フローレンス・ノル ソファは、1954年にフローレンス・ノルがデザインしたソファである。設計者自身は当初「誰も手がけたがらない穴埋めのピース」と控えめに語っていたが、抑制された幾何学的なフォルムは、20世紀半ばのモダンデザインを代表する一脚として広く知られている。
ノルは建築家としての訓練を受けており、個々の家具を部屋・フロア・建物という空間全体の構成要素として捉えていた。このソファも、空間と調和することを前提に設計されている。プロジェクトに必要な家具が市場になければ自ら設計するという姿勢から生まれた作品でもある。
特徴・コンセプト
このソファは、彫刻的な造形を志向したサーリネンやベルトイアの作品とは対照的に、建築を基盤とした構成を特徴とする。現代建築のリズムとディテールをスケールダウンし、色彩とテクスチャーによって親しみやすさを加えることで、機能性と居住性を両立させている。
明快な幾何学的プロファイルと、タフテッド加工を施したシートおよびバッククッションが、露出したクロームメッキのスチールフレームと脚部に組み合わされる。レザー張地ではマッチングボタンを、ファブリック張地ではボタンレスのタフテッド加工を採用する。
構造とディテール
構造面では、堅牢な木製の内部フレーム、ノーサグスプリングによる座面サスペンション、チューブラースチールの脚部とベースフレームを採用している。内部には可変密度フォームを用い、座面と背面のクッションはポリエステル綿で覆うことで快適性を高めている。フレームのベースにはKnollStudioロゴとフローレンス・ノルのサインが刻印され、正規品であることの目印となっている。
評価
フローレンス・ノル ソファは、1954年の発表以来、現在まで生産が続けられている。幾何学的な明快さと座り心地を両立した構成により、受付エリア、教育施設、美術館、個人住宅まで、幅広い空間で用いられてきた。
軽やかな視覚的フットプリントと、支持力のある座面を併せ持つ点から、住宅とオフィスのいずれにもなじみやすい。発表から70年近くを経た現在も、その合理的なデザインは一般に高く評価されている。
基本情報
| デザイナー | フローレンス・ノル(Florence Knoll) |
|---|---|
| デザイン年 | 1954年 |
| ブランド | ノル(Knoll) |
| 分類 | ソファ |
| 寸法(3シート) | 幅230cm(90.5インチ)× 奥行82cm(32.25インチ)× 高さ79cm(31.25インチ) 座面高:44.5cm(17.5インチ)/ アーム高:58.5cm(23インチ) |
| 構造 | 木製内部フレーム、ノーサグスプリング座面サスペンション、チューブラースチール製脚部およびベースフレーム(ポリッシュクロームまたはサテンクローム仕上げ) |
| 素材 | スチール、ファブリックまたはレザー張地、可変密度フォーム |
| バリエーション | ラウンジチェア、セッティ(2シート)、ソファ(3シート)、リラックスバージョン |
| 製造国 | アメリカ合衆国 |
| 特記事項 | 各フレームのベースにKnollStudioロゴとフローレンス・ノルのサインが刻印されている |