CH445 ウイングチェアの概要

CH445 ウイングチェアは、デンマークの家具デザイナー ハンス・J・ウェグナーが1960年に手がけたラウンジチェアである。伝統的なウイングバックチェアの様式を継承しながら、モダニズムの造形を取り入れた一脚で、ウェグナーが追求した機能美を示す作品のひとつとして知られている。

発表当時はごく少数のみが製作されたが、2006年にカール・ハンセン&サンがウェグナーのオリジナル図面に忠実に復刻し、再び生産されるようになった。復刻の際には当時の製作技法と素材が可能な限り再現され、手縫いのパイピングやビーチ無垢材のフレームなど、オリジナルの品質が受け継がれている。

全体を包む張り加工、彫刻的なシルエット、そしてステンレススチールの細身の脚部が対比をなす造形が、この椅子の特徴である。ウェグナーの素材理解と手仕事に支えられた一脚として、長く親しまれている。

デザインの特徴とコンセプト

CH445 ウイングチェアの最も際立つ特徴は、背もたれ上部から両翼のように張り出したウイング(翼)の造形にある。この翼は装飾であると同時に、着座者の肩、首、頭部を包み込むように支え、長時間の読書や寛ぎの時間において姿勢を保つ機能を担っている。背もたれの角度とショルダーグルーヴ(肩の溝)は、さまざまな着座姿勢に対応するよう設計されている。

内部のフレームにはFSC認証を受けた森林から調達されたビーチ無垢材が用いられ、堅牢な構造体を形成している。張り地の形状と密度は、身体の各部位を支えるよう設計されており、座面から背面にかけての一体的なデザインが、背中・肩・首・頭を包み込む。

脚部には手仕上げのブラッシュドステンレススチールが用いられている。前脚がわずかに前方へ傾斜し、後脚が大きく後方へ張り出す構成により、リクライニング姿勢でも安定性が確保されている。上部の椅子本体と脚部フレームは、4つの小さなスチール製コーン状のエレメントで接合されており、構造的な剛性と視覚的な軽やかさを両立させている。各脚の先端にはスチール製のシューが取り付けられ、床面での滑りを防いでいる。

誕生と復刻のエピソード

CH445は、ウェグナーが1960年にスケッチを描き起こしたことに始まる。しかし当時、この椅子が量産に移行することはなく、ごく限られた数のみが職人の手によって製作された。その精緻な構造と張り加工の難易度が、量産への移行を難しくしたと考えられている。

時を経て2006年、カール・ハンセン&サンがウェグナーのオリジナル図面を読み解き、当時の製作技法を可能な限り踏襲する形で復刻した。復刻にあたっては、ビーチ無垢材のフレーム構造、手縫いのパイピング、ステンレススチール脚部の手仕上げなど、オリジナルの品質基準が再現されている。

この復刻は注目を集め、同年ドイツ・ケルンで開催された国際家具見本市 IMM Cologne 2006 において、CH445はクラシック・イノベーション・アワードにノミネートされた。半世紀近くを経た設計が現代の評価を受けたことは、ウェグナーの仕事の先見性を示している。

評価と受賞歴

CH445 ウイングチェアは、ハンス・J・ウェグナーの作品のなかでも、彫刻的な造形と座り心地を両立させた一脚として評価されている。ウェグナーのイージーチェアのなかでも、静けさと均整のとれたプロポーションをもつ作品として知られている。

復刻後の主要な評価としては、IMM Cologne 2006におけるクラシック・イノベーション・アワードへのノミネートが挙げられる。

CH445は住宅用途にとどまらず、ホテルのラウンジや企業のオフィスなど、品格が求められる空間でも用いられている。

基本情報

正式名称 CH445 ウイングチェア / CH445 Wing Chair
デザイナー ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner / 1914–2007 / デンマーク)
デザイン年 1960年
復刻年 2006年(カール・ハンセン&サンによる)
製造ブランド Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン / デンマーク)
製造国 デンマーク
カテゴリ ラウンジチェア
主要素材 フレーム:ビーチ無垢材(FSC認証)/ 脚部:ブラッシュドステンレススチール / 中材:ウレタンフォーム / 張り地:ファブリックまたはレザー
サイズ W900 × D900 × H1030 mm / 座面高 390 mm / アーム高 600 mm
重量 約36 kg
張り地オプション Kvadrat Divina Melange、Kvadrat Fiord、Mood、Passion(ファブリック)/ Thor、Loke(レザー)ほか
オプション CH446 フットスツール(別売)
保証 5年間(室内家具)
受賞歴 IMM Cologne 2006 クラシック・イノベーション・アワード ノミネート