カンデム テーブルランプは、1928年にバウハウスの金属工房でマリアンネ・ブラントとヒン・ブレデンディエックが共同設計したベッドサイド用の卓上照明である。ライプツィヒの照明メーカー、ケルティング・ウント・マティーゼン社(通称カンデム)が製造した。

バウハウスと産業界との協働から生まれた最初期の量産照明にあたる。数年のうちに5万台が販売され、1940年代までに派生モデルを含めて7万台以上が生産された。

特徴・コンセプト

形態と機能の統合

シェード、アーム、ベースはいずれも幾何学的な基本形で構成される。半球形のシェードが光を下方へ集め、円筒形のベースが重心を低く保つ。装飾は用いず、各部の比例と曲線の連なりだけで形が決まっている。

二重の可動機構

アームの付け根とシェードの付け根、二か所の関節をもつ。手元を狙う読書灯としても、シェードを上向きにして拡散光を得る間接照明としても使える。この「角度を調整できる小型ランプ」という枠組みは、後年のデスクランプの基本形になった。

素材と製法

本体はエナメル(ラッカー)塗装を施したスチールで、当初はクリーム色やアイボリーが基本とされ、後に緑・黒・茶などが加わった。部品を標準化し、構成要素を絞り込むことで、家庭が手に取れる価格での量産が成立した。

エピソード

1924年以降、バウハウスの金属工房では照明が主要な研究対象となっていた。工房を率いたブラントがカンデム社との協力関係をまとめ、以後、彼女と学生たちは同社のために数十種の照明を設計している。技術的な製造能力をもつメーカーと、標準化された部品による設計とが噛み合った事例である。

第二次世界大戦中には資材不足に対応するため、プレスガラス製のベースや、透明なプレス生地のシェードを用いた戦時仕様も作られた。

バウハウスとカンデム社の協力関係は、1933年の学校閉鎖により終わった。カンデム社はその後も生産を続け、現在はドイツ・ディーツに拠点を置き、ドクター・フィッシャー・グループの傘下で操業している。

評価

本作はニューヨーク近代美術館の建築・デザイン部門コレクションに収められている(Accession 191.1958、ラッカー塗装スチール、23.5×18.4cm)。量産を前提に設計された家庭用照明が、美術館の収蔵対象となった早い例のひとつである。

復刻と継承

2023年、カンデム・ロイヒテン社は高さ調整機構を備えたカンデム テーブルランプを、オリジナルより20パーセント大きいサイズで復刻している。復刻版の寸法は27×17cm、高さは最大50cmまで調整できる。

初期モデルの世代ごとの変遷については、2003年にアーノルドシェ社から刊行された『BauhausLeuchten? Kandemlicht!』に詳しい記録がある。ヴィンテージ市場でも702系のベッドサイドランプは流通しているが、年代や工場によって仕様が異なるため、刻印とベースの素材が判別の手がかりとなる。

基本情報

デザイナー マリアンネ・ブラント、ヒン・ブレデンディエック
デザイン年 1928年
デザイン国 ドイツ
製造元(オリジナル) ケルティング・ウント・マティーゼン社(Kandem)、ライプツィヒ、ドイツ
製造元(復刻) カンデム・ロイヒテン社(Kandem Leuchten GmbH)、ドイツ
モデル番号 No. 702
素材 ラッカー塗装スチール
寸法(MoMA収蔵品) 高さ23.5cm × 幅18.4cm
様式 バウハウス / モダニズム
主な収蔵先 ニューヨーク近代美術館(MoMA)