天童木工(Tendo Mokko)

天童木工は、山形県天童市に本社と工場を置く木製家具のメーカーである。1940年、天童町(現・天童市)ほか10か村の大工・建具・指物の業者が天童木工家具建具工業組合を結成したことに始まる。1947年に高周波発振装置を導入して成形合板家具の量産へ着手し、日本の木製家具メーカーとして早い時期にこの技術を実用化した。住宅向けの家具に加え、官公庁や文化施設に納める特注家具、自動車の木製内装部品を扱う。

事業と製造の実体

製造は天童市の自社工場で行われる。丸太の製材から成形、組立、塗装までを社内に置き、家具と自動車内装部品の双方をここで作る。1993年には敷地内に製材工場が完成した。

成形合板の工程

基幹となる成形合板は、丸太を厚さ1mm程度の単板に剥き、接着剤を塗って繊維の向きを交差させながら重ね、型に入れて圧力と熱を加えて成形する。芯材にはブナが使われる。水分を多く含んで反りが出やすく、一般の家具材としては扱いにくいとされてきた樹種である。同社は、同じ厚さの無垢材に比べて1.5〜2倍の強度が得られること、丸太から家具材として使える割合が約40%から約80%へ上がることを、この工法の利点として挙げている。

設備と型

プレス機は形状ごとに使い分ける。上下から挟むものに加え、左右や斜めからも圧をかける多方向のプレス機があり、1950年代前半に製造された機械も現役で使われている。設備は成形できる形の幅に合わせて更新されてきた。1953年に40トンの油圧プレス、1975年にマイクロ波を用いる電子加熱高速成形装置、1979年に6面圧締プレス、1980年に数値制御のルーターが入っている。

型は製品ごとに専用のものを作る。型の表面には曲げの加減や作業の要点が歴代の職人によって書き込まれ、次の担当者はそれを読んで作業に入る。部位ごとに厚みを変える不等厚成形合板、脚部の強度を確保するために木片を挟んで一体に成形するコマ入れ成形など、設計側の要求に応じて工法が積み上がってきた。

組立と塗装

組立は玄翁、ノミ、カンナといった手道具を中心に行い、カンナは刃の角度や形の異なるものを製品ごとに使い分ける。1959年に登場した座卓(S-0228)は、天板の四隅から脚へ回り込む接合部に膠を用いる。20分ほどで固まる性質と、木の狂いに合わせて微調整する時間が要ることから、1日に作れる数は多くて14卓程度になる。塗装は塗りと研磨を4〜12回繰り返し、いずれも手作業で行われる。技能の習熟と伝承において際立つ職人には、社内で「マイスター」の称号が与えられる。

軟質針葉樹の圧密加工

2010年代に加わったのが、スギ・ヒノキ・カラマツなどの軟質針葉樹を家具材に変える技術である。これらの樹種は比重が0.32〜0.48程度と軟らかく、家具には向かないとされてきた。同社の「Roll Press Wood」は、大小2つのローラーで単板を短時間プレスして圧密し、比重を広葉樹と同程度の0.63〜0.76まで高める。熱を加える時間が従来の圧密加工より短いため、表面が黒く焦げず、木目を生かした部材が得られる。丸太を数年乾燥させる必要がない点も、広葉樹の無垢材との違いにあたる。

この工程に薬液の浸漬を組み込んだ「圧密浸漬処理」も開発し、特許を取得している。一度圧密した単板は薬液が浸透しやすく、難燃剤や防腐・防蟻剤を内部まで行き渡らせられる。角材を窯に入れて減圧・加圧する加圧注入処理と異なり、薄い単板の段階で処理する点が違いになる。庁舎の議場家具や図書館の閲覧室家具など、地域産のスギ・ヒノキを用いた納入例が各地にある。

