20世紀半ばの北米を中心に展開した建築・家具・グラフィックの造形を、後年になって束ねて呼ぶための語。同時代の運動名ではない。
ミッドセンチュリーモダン
ミッドセンチュリーモダンとは、20世紀半ばの北米を中心に展開した建築・家具・グラフィックの造形をまとめて指す語のこと。略してMCMとも書く。
解説
この語が指す期間には幅があり、おおむね1930年代半ばから1960年代半ばまでとされることが多い。ただし論者によって始点も終点も動く。境界が曖昧なのは、これが同時代の当事者が名乗った運動名ではないためである。宣言も綱領も存在せず、後年になって回顧的に束ねられた分類だという点が、バウハウスのような実体をもつ組織との違いである。
語自体は1950年代の印刷物にも現れており、辞書の記録では1953年の用例が最初とされる。ただし使用は十年に一、二度という程度で、デザインの語彙として定着したのは1984年に刊行されたカーラ・グリーンバーグの著書『Mid-Century Modern: Furniture of the 1950s』以降である。著者自身も、語を発明したかどうかは分からないが広めたのは自分たちだと述べている。なお、この本が扱った範囲は1947年から1957年までと狭く、現在この語が指す期間はそれより前後へ広がっている。書名が先にあり、対象が後から膨らんだ語だといえる。
造形上の共通点として挙げられるのは、装飾を削ぎ落とした構成、直線と有機的な曲線の併用、脚を細く見せて床を空ける扱いなどである。素材の面では、成形合板、ファイバーグラス、アルミニウムといった、戦時中に軍需で発達した加工技術の民生転用が大きな役割を果たした。エーロ・サーリネンのチューリップチェアは、樹脂の殻と鋳造アルミの支柱を組み合わせ、四本脚が床面に生む線を一本にまとめた例である。こうした試みが成立した背景には、戦後アメリカの住宅供給と可処分所得の伸びが、量産を前提とした家具の市場をつくったことがある。
基本情報
| 英語表記 | Mid-Century Modern(略称 MCM) |
|---|---|
| 指す時期 | おおむね1930年代半ば-1960年代半ば(論者により変動) |
| 主な地域 | アメリカ。北欧・イタリアの仕事を含めて用いることもある |
| 語の定着 | 1984年『Mid-Century Modern: Furniture of the 1950s』(カーラ・グリーンバーグ)以降 |
モダニズムとの違い
モダニズムは20世紀初頭からヨーロッパを中心に展開した国際的な運動であり、装飾の否定や機能への還元といった理念を明示的に掲げていた。ミッドセンチュリーモダンは、その理念を受け継ぎながら戦後アメリカの生活と生産条件のなかで展開した造形を、後から括った語である。前者が理念の名であるのに対し、後者は時期と地域による区分に近い。
Reference
- What Is Mid-Century Modern Design?(Britannica)
- https://www.britannica.com/story/what-is-mid-century-modern-design
- The Coiner of 'Mid-Century Modernism' Recalls the Movement's First Comeback(1stDibs Introspective)
- https://www.1stdibs.com/introspective-magazine/mid-century-modernisms-first-comeback/
- When Mid-Century Met Modernism(SOM)
- https://som.medium.com/when-mid-century-met-modernism-f327cfc4bf7f