概要

バタフライスツールは、柳宗理が設計し天童木工が製造するスツールである。同じ形の成形合板を2枚、向かい合わせに立てて真鍮の部材で留めるという構成をとる。1956年に発表され、以後生産が途切れていない。

座面と脚を別の部材として組む通常のスツールに対し、本品は1つの部材が脚と座面の半分を同時に担う。部品の数を減らすことが、そのまま形になっている。

特徴・コンセプト

2枚の板が互いを支える

左右の部材は同一の型から成形される。これを反転して向かい合わせ、座面の下で接する部分をボルトで留め、脚にあたる位置に真鍮の丸棒を1本渡す。

板は外側へ開こうとする。真鍮の棒がその動きを止め、上部のボルトが2枚を引き寄せる。互いに逆向きの力が釣り合うことで、他に支持を加えずに立つ。部材が2種類しかないのは、この釣り合いが成立したためである。

三次元に曲げるという条件

この形は、板を一方向に曲げるだけでは得られない。座面へ向かって水平に広がりながら、同時に縁が持ち上がる。成形合板を二方向へ曲げる必要があった。

薄い単板を重ねて型で圧着する成形合板は、単材では割れてしまう曲率を得るための製法にあたる。ただし当時の天童木工にとっても三次元の成形は経験のない領域で、型の製作に時間を要している。

木目の対称

2枚の板は同じ原木から連続して切り出した単板を用いる。左右を向かい合わせたとき、表面の木目が鏡のように対応する。

同一の型から成形するという工程が、そのまま木目の対称にもつながっている。

エピソード

展覧会のための設計

開発は、1956年に予定されていた柳工業デザイン研究会の個展への出品を目的として始まった。複雑な曲面を扱えるメーカーが見つからなかったため、柳は1954年、仙台の産業工芸試験所を訪ねている。

そこで成形合板を研究していた技師の乾三郎と出会い、試験所を通じて天童木工が紹介された。数年の研究開発を経て、1956年に銀座・松屋で開かれた展覧会で発表された。

成形合板との出会い

天童木工によれば、この形は柳が板を手で曲げているうちに得た模型にさかのぼる。図面ではなく手を動かして形を決める進め方が、この製品の出発点にある。

柳は、イームズの副木やイームズ LCW(プライウッド ラウンジチェア)を通じて成形合板という手段を知っていた。当時の日本ではほとんど扱われておらず、東北で高周波による研究が進んでいることが試験所を訪ねる理由になっている。

いっぽう天童木工にとっては、三次元の成形合板を扱う最初の仕事となった。この製作を経て、同社は成形合板による家具づくりに取り組む体制を得ている。

評価と影響

一般的に、戦後の日本の工業デザインを代表する家具のひとつとして扱われている。1957年の第11回ミラノ・トリエンナーレに出品され、金賞を受けた。

2016年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受けている。発表から70年近くを経て生産が続いており、ローズウッドとメープルの2つの仕様が供給される。

受賞・収蔵

ニューヨーク近代美術館が収蔵している(Butterfly Stools、1956年、収蔵番号 153.1958.1-2)。設計者本人からの寄贈による。

メトロポリタン美術館も収蔵している("Butterfly" Stool、収蔵番号 1988.195)。こちらは天童木工からの寄贈にあたる。

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館も収蔵している(Butterfly stool、収蔵番号 W.5-2017)。

基本情報

デザイナー 柳宗理
ブランド 天童木工
発表年 1956年
デザインの成立国 日本
主要素材 成形合板(ローズウッドまたはメープル)、真鍮
サイズ 幅425 × 奥行310 × 高さ387mm
座面の高さ 340mm
重量 約2.2kg
型番 S-0521

Reference

バタフライスツール | 天童木工オンラインストア
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000031/
Sori Yanagi. Butterfly Stools. 1956 | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/2279
"Butterfly" Stool | Sori Yanagi | The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/485023