沿革

組合から会社へ

1940年、天童町ほか10か村の大工・建具・指物の業者が天童木工家具建具工業組合を結成した。将棋の駒の産地として木工の集積があった土地である。翌1941年から弾薬箱などの軍需品を作り、1942年に資本金3万5000円で有限会社天童木工製作所を設立した。1945年には木製のおとり戦闘機を製作している。終戦後は手持ちの材料で戸棚、飯台、流し台などを作って製造を再開した。

成形合板の量産へ

1947年、高周波発振装置を導入して成形合板家具の本格生産に着手した。同年に東京・新橋へ営業所を置き、進駐軍向けの家具を量産している。1948年に株式会社へ改組し、1949年からは一般向けの家具を主力に据えた。1950年、創立10周年の展示を東京・髙島屋で開いた際に成形合板の家具が注目される。

1950年代に入ると、大型施設の客席椅子をまとめて受注する仕事が加わった。同一形状を大量に、寸法の狂いなく作る必要があり、この受注が量産の体制を固める条件になった。1962年に大阪、1964年に東京・浜松町、1966年に福岡へ拠点を広げた。浜松町の東京支店にはショールームを併設している。1968年、社名を株式会社天童木工に改め、新工場へ移転した。

製品群の拡張と多角化

1971年に事務家具のOFグループ、1975年に住宅用のHFグループ、1981年に役員室向けのEFシリーズ、1983年にオフィス・システム家具のSFシリーズ、1985年に図書館用のTLシリーズ、1997年に福祉施設向けのKFシリーズと、用途別の製品群を順に立ち上げた。並行して、1987年には家具で培った突板と接着の技術を自動車内装部品へ転用し、ホンダ レジェンドの内装パネルを納入した。1989年から本格生産に入っている。

1990年代以降は過去の設計の再生産に取り組んだ。1996年に「ペリアンチェア」を再現して東京国際家具見本市で発表し、1999年に5009型イスとプライチェアを復刻、2006年にはこれらを「Tendo Classics」としてまとめている。2010年代半ばには軟質針葉樹の圧密成形加工を実用化し、2019年に薬液処理を組み合わせた「Roll Press Wood+」を発表した。2020年、創立80周年にあたり「TENDO JAPANESE MODERN /80 PROJECT」を始めている。

デザイナーとの協働

製品の設計は、社外の設計者に委ねる方式を早くから採ってきた。工場が扱える工程の範囲と設計案を突き合わせながら形を決めるため、図面を受け取って作るだけの関係にはならない。1961年には第2回天童木工展に合わせて家具のデザインコンクールを開き、公募からの製品化も行っている。

戦前から工芸指導所で成形合板を研究していた乾三郎が入社したことが、技術と人脈の両面で起点になった。同じ指導所にいた剣持勇との関係はここから続き、ゴルフ場のクラブハウス向けに作られた椅子(S-5009)や京都国際会議場のロビー向けのイージーチェア(S-7008)は、のちに規格品として販売されている。柳宗理との協働は、1954年に仙台の産業工芸試験所の紹介で同人が天童を訪れたところから始まった。図面の形状を成形合板で実現するまでに約3年を要したと同社は記している。

建築家からの依頼も多い。丹下健三とは、1953年に愛媛県民会館の客席椅子1400脚を成形合板で製造したことが始まりで、1958年の静岡県体育館には3000脚を納めた。磯崎新が設計した椅子には、部位によって厚みを変える不等厚成形合板が用いられている。黒川紀章とは1967年の寒河江市庁舎で家具を手がけ、1984年の国立文楽劇場でロビーの椅子を製作した。

外国の設計者と初めて契約したのは1974年で、来日したBruno Mathssonが天童の本社を訪ねたことがきっかけになった。畳の上で椅子を引いても傷がつかないよう脚の接地面を広くとる「床摺り」など、日本の住まいに合わせた提案が製品に反映されている。

主な製品群

バタフライスツールは、同じ形の成形合板2枚を真鍮の金具でつないだ構造をとる。1956年の発表以来、生産が続いている。

1950年代から1970年代にかけて発表された椅子・座卓・スツールは「Tendo Classics」としてまとめられ、現在も生産されている。Bruno Mathssonの設計はM Seriesとしてまとめられている。このほか、事務・図書館・福祉施設といった用途別のシリーズ、軟質針葉樹を用いたRPW製品がある。

