えたが、2004年からヴィトラが製造している。

特徴・コンセプト

円錐を逆さに置く

椅子は通常、座面・背もたれ・脚を別の部材として組む。この椅子は円錐という一つの立体から座面と背もたれの両方を取り出す。

円錐は頂点を下にして立つ。上面の半分を残せば背と肘掛けを兼ねる面になり、切り欠いた側から座る。座る位置と支える構造が同じ形の中に収まっている。

パントンは後年、この構成について、一から考えるなら円錐のほうが4本脚の椅子より単純だと述べている。ただし頂点と台座の接続部には荷重が集中するため、ヴィトラはこの部分に高い強度と素材の質が求められると説明している。単純な形を成り立たせるための負担が、一点に寄せられている。

接地点を1つにする

頂点が下を向くため、床に接するのは台座だけになる。4本脚のように床面に部材が広がらない。

台座はステンレス鋼の薄い十字形で、その上で本体が回る。座る向きが固定されないため、椅子の正面という概念が薄い。円錐という形が、そのまま回転という機能につながっている。

本体の素材

本体は全面を張り地で覆う。食堂向けの初期の製作では、内装に用いた5種類の赤がそのまま椅子の色になった。

現行のヴィトラ製では、本体をガラス繊維強化プラスチックのシェルとし、ポリウレタンフォームを薄く張って布または革で覆う。座面のクッションは交換できる。台座はステンレス鋼のサテン仕上げか粉体塗装から選ぶ。

幾何形態から始める

身体の輪郭から形を導くのではなく、単純な立体を先に決めてから座れるようにするという順序をとる。

この進め方は、以後のパントンの家具にも繰り返し現れる。同じ円錐からは背のないコーンスツールが派生し、その翌年には上部を左右に広げたハートコーンチェアが設計された。

エピソード

父の食堂のために

1958年、パントンは父が経営するフュン島の食堂「Kom Igen」の増築と内装の全面改装を任された。設計の範囲は建物にとどまらず、織物、絨毯、照明、家具、給仕の制服、品書きにまで及んでいる。

全体は5種類の赤だけで構成された。コーンチェアはこの計画のために設計され、当初は島内の小さな鍛冶の工房で製作されている。

開店の日に

ヴィトラの記述によれば、開店の受付の場で、デンマークの企業家パーシー・フォン・ハリング=コッホがこの椅子に関心を示した。彼はほどなく、この椅子を量産するためにプラス・リニエを設立している。

食堂向けの少数の製作にとどまるはずだった椅子が、同じ年のうちに量産へ移った。1967年からはドイツのゲブリューダー・ネールもライセンス生産を行っている。

天井から吊るす

1959年、フレデリシアの見本市クーベステウネの会場設計を任されたパントンは、混雑のなかで来場者が互いの背中しか見られないことを理由に、コーンチェアを含む家具を天井に吊るして展示した。ヴィトラによれば、この展示は報道で正気を疑われ、同業者からも理解を得られなかった。

1990年代の改訂

1990年代の初め、パントンは自ら改訂版を検討し、1994年にドイツのポリテーマから発表した。本体をアクリル樹脂または革で作れるようにし、十字形の台座を円盤または5本の曲げたスチールパイプに置き換えている。素材の変更に伴い、円錐の形そのものにも変化が生じた。

評価と影響

一般的に、パントンの造形言語の出発点にあたる椅子として扱われている。単純な立体をそのまま座面として使うという方向が、以後の仕事に引き継がれた。

ハートコーンチェア、コーンスツール、卓など、同じ構成による系列が展開されている。

基本情報

デザイナー ヴェルナー・パントン
ブランド ヴィトラ(2004年〜。当初はプラス・リニエ)
発表年 1958年
デザインの成立国 Denmark
主要素材 ガラス繊維強化プラスチック、ポリウレタンフォーム、張り地(布または革)、ステンレス鋼
座面高 480mm(現行ヴィトラ製)
台座 十字形。本体が回転する
系列 ハートコーンチェア、コーンスツール、卓

Reference