606ユニバーサルシェルビングシステムは、1960年にディーター・ラムスがVitsœ(ヴィツゥ)のためにデザインしたモジュラーシェルフシステムである。壁面に取り付けたアルミニウム製のトラックに棚板やキャビネットを工具不要で組み合わせ、使用者の生活の変化に応じて再構成できる柔軟性と、長期にわたって使い続けられる耐久性を兼ね備えた収納システムとして、現代に至るまで高い評価を受け続けている。
アルミニウム製のE字型トラックに、棚板、キャビネット、デスクモジュールなどを自在に組み合わせるこのシステムは、使用者の生活の変化に応じて構成を変えていくことを前提に設計されている。発売から65年以上が経過した現在もなお、基本設計を変えることなくVitsœによって製造され続けており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに収蔵されるなど、20世紀を代表するモジュラー収納として広く認知されている。
デザインの背景と誕生
606の構想は、デザインスタジオではなく、1950年代半ばのBraun社のショールーム内で生まれたとされる。当時、若手デザイナーとしてディスプレイ空間の再考に取り組んでいたラムスは、従来の家具とは異なる、軽量かつモジュラー式の壁面システムというアイデアに行き着いた。この初期の構想は、数年後、Vitsœ社における具体的なプロジェクトとして製品化されることとなる。
システムの核心は、壁面に直接取り付けられるE字型断面を持つ押出成形アルミニウム製の支柱である。棚板、キャビネット、各種モジュールは、ピンによるシンプルな機構によってこのトラックに取り付けられ、高さを自由に調整できる仕組みとなっている。当初RZ 60という名称で発売されたこのシステムは、1970年に606へと改称された。
特徴とデザインコンセプト
モジュラーシステムの構成
606の最大の特徴は、その徹底したモジュラー性にある。システムは陽極酸化処理されたアルミニウム製のE-トラックとピンを中心に構成され、棚板、キャビネット、テーブルは工具を使用せず、切り込み付きピンを所定の位置にスライドさせるだけで取り付けることができる。狭幅(66.7cm)と広幅(91.2cm)の2種類のベイ幅が用意されており、これらを組み合わせることで、さまざまな空間に適応する構成を実現する。E-トラックには57cm、114cm、171cm、200cm、228cmといった複数の標準高が用意されている。
基本的な棚板に加え、スライドドア付きキャビネット、デスクモジュール、テーブルモジュール、LPラックなど、多様な互換性のある要素がデザインされている。棚板は3つの異なる向きで取り付けることができ、直立、逆さ、または垂直に回転させて磁気式「ピンボード」として使用することも可能である。
適応性と柔軟性
606は、使用者の生活の変化とともに構成を変えていくことを前提に設計されている。「小さく始め、必要に応じて追加し、引っ越し時には持ち運び、再構成し、次世代へ引き継ぐ」というコンセプトは、システムの基本的な価値を表している。E-トラックは縦に連結できるほか、X-ポストに取り付けることで壁面の障害物を回避したり、床から天井まで圧縮固定する独立型システムを構築したりすることも可能である。
控えめで適応性の高いデザインは、古い住宅から現代的な建築まで、多様な空間において調和を保つ。住宅、オフィス、アーカイブ、小売店など、さまざまな環境に適応し、長期にわたって機能し続けることができる。
素材と製造
システムに使用される素材は、耐久性と美的品質の両立を意図して選択されている。陽極酸化処理された押出成形アルミニウムが垂直支柱と構造プロファイルに、ダイキャストアルミニウムが特定の構造部品に、ポリエステル粉体塗装スチールが棚板とブラケットに、ラッカー塗装ファイバーボードパネルがキャビネットと扉に、そしてビーチ材仕上げが一部の棚板とキャビネットユニットに採用されている。
カラーオプションとしては、オフホワイト、ブラック、シルバー、ビーチ&オフホワイト、ビーチ&ブラック、ビーチ&シルバーの6色が用意されている。これらの素材と仕上げの選択は、機能性を保ちながら、視覚的に中立で落ち着いた存在感を実現している。
評価と収蔵
606ユニバーサルシェルビングシステムは、発売以来、デザイン分野において一貫して高い評価を受けており、多くの評論家がこの控えめなシェルビングシステムをデザインの古典として位置づけている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、陽極酸化処理された押出成形アルミニウム、ダイキャストアルミニウム、ポリエステル粉体塗装スチール、ラッカー塗装ファイバーボードなどで構成されたこのシステムを、製造者からの寄贈として永久コレクションに収蔵している。
1960年代に製造されたパーツと現在製造されるパーツに互換性が保たれていることもあり、中古市場では606のコンポーネントが新品と近い価格で取引される場合もある。一貫したデザインと製造が長年にわたって維持されてきたことが、こうした評価につながっている。
基本情報
| デザイナー | ディーター・ラムス |
|---|---|
| ブランド | Vitsœ(ヴィツゥ) |
| デザイン年 | 1960年(当初の名称はRZ 60、1970年に606へ改称) |
| 分類 | モジュラーシェルフシステム / 壁面収納システム |
| 主要素材 | 陽極酸化処理押出成形アルミニウム、ダイキャストアルミニウム、ポリエステル粉体塗装スチール、ラッカー塗装ファイバーボード、ビーチ材 |
| カラー展開 | オフホワイト、ブラック、シルバー、ビーチ&オフホワイト、ビーチ&ブラック、ビーチ&シルバー |
| 寸法 | 可変式(ベイ幅:66.7cm / 91.2cm、E-トラック高:57cm / 114cm / 171cm / 200cm / 228cm) |
| 生産状況 | 1960年より現在まで継続生産中 |
| 主要収蔵先 | ニューヨーク近代美術館(MoMA) |