受賞・収蔵・認証

確認できる主な受賞は次のとおりである。

  • 1949年 第1回全国中小企業振興展 長官賞
  • 1959年 全国中小企業輸出振興展 通商産業大臣賞(バタフライスツールと卓子)
  • 1964年 第10回毎日産業デザイン賞
  • 1981年度 グッドデザイン賞 ロングライフデザイン特別賞(座卓 S-0228)
  • 2015年 第6回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞(軟質針葉樹の圧密成形加工技術開発・実用化及び家具用材への利用拡大)
  • 令和2年度 第55回機械振興賞 中小企業庁長官賞(針葉樹圧密加工装置と圧密浸漬処理技術開発)

ニューヨーク近代美術館は、柳宗理の設計によるバタフライスツールを2脚一組で収蔵している(収蔵番号153.1958.1-2、1958年取得、設計者からの寄贈)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、同じスツール(W.5-2017)に加え、丹下健三が墨会館のために設計し同社が製造した1955年頃の椅子(W.25-2016)を収蔵する。

本社と工場ではFSC-CoC認証(FSC-C134079)およびPEFC/SGEC-CoC認証(SGSJP-SGEC-COC-099)を取得している。2001年にはISO9001の認証を受けた。

現在の展開

事業は、住宅向けの家具、官公庁・ホール・図書館・福祉施設などへの特注家具、自動車内装部品の三つで構成される。特注家具は建築の設計と並行して家具を起こす仕事が多く、議場や客席のように同一形状を大量に必要とする案件を扱う。

自動車内装部品では、樹脂の基材に厚さ0.2mmの突板を貼る3次元立体成形(真空プレス)や、突板を積層して木目方向と直角に切り出した縞杢をステアリングへ水平に貼る技法を用いる。近年はセルロース系繊維や、スギ由来の改質リグニンを含むバイオプラスチックの利用も研究している。

拠点は天童の本社・工場のほか、東京・大阪・東北に支店、福岡に営業所、名古屋に連絡所を置く。ショールームは天童・東京・大阪にある。

基本情報

ブランド名 天童木工(Tendo Mokko)
創設 1940年6月12日(天童木工家具建具工業組合として)
法人化 1942年(有限会社天童木工製作所)/1948年 株式会社へ改組
現社名 株式会社天童木工(1968年〜)
本社所在地 日本・山形県天童市乱川
代表者 森山馨(2025年〜)
事業内容 家具・インテリア用品および成形合板家具の設計、製造、販売/室内装飾の設計・施工/製材業/自動車部品の製造
公式サイト https://www.tendo-mokko.co.jp/

Reference

天童木工 - 会社概要
https://www.tendo-mokko.co.jp/company/
天童木工 - 天童木工の歩み
https://www.tendo-mokko.co.jp/stories/history/
天童木工 - プロダクトの特徴
https://www.tendo-mokko.co.jp/stories/products/
天童木工 - 制作現場から
https://www.tendo-mokko.co.jp/stories/craftsmen/
天童木工 - 天童木工とデザイナー
https://www.tendo-mokko.co.jp/designers/
天童木工 - Roll Press Wood
https://www.tendo-mokko.co.jp/rpw/
天童木工 - 自動車内装部品
https://www.tendo-mokko.co.jp/decoration/
経済産業省 - 第6回ものづくり日本大賞 受賞者
https://www.monodzukuri.meti.go.jp/backnumber/06/index.html
機械振興協会 - 機械振興賞 受賞者一覧
https://www.jspmi.or.jp/tri/pdf/Jyushousha.pdf
The Museum of Modern Art - Butterfly Stools (153.1958.1-2)
https://www.moma.org/collection/works/2279
Victoria and Albert Museum - Chair, Tendo Mokko (W.25-2016)
https://collections.vam.ac.uk/item/O1359610/