Kaiser Idell 6631は、Christian Dell(クリスティアン・デル)が1931年に発表したテーブルランプである。1936年、ドイツの照明メーカーGebr. Kaiser & Co.の最初のカタログに「6631 Luxus(ルクサス)」として掲載され、以後、シリーズのなかで最も広く知られるモデルとなった。「idell」という名称は「idea(アイデア)」とデザイナーの姓「Dell」を組み合わせた造語で、「Kaiser」は当初の製造元を指す。
球体、円、円筒という基本形を組み合わせた造形で、素材はスチールと真鍮ながら輪郭は丸い。現在はデンマークのFritz Hansen(フリッツ・ハンセン)が製造する。
特徴・コンセプト
非対称のシェード
最も目を引くのは、非対称に湾曲したドーム型のシェードである。幅広く張り出したシェードと、緩やかに弧を描くアーム、円形のベースが釣り合いを取り、装飾を持たないまま輪郭だけで表情をつくっている。シェードの上部には「ORIGINAL KAISER-idell」の刻印が施され、これが正規品を見分ける目印となる。
世界特許のスイベルジョイント
Kaiser idellシリーズの構造上の核は、世界特許を取得したスイベルジョイント(ボールジョイント)にある。6631-Tでは、ベースのクランプを緩めるか、シェード自体を回すことで角度を変えられる。手元へ光を落とす、壁面へ振る、といった調整が一つの関節で完結するため、デスクランプとしての使い勝手が高い。
素材と製造技術
本体はスチールと真鍮で構成される。シェードは職人の手で塗装され、高光沢に磨き上げられる(マットはブラックのみ)。クローム仕上げの部品は手作業で研磨した真鍮を銀ろう付けで接合したものである。
カラーバリエーション
現行品は、グロスブラック、グロスホワイト、マットブラック、アイボリー、ルビーレッドなど、当時のカラーパレットを踏襲した仕上げで展開される。真鍮を組み合わせた特別仕様が加わることもある。
エピソード
「コミッサール・ランプ」の愛称
1960年代から1970年代にかけて、ドイツのテレビドラマ「Der Kommissar(刑事)」および「Tatort(犯行現場)」で、捜査官のデスクを照らすランプとしてこの6631が繰り返し使われた。以来、ドイツでは「Kommissarlampe(コミッサール・ランプ)」の愛称で呼ばれている。
Fritz Hansenによる継承
Gebr. Kaiser & Co.は1970年代末に他社の傘下に入り、その後Kaiser idellのブランドと製造は2010年にFritz Hansenへ移った。現在の製品はデンマークで生産され、ベース裏面に打刻された通し番号と保証書が付属する。
評価
発表から90年を経て、6631はバウハウス期の照明を代表する一台として扱われている。
ヴィンテージ市場では、Gebr. Kaiser & Co.時代のオリジナルが取引されている。塗装の状態や刻印の有無、可動部の摩耗が状態を判断する目安となる。復刻版は当時の仕様を踏襲しつつ、現行の電気規格に適合させて製造されている。
製品ラインナップ
Fritz Hansenが展開するKaiser idellコレクションは、テーブル・フロア・ウォール・ペンダントの各形式を含む。
- 6631-T Luxus:幅広のシェードと曲線的なアームをもつテーブルランプ
- 6631-P Luxus:同じドーム型シェードを吊り下げるペンダントランプ
- 6556-T:傾斜するアームを備えた、よりコンパクトなテーブルランプ
- 6580-F:高さ調整と首振りに対応するアームをもつフロアランプ
- 6718-W:伸縮するシザーアームを備えたウォールランプ
基本情報
| デザイナー | Christian Dell(クリスティアン・デル) |
|---|---|
| デザイン年 | 1931年(カタログ初掲載:1936年) |
| デザイン国 | ドイツ |
| オリジナルメーカー | Gebr. Kaiser & Co. Leuchten KG(ドイツ・ネハイム=ヒュステン) |
| 現メーカー | Fritz Hansen(デンマーク)※2010年より |
| 素材 | スチール、真鍮、クローム仕上げ |
| シェード仕上げ | 手塗り高光沢塗装(マットはブラックのみ) |
| サイズ(6631-T Luxus) | 高さ約42.5cm、シェード径約28.5cm、ベース径約19cm |
| 光源 | E27(EU)/ E26(日本・米国)、白熱灯・蛍光灯・LED対応 |
| カラー | グロスブラック、グロスホワイト、マットブラック、アイボリー、ルビーレッド他 |
| デザイン様式 | バウハウス / モダニズム |